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見た目関係あります?

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 さて、家出の原因がはっきりしたところで、これから私達はどう動くべきか。
「じゃあさ、ラフェちゃんはこっちの世界に出会いを求めてきたの? それともお父さんがお見合いを諦めるまで戻らないつもり?」
「出会いって…さすがに魔界に連れて行くわけにもいかないし、父さんは絶対に許さないだろうな。」
「もう家出までしちゃってるんだし、それくらい振り切ってもよくない?」
「乙女、お前なかなかフリーダムだな。」
「そう?」
 この反応だと、恋愛マッチング作戦とかじゃなくって、お父さんとのわだかまりをどうにかしないとだめか。
 とりあえずまた潔と相談だなぁ。私は立ち上がって伸びをした。
「うーん! ラフェちゃんと恋バナできて楽しかったぁ! また話聞いてね。」
「私のこと、帰らせたいんじゃないのか?」
「帰らせるよー。なる早でね。でも仕事とプライベートは別なの。」
「…変な奴。」
「ほら、私ってフリーダムだから。」
 私はウインクしてみせた。

 成瀬先輩に置いて行かれて、俺は魔王の使者と二人きりになってしまった。見張るって言っても、向こうは魔法がつかえるのに生身の俺がどうしろと!?
 無理のあるオーダーに、俺はかえって冷静さを取り戻した。
「なんか俺達が言い争っても意味ないですね。二人が戻るまで少し話しませんか?」
「それもそうですねぇ。私もつい感情的になってしまいました。」
 俺達は倉庫の床に座った。一旦落ち着くとアンバランスなうさ耳にどうしても目が行ってしまう。
「これが気になりますか?」
 そう言ってソーマさんは自分の耳を撫でた。
 ラフェは角や尻尾を見せることを嫌う。今回の場合は初めからついていたわけだし、見てしまうのは不可抗力だけど、「私のうさ耳を五秒以上見たものは抹殺する…」とか言われたらどうしよう…でも言い逃れは出来ない。
「ええ、まあ…」
「人間とは違う形ですもんね。気になるのも無理ないですよ。私達魔人は特徴的な耳や角、尻尾がついているんです。私にも実は尻尾があるんですよ。小さいので服の下に隠れて見えませんが。」
「そうなんですね。」
 この感じならうさ耳を見ても大丈夫そうだ。俺は胸を撫でおろした。
「男はそのままですが、女性の角や尻尾はいつも現れているのではなくて、心理的衝撃があった時に出現するんです。実は姫様にも角なんかがあるんですよ。」
「へ、へぇ…」
 知ってますけど…
 これ以上この話題を続けるとボロが出そうだ。俺は話題を変えた。
「さっきの伝言で言ってた『準備』って、あれ何のことなんですか?」
「ああ、あれは姫様の結婚相手との顔合わせの準備ですよ。」
「え? 決闘相手?」
 ラフェはなにで戦うんだろ…やっぱり魔法か?
「姫様はこれからの魔界を担う大切なお方。その姫様にふさわしい相手を魔王様がお選びになったのです。」
「相手ってどんな人なんですか?」
「魔王様とも親交の深い名家のご子息で、優秀だと評判が高い方です。魔術の腕前は姫様に肩を並べるほどだとか。それに、見た目もかなり整っていると聞きます。」
「見た目関係あります?」
「大ありですよぉ! 内面も外見も姫様が気に入る方じゃないと!」
 実力とルックスが伴わないと決闘相手として相応しくないってことか。
「でも、ラフェは嫌がってるんですよね。」
「そうなんです…これほど結婚相手にふさわしい方はなかなかいらっしゃらないのに…」
「魔王はどうしてそんなに決闘させたいんですかね?」
「姫様の一番輝く姿を見たいって魔王様はよくおっしゃっていましたけど、それだけではなくて…どうやらこの結婚を期に、姫様を魔術の最前線から遠ざけたいみたいです。」
「へぇ。」
「姫様は持ち前のセンスの良さから魔術研究の最前線で活躍されてきました。しかし、研究にはやはり危険がつきものですので、魔王様は姫様を最前線から退ける『口実』が欲しいのです。お相手の方は先ほども言ったように、姫様に並ぶほどの魔術の使い手ですから。」
「なるほど。」
 段々とこの話が見えてきた。魔王は強い相手と魔術で決闘させることでラフェを敗北させ、失意のラフェを魔術研究から外そうっていう魂胆なわけだ。後任にはその決闘相手が入るんだろう。それに対してラフェは『両親の総意』として決闘の準備を勝手に進める魔王に腹が立ってるってところか。
 ん? じゃあラフェが自主的に魔術研究を外れれば、上手くことが進むのでは? その時、ソーマさんが出てきた穴が目に入った。
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