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文化祭
集合写真
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先に着替えを済ませて撮影スペースで待っていると、衣装に着替えた3人がやってきた。
「わぁ! 王子様みたいでかっこいいです。じゃなくって、かっこいいよ!」
「ああ深恋、ありがと……」
機材の準備をしている写真部の奴らも、衣装を選んでいた生徒も、3人に釘付けになっている。それもそうだ。「二学年の三大美少女」のドレス姿はあまりにも美しい。
深恋はスカートにボリュームのある薄ピンクのドレス。腰についたリボンが、深恋の可愛らしさを引き立てている。
姫野はブルーのマーメイドドレス。スタイルを生かした大人っぽいシルエットでありながら、肩回りの大きなフリルが姫野の可憐さも表現している。
皇はパステルイエローのミニ丈ドレス。何枚も重なったフリルスカートや首元の大きなリボンが、可愛いもの好きな皇らしい。
そんな3人と一緒のフレームに収まるなんて気が引けるというか、見てるやつらに刺されそうだ。俺が学年を代表するようなイケメンだったら絵になっただろうけど、衣装に着られているようじゃなあ……
「やっぱり3人で撮りなよ。俺は見てるからさ」
「だめ。4人で撮るの」
「そうよ。観念しなさい」
そう言う姫野と皇に両腕を取られて、カメラの前へと連行される。
「せめて端にしてほしいんだけど……」
「ほら、もっと寄ってくださーい!」
姫野に腕を絡めた深恋がそう言ってぐいぐいと押してくる。
「ちょっと深恋押すなって……!」
どうしたって両側から感じる柔らかい感触や甘くていい匂いに意識が取られる……っ!!
「亮太、ポーズは?」
「両腕拘束されてポーズなんか取れるかっ!」
「仕方ないわね。端の私と深恋で何かしましょうか」
「あ、それなら2人の手を合わせて『P』を作るのはどうかな。プレジィールのPって……どうして皆さん目を逸らすんですか!」
「ま、まあ個性的だと思うよ。シュールな仕上がりになりそうだけど」
「もう! それなら亮太が決めてください!」
「俺、決め技は目つぶししか知らないから……」
「誰が決め技教えろって言ったのよ」
「あの、そろそろ撮ってもいいですか?」
「あっすいません! お願いします!」
「あはは、決め技ってなんですか」
「ふふっ、確か初めて深恋とメイド服着た時、自分の目にやってた」
「ええー、なにそれ! ちょっと詳しく聞かせてよ」
「もうやめて!?」
シャッターを切る音が俺達の笑い声の奥で聞こえた。
「はぁ……」
廊下に出ると自然にため息が出た。やっぱり俺は何の個性もないこの制服が落ち着く。
3人は写真部に頼まれて何着かモデルをやるらしい。今のうちになんか食べ物でも買ってくるか。
渡り廊下を歩いていると、どこかから話し声が聞こえた。
「お前本当にやるのか?」
「だって、こんなタイミングでもなきゃ無理だろ。あの三大美少女の一人に告白なんて」
え……
「文化祭最後のキャンプファイヤーで告白したら必ず成功するってジンクスな。確かに部活の先輩も去年それで彼女出来てたわ」
「あー、ついに俺にも可愛い彼女が出来るのか……」
「バカ、気が早すぎるだろ」
そう言って笑いあう声に、妙に胸がざわついた。
深恋も姫野も皇も、今まで当たり前のように過ごしてきたけど、学校中で注目を集めるような美少女だ。付き合いたい男子はいくらでもいるだろう。
もし彼氏が出来たら、さっきみたいに隣で写真に写るのは俺じゃない。2人で出かけたりして、そいつしか知らない顔を見せるんだろう。俺以外の奴に――
あれ、どうして俺、あいつのことを考えてるんだろ。
……………
最新話までお読みいただきありがとうございます。
次回、最終回は5/13夜に更新予定です。
「わぁ! 王子様みたいでかっこいいです。じゃなくって、かっこいいよ!」
「ああ深恋、ありがと……」
機材の準備をしている写真部の奴らも、衣装を選んでいた生徒も、3人に釘付けになっている。それもそうだ。「二学年の三大美少女」のドレス姿はあまりにも美しい。
深恋はスカートにボリュームのある薄ピンクのドレス。腰についたリボンが、深恋の可愛らしさを引き立てている。
姫野はブルーのマーメイドドレス。スタイルを生かした大人っぽいシルエットでありながら、肩回りの大きなフリルが姫野の可憐さも表現している。
皇はパステルイエローのミニ丈ドレス。何枚も重なったフリルスカートや首元の大きなリボンが、可愛いもの好きな皇らしい。
そんな3人と一緒のフレームに収まるなんて気が引けるというか、見てるやつらに刺されそうだ。俺が学年を代表するようなイケメンだったら絵になっただろうけど、衣装に着られているようじゃなあ……
「やっぱり3人で撮りなよ。俺は見てるからさ」
「だめ。4人で撮るの」
「そうよ。観念しなさい」
そう言う姫野と皇に両腕を取られて、カメラの前へと連行される。
「せめて端にしてほしいんだけど……」
「ほら、もっと寄ってくださーい!」
姫野に腕を絡めた深恋がそう言ってぐいぐいと押してくる。
「ちょっと深恋押すなって……!」
どうしたって両側から感じる柔らかい感触や甘くていい匂いに意識が取られる……っ!!
「亮太、ポーズは?」
「両腕拘束されてポーズなんか取れるかっ!」
「仕方ないわね。端の私と深恋で何かしましょうか」
「あ、それなら2人の手を合わせて『P』を作るのはどうかな。プレジィールのPって……どうして皆さん目を逸らすんですか!」
「ま、まあ個性的だと思うよ。シュールな仕上がりになりそうだけど」
「もう! それなら亮太が決めてください!」
「俺、決め技は目つぶししか知らないから……」
「誰が決め技教えろって言ったのよ」
「あの、そろそろ撮ってもいいですか?」
「あっすいません! お願いします!」
「あはは、決め技ってなんですか」
「ふふっ、確か初めて深恋とメイド服着た時、自分の目にやってた」
「ええー、なにそれ! ちょっと詳しく聞かせてよ」
「もうやめて!?」
シャッターを切る音が俺達の笑い声の奥で聞こえた。
「はぁ……」
廊下に出ると自然にため息が出た。やっぱり俺は何の個性もないこの制服が落ち着く。
3人は写真部に頼まれて何着かモデルをやるらしい。今のうちになんか食べ物でも買ってくるか。
渡り廊下を歩いていると、どこかから話し声が聞こえた。
「お前本当にやるのか?」
「だって、こんなタイミングでもなきゃ無理だろ。あの三大美少女の一人に告白なんて」
え……
「文化祭最後のキャンプファイヤーで告白したら必ず成功するってジンクスな。確かに部活の先輩も去年それで彼女出来てたわ」
「あー、ついに俺にも可愛い彼女が出来るのか……」
「バカ、気が早すぎるだろ」
そう言って笑いあう声に、妙に胸がざわついた。
深恋も姫野も皇も、今まで当たり前のように過ごしてきたけど、学校中で注目を集めるような美少女だ。付き合いたい男子はいくらでもいるだろう。
もし彼氏が出来たら、さっきみたいに隣で写真に写るのは俺じゃない。2人で出かけたりして、そいつしか知らない顔を見せるんだろう。俺以外の奴に――
あれ、どうして俺、あいつのことを考えてるんだろ。
……………
最新話までお読みいただきありがとうございます。
次回、最終回は5/13夜に更新予定です。
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