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1話 始まり
しおりを挟むまだ幼い頃。
何かできるようになったらみんなが誉めてくれた。
新しい発見があれば、みんなが喜んでくれた。
それが嬉しくて、いいところを見せようと頑張った。
----周囲から認められること----
それが幼い僕の原動力だった。
少し時が経った。
周囲の大人はみんな褒めてくれる。
喜んでくれる。
だけど、少し違和感を覚えた。
また少し時が経った。ちょっとだけ周りを見れるようになった。相変わらずみんなは褒めてくれるし喜んでくれる。周りを見れるようになって、同年代の子達を初めて意識してみた時、きれいな女の子が視界に入った。
少し時が経った。
周囲の大人はみんな褒めてくれる。喜んでくれる。
でも、この頃からだろうか。
声のトーンや、言動で相手の感情が伝わるようになったのは。
また少し時が経った。
周囲の大人が褒めてるのか、喜んでくれてるのか、わからなくなった。
扱いが違った。
いつも輪の中心にいて、輝いている子がいた。
その子はきれいな女の子で周囲からは「天才」「神の子」などと呼ばれていた。
悔しかった。どうして僕のことはそう呼んでくれないのか。何が違うのかわからなかった。僕はその子が嫌いだった。なんでもいいから女の子よりもみんなに褒められたかった。これしかないと思って、僕は棒を振ることを覚えた。
幼い頃、母に読んでもらった本がある。
僕はその本の主役が大好きだった。
剣一本で自分の背丈の数倍もあるドラゴンを倒してしまうのだ。
そうなりたいと強く思い、願った。
今から剣を握れば僕も本の主役みたいになれると信じたんだ。
2年ほど時が経った。
棒だったものは不恰好ではあるが剣の形に寄せたもの、木剣になっていた。
自ら石で削って作ったものだ。
こんなこともできるんだぞ。と少し自分が誇らしかった。
この頃、剣を振るのに夢中で周囲の評価を気にすることはなくなっていた。
……おぉ……、、すげーなメリル!!!
……わぁ~、、すごいねメリルっ!!
村の広場では大人や子供が集まって一人の女の子を褒めていた。
………僕は一人、離れたところでお手製の木剣を振る。
「ねぇ…?なにしてるの?」
不意に声をかけられ僕はギョッとした。
振り返るとさっきまで広場にいた女の子がいたからだ。どうしてこんな端っこに来たのか。なぜ僕なんかに話しかけてきたのか理由が分からなかった。
「聞いてる?」
「け…剣を…振ってたんだ」
きれいな瞳にまっすぐ見つめられ、どもった返事をしてしまった。
少し間が空いて
次の質問がきた。
「ふぅん…。剣って楽しい?」
その質問には迷わずに答えた。
ーーーー楽しいよーーーー
少し時が経ち、村が賑わった。
というのもこの村、辺境も辺境にある村で、冒険者はおろか、旅人も商人もやってこないような名もない村……集落なのだ。
そんな集落に今日、冒険者がやってきたのだ。
どんな冒険者がきたのか。
とても大きく力強い見た目なのか。それとも魔法使いのようにローブを羽織って杖を持っているのか。
興味が止まらず、僕は大人が集まっているところをなんとか潜り抜けて冒険者の前に出た。
そこに立っていたのは、
とてもじゃないが魔物を倒せるような人にはどうしても見えなくて。。
ボロボロの服と錆びた剣を持った女性だった。
僕はとてもがっかりした。
外の世界の話。色々な冒険の話が聞きたかったけど、僕は離れて木剣を振った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇねぇ……?メリルちゃん超可愛くない?」
そう気安く僕の頭に肘を乗せて話すのは一年前にこの村に来た冒険者のゼロお姉さんだ。
どうやらこのお姉さん、休暇でこの村に来たらしい。
風が吹けば飛ぶような家、区切りのない汚い畑、家畜が道で排泄するような村だ。
そしてそこのおじいちゃんも排泄している。
当時はなんで?という思いが強かったが考えるのをやめた。この人に目的なんてあるわけがない。
「うへへ…!みた!?耳かけしてた!!」
超可愛い~と僕の頭をパシパシと叩くその姿は全然冒険者じゃない。
この一年で僕はだいぶこの人と仲良く?なった。
村で唯一人関心がなかったからか逆に目立ってしまい、何かとちょっかいをかけられることが多かった。
木剣を振ってる時にカンチョーされたり、英雄譚という名のお姉さんモテモテ期を聞かされたり家畜の糞を投げつけられたり。。。
「……はぁ」
酷い目にしかあってないけど、なんでかほっとけない。
「ちょっちトイレ~」
そして女性らしさがかけらもない。
お腹だして寝るしお尻掻くし変な笑い方をするちょっと変わったお姉さん。
そんなゼロお姉さんだけどたまにいい話を聞かせてくれる。
応援ありがとうございます!
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