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ノーマルモードがデスモード
不意打ちの推しボイスは心臓に悪い
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薄暗い中、正面には円形の水槽が見える。その薄暗い明かりに引き寄せられるように奥へと進む。
「わぁ……」
思わず声が漏れる。水槽の中にはクラゲがゆったりとしたリズムで揺らめいていた。
「菜々子さん。このマークがあるところではヘッドホンが使えるんですよ」
そう言って斗真君が指さす先、水槽の右下にはアイフレのロゴマークがついていた。私はヘッドホンを装着した。
『この水槽は小鳥遊らむねが紹介するよ!』
「は……!」
声が出そうになるのを慌てて手で押さえる。
『この子はミズクラゲ。世界中に生息していて、日本でもよく見られるよ。傘の淵にたっくさんついている糸みたいな触手でエサになる動物プランクトンを捕まえるんだ。傘の真ん中にある四つ葉みたいなマークが可愛いよねぇ。これって実は胃なんだって。真央ちゃん家の牧場にいる牛達も胃が四つあるんだよ。見た目は全然違うのに、お揃いなんて面白いよね。あー、私も一緒にぷかぷかしたーい!』
「すぅー、はぁー」
思わず呼吸が浅くなっていたみたいで息を整える。不意打ちの推しボイスは心臓に悪い。
ヘッドホンを外すと、斗真くんと目が合う。
「1人目はらむねちゃんでしたね」
「うんうん! やっぱり可愛いねぇ」
「そうですね。また戻ってこれるみたいなので、ひとまず先に進みましょうか」
「うん!」
クラゲの次はサンゴ礁に暮らす生き物達を見て回る。このコーナーは生き物の種類が多く、音声案内もたくさん用意されていた。さらに奥へと進むと、一際大きな水槽の前にたどり着いた。
らむねちゃん、すずこちゃん、聖那ちゃん、涼ちゃん、羽瑠ちゃんときたから、次は瑠佳ちゃんかな……私は音声案内のボタンを押した。
『この水槽にはマグロにイワシ、エイ、そしてサメもいますね』
『すごいのら……』
おお……絵理奈ちゃんとめぐむちゃんか! 新曲を考えに来たチームも音声案内に入ってるんだ。
『この雄大さと美しさ、高貴な魅亜にふさわしいなぁ!』
『海の多様性豊かな感じがこの水槽に現れているよね。僕達にピッタリじゃないか。新曲のイメージに使えそうだよ。3人はこの水槽を見て直感的にどう思った?』
『美味しそう』
『美味しそうのら』
『美味しそう、です……』
『はぁ……そろそろお昼にしようか』
私はヘッドホンを外した。ふぅ……尊い。
「僕達もお昼にしましょうか。コラボメニューもあるみたいですよ」
「ええ!? それは行かないと!」
館内の案内表示に従って進んでいくと、レストランについた。店の前にはアイフレコラボメニューの看板が立っている。
「菜々子さんが気になるの、2つ選んでいいですよ」
「いいの!? それじゃあ遠慮なく……」
コラボメニューは4つ。「2年生ズのドキドキ職業体験カレー」、「見守りたい先輩・後輩のホットサンド」、「僕達にピッタリなミックスグリルプレート」、「和と洋のコラボレーション! 抹茶バームクーヘンケーキ」。それぞれの料理にはイメージしているキャラクター達のイラストカードがついてくる。前に行ったコラボカフェみたいにランダム配布じゃないなら、私が選ぶ2つは……
「お待たせ!」
私はカウンターで料理を受け取り、席を取ってくれていた斗真君と合流した。
「カレーとホットサンドにしたんですね。」
「うん! やっぱりこの2枚のカードが欲しくて」
席に着き、斗真君にカードを見せる。カレーの方についてきたのは、職業体験に来た2年生達がアクアピアの制服を着た集合写真。ホットサンドの方は、柱の陰から職業体験に参加しているメンバーの様子を伺う先輩、後輩達のカードだった。
「だってもう良すぎじゃない!? この集合写真、笑顔でダブルピースしてるらむねちゃんはもっちろん最高に可愛いし、その隣で照れてる愛実ちゃんとか、聖那ちゃんに寄りかかって眠そうにしてる涼ちゃんとか、メンバーの個性が溢れ出てるよね! それに、こっちのカードは心配そうに見守ってる表情が愛おしい! 他の2枚も今度貰いにこよっかなぁ……斗真君はカレーとホットサンド、どっちがいい?」
「じゃあ、カレーで」
「りょーかい」
私はカレーが載ったトレーを斗真君の前に移動させた。
「それじゃあ、いただきます……ん、美味しい!」
ホットサンドを一口頬張ると、こんがり焼けたパンの中からとろっと溶けたチーズとジューシーなベーコンの風味が広がる。
ふと視線を感じて正面を見ると、斗真君がニコニコとした表情で私を見ていた。
「どうしたの? もしかして、顔になんかついてる!?」
慌てて口元をぬぐうが、それらしきものはない。
「すいません、そうじゃなくて……その、ホッとして」
「え?」
「だって菜々子さん、今日の朝からずっと様子が変でしたよね? 口数は少ないし、いつもと違って不自然というか……でも、いつもの菜々子さんが戻ってきて安心しました。この場所を選んでよかったです」
不自然なのバレてたかぁ……でも今、斗真君に言われるまで朝の不安な気持ちは完全に忘れていた。斗真君がここに連れてきてくれたおかげだ。勝手にあれこれ悩んで楽しめないなんてもったいない。不安要素は一旦棚上げして、今この時を目いっぱい楽しもう!
