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誓いの言葉
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王都を出て2年が経った。
初めはノアの住む街で世界のことやたった2人で生きていく術を学んだ。そして数か月で街を出発し、2人で色々な場所を旅した。行く先々で日雇いの仕事をして、旅のお金と将来のためのお金を稼いだ。前にノアから学んだ諸外国の言語や経営学の知識はどこに行っても役に立った。砂漠や熱帯、氷の国なんかを巡って、最終的に海沿いのこの街で暮らすことを決めた。
カラッと晴れた空や青くどこまでも広がる海、そして明るくて活気のある街の人達。街にやってきた一日目の夜、「この街にしない?」と同時に切り出した時は息ピッタリすぎて、顔を見合わせてしばらく笑っていた。
ここでの生活にも慣れてきて、私達は最近になってやっと小さな食堂を始めた。近くの港で獲れる新鮮な魚はどれも美味しい。そのこともこの街に決めた理由の一つだった。ルイスの料理の腕前は言うまでもない。お店は始めたばかりで来てくれるお客さんもまだ少ないけど、ルイスの料理を食べたお客さんはみんな「美味しかった」と言って笑顔で帰っていく。その評判が街中に広まるのもきっと時間の問題だろう。
「すごく美味しかった。また来るよ」
そう言って、ランチタイムの最後のお客さんは店をあとにした。私は厨房に顔を出す。
「最後のお客さん、いま帰ったよ。すごく美味しかったって」
洗い物をしていたルイスは手を止めて笑顔を見せた。
「よかった。僕ももう少しで片付けが終わるよ。先に行って支度してて」
「うん、分かった」
階段を上ると、奥の寝室へ向かう。クローゼットを開けると中には今日のために用意したドレスが入っている。その白いドレスに身を包み、髪をアップにまとめた。その時、ドアがノックされた。
「エマ、入ってもいい?」
「いいよ」
入ってきたルイスは濃紺のタキシードに着替えていた。首元に普通ならあるはずのネクタイはついていない。
「そのドレス、やっぱりすごく似合ってるね。綺麗だよ」
「ありがとう。ルイスもよく似合ってるよ」
「ふふっ、ありがとう」
ルイスは小物入れの引き出しを開けて、桜色のネックレスを取り出した。そして私の後ろに回る。
「つけてあげるね」
ルイスの甘くて心地いい声が耳元で聞こえる。首元に触れる指先も、背中で感じる気配も、初めてじゃないのに体が痺れるみたいにドキドキする。まだこんなに好きでたまらないなんて、きっと私の好きが強すぎるだけだからバレないように隠しておきたい。ルイスから顔が見えない位置でよかった。
「出来たよ。僕にもよく見せて」
そう言ってルイスが回りこんでくる。慌てて顔を両手で隠した。
「どうしたの?」
「え、えっと……お、お化粧がね! まだちゃんと出来ていないから、あんまり至近距離で見られるのはちょっと……」
「……ふうん」
そんな声が聞こえると、右耳に軽く挟まれるような感覚があった。
「えっ?」
右を振り向くと、ルイスが満足そうに微笑んでいた。
「やっと顔を見せてくれたね。赤くなった耳があんまり可愛いから噛みついちゃった」
「噛み……ええっ!?」
ルイスはそんな私をふっと笑うと、顔を寄せて優しく口づけた。顔が離れると、少し赤くなったルイスと目が合う。
「大好きだよ、エマ」
「……うん、私も大好き」
よかった、私の好きはつり合いが取れているみたいだ。
「それじゃあ、行こうか。リアナが待ってる」
「うん!」
青く澄み渡った空。どこまでも広がる草原。優しい風が私達3人の間を通り抜けていく。
「ルイス・コーネル、あなたはエマ・リーステンを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、エマを愛し、その命ある限り幸せにすると誓いますか」
リアナの凛とした声が青空に響く。
「誓います」
「エマ・リーステン、あなたはルイス・コーネルを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、ルイスを愛し、その命ある限り幸せにすると誓いますか」
「誓います」
「分かりました」
そう言うとリアナはルイスの後ろに回って、空いた首元に白い刺繍が入った金色の蝶ネクタイを付けた。そして私のところにやってくると、パチンと髪飾りを付けてくれた。
「2人の結婚はリアナ・バレットが証人となります」
そして私達は円になって手を繋いだ。息を吸い込む。
「私達は、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、これから先もずっと友達であることを誓いますか」
