もしも推し(女)にそっくりな男の子が隣に引っ越してきたら?

亜瑠真白

文字の大きさ
28 / 46
容量いっぱい

なにそれ…可愛すぎない?

しおりを挟む
『好きです。』
 斗真君は真剣な顔でそう言った。
 その後の記憶は曖昧だ。自分が何を言ったかよく覚えていないし、どんな風に解散したのかも分からない。ただ確かなことは、斗真君の看病のおかげで次の日には体調がよくなったってことと、大好きなアイフレのゲームが手につかなくなったってこと。
 だって、らむねちゃんを見ると斗真君を思い出すから。
 あの斗真君がだよ!?私を好きだとか…。お顔がらむねちゃんそっくりで最高に可愛らしいってだけじゃなくて、内面も可愛くて尊いあの斗真君が…!
 大体、斗真君とつ、付き合うなんて想像したこともなかったし、そんなことしたら何かしらの罪で捕まりそうだし、斗真君を異性として見たことなんて…いや、全くないこともないな。
 ダメだ。キャパオーバーすぎる…
 そんなこんなで過ごしていたら、斗真君からお疲れ様会を改めてやろうというお誘いのメッセージが来た。反射的に即レスしてから思った。「どんな顔して会えばいいんだろう」と。
 あの日のことはよく覚えていないけど、錯乱状態だった私に告白の返事は出来なかったはず。つまり宙ぶらりん状態。最低過ぎない!?
 次に会う時には返事をしないと…と考えているうちに、その日が来た。

「菜々子さん、おはようございます。」
「お、おはよう。」
 斗真君はなんでいつも通りでいられるんだろう。私はこんなに緊張しているのに…
 部屋に入ると、斗真君は持っていた大きな袋を床に置いた。
「今日は僕がお昼ご飯を作りますね。キッチンお借りします。」
「あ、うん…」 
 今日何をするかは特に話し合っていなかった。袋には食材が入っているのかな。
「そうだ!材料のお金払うよ!いくらだったか教え…」
「いいですって。今日は菜々子さんのための会なんですから。それに最近、大学内のバイトをしてお給料が入ったんです。だから気にしなくて大丈夫です。」
「そっか…」
 せっかく働いて貰ったお金なのにって思うけど、斗真君がいいって言うんだからこれ以上言うのは野暮な気がする。
「菜々子さんと一緒にケーキを作ってから料理に興味が出てきて、いろいろ調べて作るようになったんです。」
 ああ…あの時か。アイフレの3話で聖那ちゃんが作っていたベイクドチーズケーキが作りたくて、やってみたけど本物とは似ても似つかない物体が誕生した。その後、斗真君と一緒にもう一度作り直したんだったなぁ。斗真君は失敗したほうのケーキも美味しいって言って食べてくれて、尊い…!って思ったのを覚えている。
「頑張って作るので、待っていてくださいね。」
 そう言って斗真君はカバンから取り出したエプロンと三角巾を身に着けた。
 なにそれ…可愛すぎない?
「…やっぱり、お金払わせてください。」
「何でそうなるんですか!?」
 これは有料でしょ。

 私のキッチンで可愛い子が料理をしている。三角巾で髪を隠しているから、可愛いお顔がより際立つ。
 …らむねちゃんが調理実習とかしたらこんな感じなのかな。農学科の同級生が羨ましい…!
「菜々子さん…そんなに見られてると緊張しちゃいます…」
 斗真君が作業の手を止めて私の方を見た。
「ああ、ごめん。…でも、欲望には抗えなくて。」
 この姿を一秒たりとも見逃したくはない。
「料理失敗するかもしれないですよ。」
「それはそれでいいです。」
 ドジっ子のらむねちゃん。全然アリ。
「もう…」 
 斗真君は唇を尖らせた。えっ…可愛っ…
「菜々子さんは彼氏いるんですか?」
「うぇっ!?」
 予想もしない言葉に変な声が出た。
「どうなんですか?」
「い、いないよ!彼氏なんてもう何年もいないし!」
 あ、動揺しすぎて余計なことまで言った気がする。
「…よかった。」
 斗真君はそう呟いたように聞こえた。

