もしも推し(女)にそっくりな男の子が隣に引っ越してきたら?

亜瑠真白

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ごめんねぇ…

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 今日はお昼に菜々子さんの部屋でプレゼンのお疲れ様会をする予定になっていた。
 朝ごはんを食べていると、スマホが鳴った。
「菜々子さんから…?」
 僕は電話に出た。
「もしもし、どうしたんですか?」
「斗真君…ごめんねぇ…」
 声がいつもと違う。ガラガラしてるみたいだし、元気もない。
「昨日から、ちょっと調子が悪くて…一晩で絶対治そうと思って、昨日は風邪に打ち勝つためにかつ丼弁当食べて、10時間睡眠とったんだけど…朝起きても具合が良くならなくて…世界の宝である斗真君にうつすわけにはいかないから、今日は会うのやめようね…またね。」
 そう言って電話が切れた。
 菜々子さん、風邪!?具合悪いのにかつ丼弁当とかどうなんだろう…いつもよりも変なこと言ってたし…
 菜々子さんの部屋と隣り合った壁に目を向ける。この壁の向こうで苦しんでるんじゃないかな。1人暮らしだから買い物にも行けないし、困ってるかも…
 居てもたってもいられなくて、僕は部屋を飛び出した。 

 僕は近くのドラッグストアでゼリーや風邪薬を買い、菜々子さんの部屋のピンポンを押した。
 しばらくすると、扉が開いた。
「はい…」
 出てきた菜々子さんはパジャマ姿で、赤い顔をしていた。
「菜々子さん!ゼリーとか買って来たので食べてください!」
 パジャマ姿なんて異性にはあんまり見られたくないかも。僕は目をそらしながら、食料や風邪薬の入ったレジ袋を差し出した。
 渡して部屋に戻ろう、そう思っていた。
 菜々子さんはレジ袋を受け取り損ねて、ペットボトルやカップが床に転がった。
「ああ…ごめんねぇ…」
 そう言って落ちたものを拾おうとする菜々子さんの体がよろめいた。
「…っと!」
 支えるために菜々子さんの体に触れる。
 熱い。想像よりも具合が悪いみたい。
 遠慮していた気持ちが吹き飛んだ。
「すいません!お邪魔します!」
 僕は菜々子さんを支えて部屋に上がった。

 ひとまず菜々子さんをベッドに運んだ。
「風邪うつしたら悪いから、ここまででいいよ。ありがとうね…」
 ベッドに腰掛けた菜々子さんは赤い顔でそう言った。こんな様子を見て、放っておけないよ。
「だめです。菜々子さんが何て言っても、熱が下がるまで帰りません。」
「そんなぁ…」
 菜々子さんは肩を落とした。
「熱はどのくらいですか?」
「んー…朝起きて測ったら、38.3℃?だったかな…」
 やっぱり高い。
「薬は飲みましたか?」
「苦いの苦手なんだよね…」
 そう言って顔をそむける。それは熱が下がらないわけだ。
「僕、風邪薬買ってきましたから!よかったら飲んでください!」
「うう…」
「早く具合治して、プレゼンのお疲れ様会したいです。」
「…すぐ飲みます。」
 菜々子さんは苦い顔をしながらも薬を飲んでくれた。そして、ベッドに横たわる。
「何かしてほしいことはありますか?」
「頭が熱くて…体が寒い…」
「分かりました。ちょっと待っていてください。」
 僕は菜々子さんの部屋のカギを借りて、自分の部屋から毛布と氷枕を持ってきた。さすがにクローゼットから毛布を探すのは気が引けた。
「気持ちいい…」
 毛布をかけ、氷枕を頭の下に入れると、菜々子さんの表情が少し和らいだ。
「スポーツドリンク、枕元に置いておくので飲めそうなときに飲んでください。あと何かあったら声かけてください。何でもやりますから。」
「ふふっ…斗真君は優しいねぇ…」
 そう言ってへにゃっと笑う。
「斗真君にお世話になるのはこれで2回目だね…」
「そうですね。」
 前は菜々子さんの誕生日。いつもの時間に菜々子さんの部屋のピンポン押したら反応が無くて、しばらく待ってみたけど一旦自分の部屋に戻ることにした。仕事が長引いているのかもしれないし。それから1時間、2時間と経って、段々心配になってきた。
 もしかしたら何かあったんじゃないか。部屋で倒れているんじゃないか。
 一人暮らしだから何かあっても気づいてもらえない。もしそうだったら、どうしよう…
 もう一度菜々子さんの部屋に行ってみよう。そう思った時、特徴的なヒールの鳴る音が廊下から聞こえた。それだけで、どれだけ安心したか…
 菜々子さんは今まで見たことがない様子だった。いつもは人を惹きつける力があって、自分に自信を持っているからこその輝きがあって。そんな姿に僕は憧れていた。それなのにその日は輝きが無くなっていて、僕が何とかしないとって咄嗟に思ったんだ。
 今日もそれに近いかも。風邪で元気のない菜々子さんに何でもしてあげたいって思った。
 近くで寝息が聞こえる。菜々子さんはいつの間にか眠ったみたいだった。
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