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メイドカフェ始動
接客演習
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キラの後ろについて行くと、深恋が側に立っているテーブルセットのところで足を止めた。
「亮太は椅子に座って」
「あ、はい……」
言われるままに座る。これから何が始まるんだ。
キラは皇の方に顔を向けた。
「メイドカフェのメイドらしい接客の手本は、私よりも皇さんにやってもらった方がいいと思って。お願いできる?」
「そういう事なら任せて」
そう言うと、皇はふぅっと深く息を吐いた。そして、俺の方を向く。
「お帰りなさいませ、ご主人様♡ ご帰宅の証はお持ちですか? 初めて来たなんて、いつもお帰りになっているのに忘れてしまったんですね♡ んふふ、お茶目なご主人様♡ それでしたら、このカードにメイドからなんて呼ばれたいか書いていただけますか? ありがとうございます、まゆはちゃんと覚えましたよ♡ 今日のお食事は、まゆが愛情たっぷりのハートをふわふわオムライスにお絵かきするのなんてどうですか? 楽しくて忘れられない時間にしちゃいますよ♡」
皇は両手でハートを作って、俺にウインクした。深恋とキラからは「おお……」と自然に拍手が湧く。
皇は2人の方を向いた。
「こんな感じでどう?」
「しゅ、しゅごいでしゅ……!」
「新規のお客様に自然な流れで会員証の案内からおすすめフードメニューへの誘導。さすが抜かりないね」
「当然よ」
そう言うと、皇は俺に挑発的な視線を向けた。
「どうだった? あまりにも可愛くて、もしかして惚れちゃったんじゃない?」
「変わり身の早さにちょっと引いてた」
「そこは可愛いって言いなさいよぉ!」
その時、奥の部屋から汐姉が戻ってきた。
「茉由、メイド服が出来たからこっちに来てくれ。深恋も手伝いを頼む」
そう言われて、茉由と深恋は奥の部屋へ歩いて行った。
2人が近くを離れて、はぁと息が漏れた。さっきの茉由は決して可愛くない訳ではなかったし、むしろメイドカフェのメイドとして満点なんじゃないかとさえ思った。ただ、それまでの態度との温度差で素直に評価できないだけで。
「ご主人様」
側に立つキラはそう言った。
「はぇ?」
急なことにびっくりしすぎて間抜けな声が出た。
「本日も心を込めてお給仕させていただきます。ごゆっくりとおくつろぎください、亮太様」
そう言って俺にお辞儀をすると、ふっと微笑んだ。
なんだ、この状況は……! キラが俺に女神のような微笑みを向けているなんて……顔に血が上ってくるような感覚に慌てて鼻を押さえた。
キラは俺に背を向けた。
「私の接客はどう思う?」
「どうって……汐姉もいいって言ってたし問題ないと思うけど」
というか、キラの強すぎるビジュアルに客の体が耐えられるかという方が問題あるかもしれない。
「そうじゃなくて、亮太はどう思うの」
俺がどう思うかなんて、どうしてそんなことを聞きたいんだろう。
「好き? きらい……?」
キラの意図は全く分からないけど、言葉がいつもより弱々しくて緊張しているのが伝わってきた。それにつられて俺まで心臓がドクドクとうるさくなってくる。
「俺は……」
「2人とも来てくれ! 私の作ったメイド服を着た茉由がすごく可愛い!」
上機嫌でやってきた汐姉のせいで繊細な空気はぶち壊された。
それから翌日も俺達は開店の準備を進めた。メイド3人は汐姉に「遅いからもう帰れ」と言われるまで接客の打ち合わせを続けていたし、俺も内装やらビラ配りやらで働き詰めだった。
そして、開店の日を迎えた。
「亮太は椅子に座って」
「あ、はい……」
言われるままに座る。これから何が始まるんだ。
キラは皇の方に顔を向けた。
「メイドカフェのメイドらしい接客の手本は、私よりも皇さんにやってもらった方がいいと思って。お願いできる?」
「そういう事なら任せて」
そう言うと、皇はふぅっと深く息を吐いた。そして、俺の方を向く。
「お帰りなさいませ、ご主人様♡ ご帰宅の証はお持ちですか? 初めて来たなんて、いつもお帰りになっているのに忘れてしまったんですね♡ んふふ、お茶目なご主人様♡ それでしたら、このカードにメイドからなんて呼ばれたいか書いていただけますか? ありがとうございます、まゆはちゃんと覚えましたよ♡ 今日のお食事は、まゆが愛情たっぷりのハートをふわふわオムライスにお絵かきするのなんてどうですか? 楽しくて忘れられない時間にしちゃいますよ♡」
皇は両手でハートを作って、俺にウインクした。深恋とキラからは「おお……」と自然に拍手が湧く。
皇は2人の方を向いた。
「こんな感じでどう?」
「しゅ、しゅごいでしゅ……!」
「新規のお客様に自然な流れで会員証の案内からおすすめフードメニューへの誘導。さすが抜かりないね」
「当然よ」
そう言うと、皇は俺に挑発的な視線を向けた。
「どうだった? あまりにも可愛くて、もしかして惚れちゃったんじゃない?」
「変わり身の早さにちょっと引いてた」
「そこは可愛いって言いなさいよぉ!」
その時、奥の部屋から汐姉が戻ってきた。
「茉由、メイド服が出来たからこっちに来てくれ。深恋も手伝いを頼む」
そう言われて、茉由と深恋は奥の部屋へ歩いて行った。
2人が近くを離れて、はぁと息が漏れた。さっきの茉由は決して可愛くない訳ではなかったし、むしろメイドカフェのメイドとして満点なんじゃないかとさえ思った。ただ、それまでの態度との温度差で素直に評価できないだけで。
「ご主人様」
側に立つキラはそう言った。
「はぇ?」
急なことにびっくりしすぎて間抜けな声が出た。
「本日も心を込めてお給仕させていただきます。ごゆっくりとおくつろぎください、亮太様」
そう言って俺にお辞儀をすると、ふっと微笑んだ。
なんだ、この状況は……! キラが俺に女神のような微笑みを向けているなんて……顔に血が上ってくるような感覚に慌てて鼻を押さえた。
キラは俺に背を向けた。
「私の接客はどう思う?」
「どうって……汐姉もいいって言ってたし問題ないと思うけど」
というか、キラの強すぎるビジュアルに客の体が耐えられるかという方が問題あるかもしれない。
「そうじゃなくて、亮太はどう思うの」
俺がどう思うかなんて、どうしてそんなことを聞きたいんだろう。
「好き? きらい……?」
キラの意図は全く分からないけど、言葉がいつもより弱々しくて緊張しているのが伝わってきた。それにつられて俺まで心臓がドクドクとうるさくなってくる。
「俺は……」
「2人とも来てくれ! 私の作ったメイド服を着た茉由がすごく可愛い!」
上機嫌でやってきた汐姉のせいで繊細な空気はぶち壊された。
それから翌日も俺達は開店の準備を進めた。メイド3人は汐姉に「遅いからもう帰れ」と言われるまで接客の打ち合わせを続けていたし、俺も内装やらビラ配りやらで働き詰めだった。
そして、開店の日を迎えた。
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