「さあ、食べましょうか。」
 テーブルには斗真君が作ってくれた色とりどりの料理が並ぶ。メインはハンバーグ。
「すごいね…こんなに料理が上手だなんて…」
「味は保証できないですけど。…菜々子さん、改めてプレゼンお疲れ様でした。」
 そう言って斗真君が麦茶の入ったコップを小さく掲げる。
「ありがとう。」
 2つのコップがチリンと鳴った。

 ハンバーグを口に運ぶと、肉汁がジュワっと溢れた。
「美味しいよ、斗真君!」
「よかったです。たくさん食べて下さいね。」
 そう言って斗真君が笑う。
 ごはんは美味しいし、目の前にはとびきり可愛い子が座っている…幸せ。
 ああ…すごく穏やかな時間が流れてるけど、何か大事なこと忘れてないか。
 言わないといけないことがあったような…
「そうだ斗真君ごぶっ!」
「菜々子さん!?」
 思い出した。告白の返事をしないといけないんだった。
 斗真君が手渡してくれた麦茶で、喉につっかえたハンバーグを押し流した。
「ありがとう。…それで、あの、この前のこっ、告白のことなんだけど…ずっと考えてたんだけど、やっぱり上手く整理できなくて。だから…」
 付き合えないって言おうと思った。推し似の男の子と付き合うなんてどんな妄想だよって感じだし、正気でいられる気がしないし。
 それにこれから先、私よりももっと年相応で可愛らしくてお似合いな子が現れるんじゃないかって。いつか無くなる幸せなら初めから夢を見ないほうがいい。
「返事はまだ決めないでください。」
 斗真君は私の言葉を遮った。
「僕のことが嫌じゃないのなら、側にいさせてください。迷ったままでいいです。僕が振り向かせますから。」
 そう言って真っ直ぐな瞳で見つめる。
 なんていうか…
「斗真君ってそういうことさらっと言えちゃうんだ…」
 私の言葉に斗真君の顔がみるみる赤くなった。
「さ、さっきのは気づいたら言ってたというか…」
「なるほど、天然ものの人タラシタイプか。」
「タラシって…!変な言い方やめてください!」 
 斗真君は真っ赤な顔で懸命に抗議してきた。
 …賑やかになってよかった。静かなままじゃ、斗真君にまで私の鼓動が聞こえてしまいそうだったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

三十路おばちゃん、誕生日に異世界転移したら即プロポーズされて、家族ごと国を救って死後も一緒でした ――燕の傭兵団と、ある家族の物語――

いぬぬっこ
恋愛
 三十歳の誕生日。  ホールケーキを食べようとしたその瞬間、私は異世界に転移した。  助けてくれた美丈夫に即求婚され、半ば勢いで結婚。  十ヶ月後には息子も生まれ、私は異世界で「妻」で「母」になった。  穏やかな日々は十年続く。  だが、影の傭兵団によって村は焼き尽くされる。  夫は元・王国騎士団副団長。  敵の首領は、かつての仲間だった。  家族を守るため、  国を守るため、  私たちは戦う道を選ぶ。  ――これは、  異世界に転移したおばちゃんと、  その家族が歩んだ、  生涯の物語。 *この作品は、アルファポリス様・カクヨム様にも掲載しております。どうかご了承よろしくお願い致します。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!

らな
恋愛
男爵令嬢のリアはアルノー王国の貴族の子女が通う王立学院の1年生だ。 高位貴族しか入れない生徒会に、なぜかくじ引きで役員になることになってしまい、慌てふためいた。今年の生徒会にはアルノーの第2王子クリスだけではなく、大国リンドブルムの第2王子ジークフェルドまで在籍しているのだ。 冷徹な公爵令息のルーファスと、リアと同じくくじ引きで選ばれた優しい子爵令息のヘンドリックの5人の生徒会メンバーで繰り広げる学園ラブコメ開演! リアには本人の知らない大きな秘密があります。 リアを取り巻く男性陣のやり取りや友情も楽しんでいただけたら嬉しいです。 ひみつの姫君からタイトルを変更しました。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...