「心配かけてごめんね。でも今はこの通りすっかり元気だよ! 斗真君のおかげですっごく楽しい!」
「そうですか。僕も、楽しそうにしている菜々子さんが見られて楽しいです」
そう言って斗真君は嬉しそうに笑った。
「わぁ……」
思わず声が漏れる。水槽の中にはクラゲがゆったりとしたリズムで揺らめいていた。
「菜々子さん。このマークがあるところではヘッドホンが使えるんですよ」
そう言って斗真君が指さす先、水槽の右下にはアイフレのロゴマークがついていた。私はヘッドホンを装着した。
『この水槽は小鳥遊らむねが紹介するよ!』
「は……!」
声が出そうになるのを慌てて手で押さえる。
『この子はミズクラゲ。世界中に生息していて、日本でもよく見られるよ。傘の淵にたっくさんついている糸みたいな触手でエサになる動物プランクトンを捕まえるんだ。傘の真ん中にある四つ葉みたいなマークが可愛いよねぇ。これって実は胃なんだって。真央ちゃん家の牧場にいる牛達も胃が四つあるんだよ。見た目は全然違うのに、お揃いなんて面白いよね。あー、私も一緒にぷかぷかしたーい!』
「すぅー、はぁー」
思わず呼吸が浅くなっていたみたいで息を整える。不意打ちの推しボイスは心臓に悪い。
ヘッドホンを外すと、斗真くんと目が合う。
「1人目はらむねちゃんでしたね」
「うんうん! やっぱり可愛いねぇ」
「そうですね。また戻ってこれるみたいなので、ひとまず先に進みましょうか」
「うん!」
クラゲの次はサンゴ礁に暮らす生き物達を見て回る。このコーナーは生き物の種類が多く、音声案内もたくさん用意されていた。さらに奥へと進むと、一際大きな水槽の前にたどり着いた。
らむねちゃん、すずこちゃん、聖那ちゃん、涼ちゃん、羽瑠ちゃんときたから、次は瑠佳ちゃんかな……私は音声案内のボタンを押した。
『この水槽にはマグロにイワシ、エイ、そしてサメもいますね』
『すごいのら……』
おお……絵理奈ちゃんとめぐむちゃんか! 新曲を考えに来たチームも音声案内に入ってるんだ。
『この雄大さと美しさ、高貴な魅亜にふさわしいなぁ!』
『海の多様性豊かな感じがこの水槽に現れているよね。僕達にピッタリじゃないか。新曲のイメージに使えそうだよ。3人はこの水槽を見て直感的にどう思った?』
『美味しそう』
『美味しそうのら』
『美味しそう、です……』
『はぁ……そろそろお昼にしようか』
私はヘッドホンを外した。ふぅ……尊い。
「僕達もお昼にしましょうか。コラボメニューもあるみたいですよ」
「ええ!? それは行かないと!」
館内の案内表示に従って進んでいくと、レストランについた。店の前にはアイフレコラボメニューの看板が立っている。
「菜々子さんが気になるの、2つ選んでいいですよ」
「いいの!? それじゃあ遠慮なく……」
コラボメニューは4つ。「2年生ズのドキドキ職業体験カレー」、「見守りたい先輩・後輩のホットサンド」、「僕達にピッタリなミックスグリルプレート」、「和と洋のコラボレーション! 抹茶バームクーヘンケーキ」。それぞれの料理にはイメージしているキャラクター達のイラストカードがついてくる。前に行ったコラボカフェみたいにランダム配布じゃないなら、私が選ぶ2つは……
「お待たせ!」
私はカウンターで料理を受け取り、席を取ってくれていた斗真君と合流した。
「カレーとホットサンドにしたんですね。」
「うん! やっぱりこの2枚のカードが欲しくて」
席に着き、斗真君にカードを見せる。カレーの方についてきたのは、職業体験に来た2年生達がアクアピアの制服を着た集合写真。ホットサンドの方は、柱の陰から職業体験に参加しているメンバーの様子を伺う先輩、後輩達のカードだった。
「だってもう良すぎじゃない!? この集合写真、笑顔でダブルピースしてるらむねちゃんはもっちろん最高に可愛いし、その隣で照れてる愛実ちゃんとか、聖那ちゃんに寄りかかって眠そうにしてる涼ちゃんとか、メンバーの個性が溢れ出てるよね! それに、こっちのカードは心配そうに見守ってる表情が愛おしい! 他の2枚も今度貰いにこよっかなぁ……斗真君はカレーとホットサンド、どっちがいい?」
「じゃあ、カレーで」
「りょーかい」
私はカレーが載ったトレーを斗真君の前に移動させた。
「それじゃあ、いただきます……ん、美味しい!」
ホットサンドを一口頬張ると、こんがり焼けたパンの中からとろっと溶けたチーズとジューシーなベーコンの風味が広がる。
ふと視線を感じて正面を見ると、斗真君がニコニコとした表情で私を見ていた。
「どうしたの? もしかして、顔になんかついてる!?」
慌てて口元をぬぐうが、それらしきものはない。
「すいません、そうじゃなくて……その、ホッとして」
「え?」
「だって菜々子さん、今日の朝からずっと様子が変でしたよね? 口数は少ないし、いつもと違って不自然というか……でも、いつもの菜々子さんが戻ってきて安心しました。この場所を選んでよかったです」
不自然なのバレてたかぁ……でも今、斗真君に言われるまで朝の不安な気持ちは完全に忘れていた。斗真君がここに連れてきてくれたおかげだ。勝手にあれこれ悩んで楽しめないなんてもったいない。不安要素は一旦棚上げして、今この時を目いっぱい楽しもう!
「心配かけてごめんね。でも今はこの通りすっかり元気だよ! 斗真君のおかげですっごく楽しい!」
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そう言って斗真君は嬉しそうに笑った。
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