巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました

亜瑠真白

文字の大きさ
4 / 30

さて、本題に入ろう

しおりを挟む
 高木先輩が一歩進みでた。
「さて、準備も終わったことだし本題に入ろう。箱から出てきた後のラフェの処遇について、初代理事長から言伝を預かっている。」
「お前も様をつけろ!」
「丁重に魔界へお返しする、とのことだ。どうして百年前にこの学園で一人倒れていたのか知らないが、初代理事長の計らいで十分に休息できたはずだ。ここはお前のいるべき場所ではない。魔界へ帰ってもらおう。」
「…嫌だ。」
 うつむいたラフェの表情は見えない。しかし、強く握りしめた拳から意思の強さが感じられた。
「弱っていた私を助けてくれたあの時の人間には感謝している。でも! どうしても帰りたくない理由があるんだ!」
「そんなことは俺達に関係ないな。魔界の生物がこの人間界に存在しているだけで俺たちにとって脅威なんだ。いつこの世界を滅ぼされてもおかしくない。」
「そんなことはしない!」
「その言葉を信じられる証拠はない。」 
 俺達の間に張り詰めた空気が流れる。
 高木先輩を睨みつけるラフェの前に、成瀬先輩が割って入った。
「ラフェちゃん。私達はね、別に意地悪で言ってるんじゃないの。魔界のみんなも、きっとラフェちゃんの帰りを待ってるよ。」
「うるさい! 私は帰りたくない!」
 高木先輩は俺の方を振り向いた。
「日生、お前も帰るように説得しろ。お前の言う事なら聞くかもしれない。」
 正直、こんな展開についていけてない自分がいた。さっきまでみんな、笑って話していたじゃないか。それなのにこんな、言い合いになって…
 言葉に詰まっていると、ラフェが叫んだ。
「自分の運命を力ずくで変えようとしてるんじゃないかっ!」
 振り絞るようなその言葉に、俺は強い衝撃を受けた。
 俺は今まで巻き込まれ体質だと割り切って、流れに身を任せてきた。運命を変えてやろうだなんて、これっぽっちも考えてこなかった。でも、目の前にいる俺より小さな女の子は運命に逆らおうと必死にもがいてるじゃないか。そんなこの子を、また俺は流れに身を任せて、その努力を踏みにじってもいいのか?
 そして自然と言葉がこぼれた。
「無理に帰らせなくても、いいんじゃないでしょうか。」
「あ?」
 こいつは何を言い出すんだとでも言いたげな表情で高木先輩が俺を見る。
「さっき帰りたくない理由があるって言ってました! それなのに、その理由も聞かずに帰していいんですか!? 帰った後、ラフェにどんな運命が待っているかも知らないくせに!」
「お前、自分がどういう事を言ってるのか本当に分かっているか? 帰りたくない理由があるなら無理に帰らなくていいだと? どれだけ無責任なことを言っていると思っているんだ!」
「じゃあ俺がラフェの面倒を見ます! 万が一、ラフェがこの世界に害を与えそうになったら、俺が身をもって阻止します! だから、ラフェが元いた世界に戻ってもいいって思えるまで、待ってくれませんか!?」
 少しの沈黙の後、高木先輩はハァっとため息をついた。
「全く…そこまで言うとは驚いた。まあ、俺達としても力づくでラフェを帰らせることはできないし、なるべく穏便な形で帰したいとは思ってる。」
「日生君、面倒を見るって簡単なことじゃないのよ。これから毎日、自分の時間を使って面倒を見るの。何を食べるか知ってる? 一日の生活リズムは? 楽しい事だけじゃないのよ。」
「そんな、ペットを飼いたがってる子供を諭すみたいに言わなくても…」
 俺の言葉に高木先輩と成瀬先輩が吹き出す。やっと張り詰めていた空気がほどけた。
「何を食べるかと言えば、さっきクリームパンをあげたら喜んで食べてましたよ。」
「魔王の娘ってクリームパン食べるの!?」
 成瀬先輩は目を丸くして言った。
 高木先輩が口を開く。
「まあ、なんだ。俺達と日生は最終的な目的として一致しているんだ。困ったことがあったら何でも言ってくれ。協力する。」 
「あ、ありがとうございます!」
 成瀬先輩は紙にサラサラと何かを書いて、俺に差し出した。
「これ、私の電話番号。何かあったらこの番号に連絡してね。」
「ありがとうございます。」
 俺はラフェに手を差し伸べた。
「…ラフェ。」
 赤い瞳は不安そうに揺れている。もう、大丈夫だから。
「行こう!」
「うん!」
 俺達は手を取って部屋を飛び出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...