巻き込まれ体質の俺は魔王の娘の世話係になりました

亜瑠真白

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魔界から出てきた本当の理由

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「はぁっ…魔界の気を察知して急いで来てみれば、ソーマじゃないか。」
「姫様…お元気そうで何よりです。このソーマ、ずっとお会いしとうございました。」
「あー…まあ、心配かけたな。」
 ラフェは少し恥ずかしそうに髪をいじった。
「百年経って、ソーマは少し貫禄が出たんじゃないか? ほら、この辺とか。」
 そう言ってソーマさんのうさ耳を触る。
「ありがとうございます。…姫様はそのような丈の短いお召し物、一体どうされたのですか?」
「ああ、これか?」
 ラフェは制服のスカートの裾をつまんだ。
「この世界の正装なんだ。郷に入っては郷に従えと言うからな。」
 ちょっと違う気もするが…まあいいか。
「そうですか…」
 ソーマさんは納得のいっていない様子だった。
「ところで今日はどうしたんだ? よくここまで来られたな。」
「はい。魔王様の力をお借りして入り口を開いてもらいました。五年くらい前から姫様の魔力を感知して、ようやく場所を特定したんです。それで、魔王様からの伝言が『もう準備は完璧にできている。早く帰ってこい』との…」
「嫌だ! 絶対帰らない!」
 そう言ってラフェは倉庫を飛び出した。
「私はラフェちゃんを追いかけるから、日生君はその人を見張っておいて!」
 成瀬先輩はラフェの後を追った。

「ラフェちゃん!」
 ラフェちゃんは階段下のスペースに座り込んだ。私も隣に座る。
「何だよ、乙女。お前もどうせ早く帰れって言うんだろ。」
「まあ、それが私達の役目だからね。でも今はラフェちゃんと話がしたいの。」
「…ふぅん。」
 嫌ってわけではないみたい。私は話を続けた。
「ラフェちゃんはどうして魔界から出てきたの? お父さんの言動に怒っているんだろうけど、さっきの伝言にあった『準備』っていうのが関係してるんじゃないかな」
「ああ…父さんは私の見合いを勝手に進めているんだ。」
「おおお、お見合い!?」
「乙女、うるさい。」
 想像もしなかった言葉に思わず大きな声が出てしまった。
「相手方は良家の長男で頭脳明晰、容姿端麗、おまけに魔術も一級品だってさ。これ見よがしにリビングに置いてあった写真を少し見たけど、確かに育ちのよさそうな男だった。魔王である父からしたら私の結婚相手とはすなわち次期魔王になる訳で、口を出したくなる気持ちも、まあ少しは理解できる。父さんと母さんの幸せそうな様子を見てきたから、結婚に憧れもある。…でも私は! これから何百年、何千年と生活を共にする人を勝手に決められたくはない! それに、父さんが勝手に決めたことを、母さんも同じ意見だってプレッシャーをかけてくるところが本当に嫌だ!」
「う、うん。ラフェちゃんの言いたいことはよく分かったから、一旦落ち着いて。」
 今の話をまとめると、
「つまり、ラフェちゃんは恋愛結婚したいってことだよね?」
「恋愛、結婚?」
「ラフェちゃんはこれから出会う素敵な王子様と恋に落ちて、時には喧嘩したりしながらも段々と愛を深めていって、その先で結婚したいんだよね。もしかしたら、もう出会ってるのかもしれないけど。」
「乙女には王子がいるのか?」
「…いるよ。不器用だけどいつもまっすぐで。小さい頃からずっと、私の王子様。」
 昔から目つきが悪くて、怒っているように周りから思われがちだったけど、本当は驚いたり喜んだり、表情がころころ変わって楽しい人だって、きっと幼なじみの私だけが知っている。
「乙女はそいつと結婚するのか?」
 結婚…結婚かぁ。
「したい…けど、ぜーんぜんダメなの。もしかしたら異性としても見られてないかも。色々と頑張ってはいるんだけどなぁ…」
 視線を落とすと自分の束ねた髪が視界に入った。この髪だって…高校一年生の時、潔の部屋に遊びに行くと、机にツインテールの女の子が表紙の雑誌が置いてあった。わざわざ見えるところに置いてあるくらいだから好きなのかと思って、それから私は髪を伸ばし始めた。そして今では表紙の子と同じくらいの髪型になった。かといって潔の態度に変化はないけど、なんとなくやめられずにいる。
「苦労してるんだな。」
「ラフェちゃんは好きな人いないの?」
「わ、私!?」
 その時、ふわっと向かい風が吹いた。おかしいな、近くに窓もないのに。
「私は…好きな人なんて…」
「えええ!?」
 顔を赤くして照れるラフェちゃんの頭には角が現れていた。
「そ、それ…っ!」
 私が頭を指さすと、ラフェちゃんは角に触れた。
「ああ…乙女が恥ずかしいことを聞くからだぞ。」
 私の驚きとは対照的に、ラフェちゃんはなんてこともなさそうに言った。よく見るとラフェちゃんの後ろで狐みたいな尻尾がゆらゆらと揺れている。
「私達、魔人の女はこんな風に驚いたり、感情が大きく動かされた時に角や尾が出てくるんだ。ソーマみたいに男はずっとついたままなんだけどな。」
「へぇ、そうなんだ。」
 話を聞きながらも、揺れている尻尾がふさふさでつい気になってしまう。ちょっと触ってみたいなぁ…
 私はこっそり手を伸ばした。
「こら、乙女! いくら女同士だからって気安く触ろうとするんじゃない!」
「えぇー、ちょっとくらい許してよ。減るもんじゃないし。」
「私的に何かが減る!」
 仕方なく触るのはあきらめた。
「じゃあ、せっかく可愛いから写真撮ってもいい? 潔と日生君にも見せてあげたいし。」
「ダメだ!」
 ラフェちゃんは強い口調で言った。
「角や尾は家族と結婚相手以外の異性に見せてはいけないことになっているんだ。」
「そっか。何にも分かってないのにごめんね。じゃあ、この姿を見られた私はラッキーだ。潔と日生君は残念だったねー。」
「そ、そうだな…」
 ラフェちゃんはなぜか歯切れが悪そうに言った。
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