【完結】未来から来た私がもたらしたもの

ぅ→。

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芹沢鴨が金を貸し渋った商家を焼き払い、火消しが来ないように刀で脅した。

「芹沢さん、ダメですよぉ。そんなことしたらぁ」
「貴様も公方様の手先か?」
「くぼうさまって誰ですかぁ」
「ならば聞く。わしはいつ死ぬ?」
「わかんないですぅ。でも今のままではダメなんですぅ」

洗濯しながら、芹沢鴨と凛ちゃんのそんなやりとりを見ていた。

芹沢鴨は死にたいのか。生きたいのか。分からない人だ。生きたいのであれば所業を変えればいいだけ。それをしないのは生き急いでるだけだと思う。

「凛は相変わらずだな」

何で皆、私が洗濯中に背後から声を掛けるのだろうか。

「芹沢局長の所業ならば公方様に報告済みですよ。捕縛の命を出すそうです」

そう言ったところ、土方歳三の顔付きが変わった。

「何、勝手なことしやがってる!?」
「私と公方様はLINE友。毎日、あったことを報告するようにとの公方様の望みです。流石に公方様に嘘はつけませんよ」
「ーーチッ」

暗殺ではなく捕縛。私が芹沢鴨に出来る唯一のことだろう。

それなのに、数日後。

「凛、麗奈。今宵、芸妓総揚げで宴を開く。お前らも来い」

実行するのね?

「もしかして、また私たちに遊女の格好をさせるのですかぁ?」

凛ちゃんの声と顔は喜んでいた。女中ではお洒落は出来ないから、綺麗なお着せを身に纏える芸妓の姿は好きなのだろう。

「着たいのなら着て良いぞ?」
「やったぁ」
「麗奈。お前は着ろ。副長命令だ」

何故、私だけ副長命令?

さしずめ私が芹沢鴨暗殺の妨げにならないようにだろう。

着飾るのは時間がかかるから、あまり好きじゃないのよね。

何時間にも及ぶ苦行で準備が終わる。

「ほんに、あんさんは美しゅうなぁ」
「どうも」
「あんさんなら太夫も夢であらしまへん」

太夫目指してないから。私は普通の奥さんや普通のお母さんになりたいのだ。今、その道を歩んでるのだから、満足してる。一さんの奥さんが普通かどうかは置いといて。

角屋に行くと既に宴は始まっていた。

私は一さんの隣に座る。いつもは褒めてくれる一さんが、黙々と酒を飲んでる。一さんも今日が暗殺の日だと気がついたのだろう。

「今日か?」
「多分……」
「そうか」

一さんは今日が芹沢鴨の暗殺の日だと土方歳三からは聞かされてない。知ってるのは暗殺にしに行った人たちだけだ。そしてその犯人は長州藩になる。

芹沢鴨、平山五郎、平間重助に酒を飲ませ続ける。逆に土方歳三、沖田総司、原田左之助、山南敬助はほとんど飲んでない。

近藤勇は上機嫌に芹沢鴨に酒を勧めてる。

とんだ役者だこと。

芹沢鴨の所業は将軍様に私から何気に報告してある。将軍様からは捕縛の命を出すとの返事が来ていた。それを土方歳三には伝えたのに。

どうしても芹沢鴨の命を奪いたいらしい。生きていては困るのか、はたまた恨みがあるのかは分からないが。

長州藩のせいにするつもりらしいが、露見する。もちろんスマフォを持ってる将軍様にもバレる事案である。今後のことを考えるならば辞めておいた方がいい。それなのに実行する理由は?

私にはその理由が分からなかった。

「一さん、私、この茶番に付き合うつもりはないのですが、いいですか?」
「麗奈?」

私は一さんだけに見えるようにスマフォを見せた。そこには将軍様のLINEを開く。

「そうだな。芹沢局長の所業は目に余るが、罰を下すのは我々ではない」

一さんの許可も貰えたので、将軍様に急いでLINEする。将軍様はすぐに芹沢鴨の捕縛隊を八木邸に向かわせると返事が来た。

暫くすると、芹沢鴨たちと土方歳三たちが先に帰ると出ていく。私たちは朝まで飲んでいていいと。

「土方副長、怒るかな?」
「一緒に怒られてやる」

そう言って一さんとお酒を飲み交わした。

「あれ?もしかして……。嘘?嘘?」

ようやく凛ちゃんも芹沢鴨の暗殺に気が付いたのか慌ててる。その凛ちゃんを近藤勇が落ち着かせようしていた。その顔には下手なことは言うなと書いてあったが、凛ちゃんが気が付いてるのかどうか。突如、泣き出してしまった凛ちゃんに周りが動揺する。近藤勇はそんな凛ちゃんを連れて部屋から出て行った。

