巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました

亜瑠真白

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騙されて強引に協力者に仕立て上げられた工藤日生です

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 その時、勢いよく扉が開いた。そしてそこに現れたのは制服姿の女子生徒だった。走ってきたのか、肩で息をつくたびにツインテールが揺れる。そして、手には大きな紙袋。
「はぁっ…はぁっ…、もうほんっと人使いが荒いんだから…!」
 そう言って高木先輩の前まで歩いていき、紙袋を差し出した。
「ほら、これ。頼まれてた服。」
「助かる。」
 その女子生徒はラフェの方に目を向けた。
「この子が…例の?」
「ああ。」
「魔王の娘っていうからどんなに恐ろしいかと思っていたけど、こんなに可愛らしい子なんてね。」
 そう言ってラフェに近づく。
「私は成瀬乙女なるせおとめ。よろしくね。」
「ふんっ。」
 ラフェはそっぽを向いた。
「あら、反応は可愛くないのね。」
「乙女、いいから先に進めるぞ。」
 高木先輩が声をかける。二人のやり取りを見るに、成瀬さんも「関係者」なんだろう。
「はーい。…っていうか、潔その恰好どうしたの? サイズおかしくない?」
 確かに、俺のジャージでは手首や足首が見えて不格好だ。悔しいから考えないようにしてたのに…!
「俺の制服はこいつに剥ぎ取られたからな。このジャージは日生から借りたんだ。」
「ひなせ…?」
 そう言って振り向いた成瀬さんと目が合う。
「あれ。いたの?」
 シンプルに酷い。
「っていうか、いいの? 部外者をここにいれて。」
「日生は協力者だからいいんだ。何でも力を貸すと言ってくれている。」
 そんなこと一言も言ってないですけど!?
「ふーん。」
 成瀬さんは僕のじろじろと見まわした。
「まあ、潔がいいっていうならいいわ。私は二年の成瀬乙女。見たことない顔だけど、もしかして新入生?」
「そうです。高木先輩に騙されて強引に協力者に仕立て上げられた工藤日生です。よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。」
 俺の抗議は何もなかったかのようにスルーされた。君たち、似たもの同士だね。
 高木先輩はぱちんと手を叩いた。
「自己紹介が済んだところで、乙女の持ってきた服に着替えてもらおう。俺と日生は外に出ているから、乙女、頼んだ。」
「りょーかい。」
 高木先輩に続いて俺は部屋を出た。廊下の窓からは午後の日差しが差し込んでいて、俺は目を細めた。新入生以外はまだ春休みのためか、校舎は静かだ。
「悪いな。乙女は幼なじみなんだが、ちょっと変なやつだろ。」
「いいえ? 全然?」
 あなたの方がだいぶ変です、という言葉が喉元まで出かけたのを何とかこらえた。
「そうか、ならいいんだ。」
 そう言って、高木先輩は黙った。しばらく沈黙が流れる。
 俺は気になっていたことを口にした。
「そういえば…さっき一部の人しか知らないって言ってましたけど、どうして高木先輩達は知っているんですか?」
「ああ、そのことも説明しないとだったな。理事長の用意した箱を移したこの部屋は、長い間『開かずの間』になっていたんだ。ここの鍵は初代理事長の子孫が受け継いでいて、学園の教師はここに何があるのかも知らない状況だった。しかし五年前、異変が起きた。」
「異変、ですか。」
「ああ。この部屋から何かを叩くような鈍い音が聞こえてくるようになった。その音が聞こえるのは不定期で、しかし日を追うごとに音の強さと頻度が増していっているのは確かだった。その噂を耳にした理事長の子孫が駆けつけ、受け継がれていた鍵で部屋の戸を開けることになった。数十年ぶりに部屋へはいると、音はやはりあの箱の中から聞こえてくるようだった。扉を開けようと数人がかりで引っ張ったが、扉はびくともしなかった。後日、チェーンソーで箱ごと切断しようと試みたが、傷一つつかなかった。どうやら魔王の娘自身がその箱に術をかけたらしい。自ら出てくるまではどうすることもできないと判断した関係者らは、箱の見張りと事情を知らない生徒・職員らへの情報統制のため、生徒の中から秘密裏に管理委員を立てた。それが俺達だ。俺達は二代目になる。活動としては、学園の中で唯一この部屋の鍵を持つことが許され、箱に異常がないかを監視する。時にはこの部屋について探っている人物を排除したりな。」
「排除って…」
 返り血を浴びて不敵に笑う先輩の姿が頭に浮かんだ。この人ならやりかねない。
「心配しなくても暴力行為はしないさ。いわば情報戦だな。偽の情報を流して別のところへ関心を向けさせる。そうやってこの秘密を守ってきた。」
「そんな風に苦労して秘密にしてきたのに、俺のことは簡単に巻き込むんですね。」
 少し皮肉を込めて言った。
「今回は緊急事態だったからな。制服を奪われたのは不覚だった。さすがに下着のまま廊下を走り回る訳にはいかないから、日生が偶然通りかかって助かった。それに日生なら秘密を守るって確信できたからな。」
「なんでそう言い切れるんですか。」
 俺のことなんて何も知らないくせに、と思ったのが口調に現れたが、高木先輩は気にしていないようだった。
「それくらい見抜けなければ、管理委員は務まらないな。」
 その時、部屋の扉が開いた。成瀬先輩が顔を出す。
「お待たせ。着替え、終わったよ。」
 部屋に戻ると、ラフェは首元に大きなリボンがついた白いワンピースを着ていた。
「ふふん。どうだ? 私の完璧なまでの着こなしは!」
 拘束から解放されて調子を取りもどしたのか、胸を反らして得意げに笑った。
「ほんと、可愛いから何でも似合うね。これ、福袋に入ってた服なんだけど、可愛すぎて自分にはちょっとなーって感じで着てなかったから、新品のままだよ。役に立ってよかった。」
 そう言って成瀬先輩が笑う。
「私に着てもらえてこの服も喜んでいるだろう。なにせ私は魔界第二十四代王、ルゼリフ・ドリースの一人娘、ラフェだからな!」
「カフェ?」
 成瀬先輩が首をかしげる。
「ラ! フェ!」
「ラフェちゃんね。名前も可愛い。」
「可愛い言うな! あと、様をつけろ!」
「はいはい。」
「くぅぅ!」
 軽くあしらわれて、ラフェは不満そうに成瀬先輩を睨んだ。
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