2人の顔を見ると幸せそうに笑っている。きっと私も同じ顔をしているんだろう。
3人の声が重なって響いた。
初めはノアの住む街で世界のことやたった2人で生きていく術を学んだ。そして数か月で街を出発し、2人で色々な場所を旅した。行く先々で日雇いの仕事をして、旅のお金と将来のためのお金を稼いだ。前にノアから学んだ諸外国の言語や経営学の知識はどこに行っても役に立った。砂漠や熱帯、氷の国なんかを巡って、最終的に海沿いのこの街で暮らすことを決めた。
カラッと晴れた空や青くどこまでも広がる海、そして明るくて活気のある街の人達。街にやってきた一日目の夜、「この街にしない?」と同時に切り出した時は息ピッタリすぎて、顔を見合わせてしばらく笑っていた。
ここでの生活にも慣れてきて、私達は最近になってやっと小さな食堂を始めた。近くの港で獲れる新鮮な魚はどれも美味しい。そのこともこの街に決めた理由の一つだった。ルイスの料理の腕前は言うまでもない。お店は始めたばかりで来てくれるお客さんもまだ少ないけど、ルイスの料理を食べたお客さんはみんな「美味しかった」と言って笑顔で帰っていく。その評判が街中に広まるのもきっと時間の問題だろう。
「すごく美味しかった。また来るよ」
そう言って、ランチタイムの最後のお客さんは店をあとにした。私は厨房に顔を出す。
「最後のお客さん、いま帰ったよ。すごく美味しかったって」
洗い物をしていたルイスは手を止めて笑顔を見せた。
「よかった。僕ももう少しで片付けが終わるよ。先に行って支度してて」
「うん、分かった」
階段を上ると、奥の寝室へ向かう。クローゼットを開けると中には今日のために用意したドレスが入っている。その白いドレスに身を包み、髪をアップにまとめた。その時、ドアがノックされた。
「エマ、入ってもいい?」
「いいよ」
入ってきたルイスは濃紺のタキシードに着替えていた。首元に普通ならあるはずのネクタイはついていない。
「そのドレス、やっぱりすごく似合ってるね。綺麗だよ」
「ありがとう。ルイスもよく似合ってるよ」
「ふふっ、ありがとう」
ルイスは小物入れの引き出しを開けて、桜色のネックレスを取り出した。そして私の後ろに回る。
「つけてあげるね」
ルイスの甘くて心地いい声が耳元で聞こえる。首元に触れる指先も、背中で感じる気配も、初めてじゃないのに体が痺れるみたいにドキドキする。まだこんなに好きでたまらないなんて、きっと私の好きが強すぎるだけだからバレないように隠しておきたい。ルイスから顔が見えない位置でよかった。
「出来たよ。僕にもよく見せて」
そう言ってルイスが回りこんでくる。慌てて顔を両手で隠した。
「どうしたの?」
「え、えっと……お、お化粧がね! まだちゃんと出来ていないから、あんまり至近距離で見られるのはちょっと……」
「……ふうん」
そんな声が聞こえると、右耳に軽く挟まれるような感覚があった。
「えっ?」
右を振り向くと、ルイスが満足そうに微笑んでいた。
「やっと顔を見せてくれたね。赤くなった耳があんまり可愛いから噛みついちゃった」
「噛み……ええっ!?」
ルイスはそんな私をふっと笑うと、顔を寄せて優しく口づけた。顔が離れると、少し赤くなったルイスと目が合う。
「大好きだよ、エマ」
「……うん、私も大好き」
よかった、私の好きはつり合いが取れているみたいだ。
「それじゃあ、行こうか。リアナが待ってる」
「うん!」
青く澄み渡った空。どこまでも広がる草原。優しい風が私達3人の間を通り抜けていく。
「ルイス・コーネル、あなたはエマ・リーステンを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、エマを愛し、その命ある限り幸せにすると誓いますか」
リアナの凛とした声が青空に響く。
「誓います」
「エマ・リーステン、あなたはルイス・コーネルを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、ルイスを愛し、その命ある限り幸せにすると誓いますか」
「誓います」
「分かりました」
そう言うとリアナはルイスの後ろに回って、空いた首元に白い刺繍が入った金色の蝶ネクタイを付けた。そして私のところにやってくると、パチンと髪飾りを付けてくれた。
「2人の結婚はリアナ・バレットが証人となります」
そして私達は円になって手を繋いだ。息を吸い込む。
「私達は、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、これから先もずっと友達であることを誓いますか」
2人の顔を見ると幸せそうに笑っている。きっと私も同じ顔をしているんだろう。
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