このまま、ここにいたら凛ちゃんのことだから口走っていたもんね。

ただ、この騒ぎで永倉新八、藤堂平助、他数名が気がついたようで難しい顔をした。

「斎藤、よく飲めるな?」
「ん?お前らが飲まないなら俺が飲むが?」
「そうじゃねぇよ!お前だって気が付いてるだろう!?」
「お前らより先に、な」

なら、何で平気なんだよ!?と藤堂平助は言ったが、その答えを一さんは教えなかった。

近藤勇は戻ってきたが凛ちゃんは一緒でなかった。

「凛君は飲みすぎたようで別室で休ませておいた」

飲みすぎね……。あの子、未成年だからと言ってお酒一滴も飲んでないけど、何を飲みすぎたのかしら?

きっと気絶でもさせたのだろう。下手なことを言わないように。だけど、もう遅いよ。皆、気が付いから。

まあ、道中で暗殺しない限り、芹沢鴨の暗殺には失敗するけどね。

「どうした?皆。まだまだ酒はあるぞ?そなたたちも舞って皆を楽しませてくれ」

近藤勇の言葉に芸妓たちは舞う。隊士たちは戸惑いながらも酒を口にした。きっとこの中で心から楽しんでる人は誰もいないだろう。

そんな宴をしてると土方歳三たちが戻ってきた。土方歳三が戻ってきたことに近藤勇は驚いてる。そして何かを近藤勇に耳打ちした。

将軍様の捕縛が暗殺より間に合ったってことね。流石、将軍様!

戻ってきた4人はヤケ酒のこどく酒を煽る。

一さんが厠に行くため部屋を出た時に事は起きた。土方歳三が私の前まで来ると私の胸ぐらを掴み、私の顔を殴る。

「歳!?」
「土方さん?」
「土方副長!?」

土方歳三の行動に皆が動揺した。

「お前、よくもやりやがったな?」

土方歳三が私にだけ聞こえる声量で言う。

「あら?褒めていただきたいわ。スマフォは公方様もお持ちなのですよ?直ぐにあなた方の仕業だと露見しますわ。さすれば下手人のあなたたちは勿論のこと、近藤勇局長まで捕縛の対象となるでしょうね」
「ーーチッ」

土方歳三は私の言いたいことが理解出来たようだけど、怒りは収まらないのか私を思い切り畳に投げつけた。そこに一さんが帰ってくる。

「土方副長、これは如何に?我妻に何故、手を出された?」

冷静だけど怒りが滲み出てる声で一さんが土方歳三に詰める。だが、土方歳三は何も言わず、席に戻った。一さんに起こされ、殴られた箇所を確認される。一さんは芸妓に冷えた手拭いを頼んだ。持ってきてくれた手拭いで殴られた場所をあてて冷やす。

「流石に女子に手を出すとは思ってなかった。守ってやれなくてすまなかった」

避けようと思えば避けれたけど、ここで自分の身体能力がバレることの大きさや弊害を考えて敢えて受け入れた。

帰ってから公方様にお礼のLINEをするとビデオ通話がかかってきた。

『麗奈?どうした?その顔は!』
「土方歳三に殴られました。暗殺の邪魔した罰ですね」

勿論、公方様に告げ口をする。

『何と!? 土方歳三だな?その名、余のDEATHNOTEに名を刻んでおく』

将軍様ったら、何を読んでるのかしら?私はおかしくてクスクス笑った。笑うと殴られたところが痛くて歪な笑顔になるが、それが更に痛々しく思われ、土方歳三は将軍様の怒りをかう。近藤勇の印象も悪くなっただろう。近藤勇を大名にしたいと思ってる人たちには、その座が遠くなった瞬間でもある。

『しかし余も見たかったな。麗奈の芸妓姿』
「麗奈は芸妓姿でも女中姿でも綺麗ですよ」

一さんが会話に加わってきた。最初の頃は恐れ多いと言っていた一さんも、何度も将軍様とビデオ通話してるうちに慣れたのか今では気軽に話をしてる。

『斎藤よ。妻を守らなくてどうする?』
「それは心の底から反省しております」
「公方様、一さんが厠に行くために席を外した瞬間に殴られましたのよ?一さんに非はありませんわ」

流石にトイレまで我慢しろとは言えないよ。それに、いつかは殴られたと思うよ?それほどにお怒りだったもの。

芹沢鴨暗殺失敗の出来事は計画して実行しようとしていた人たち以外からは安堵の声が聞こえた。

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