【第1章完】攻撃力・防御力1の俺でも、もしかしたら魔王を倒せるかもしれない。〜理不尽な世界で俺は生きていく〜

霜月優

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序章 新天地

最弱の魔法

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外に出た日俺は失敗した。
 この世界でもやはり俺は落ちこぼれ、何度生まれ変わっても力の無い人間。
 俺はもうこんな人生なら早く終わらせてしまいたいとまで思ってしまっていた。
 最初に未練なんて残したからだ。

 


 俺も内定を貰い、一安心した所、友人とドライブで旅行していた。
 もちろん男2人旅なんだが、
 親に「行ってくる」と言ったが俺ともう1人の友人が、帰ることが無かった。
 交通事故だ。

 完全に対向車のトラック過失、しかし事故に巻き込まれた3名全員、亡くなっている。
 あちらの居眠り運転による信号無視なのは間違いない。
 俺はその時、後悔した。
 まだやりたい事は沢山あった。
 苦しい大学生活が終わり、俺も晴れて社会人。
 皆は大人になるのが嫌と言うが、俺は少し楽しみだった。
 自分で金を稼いで、育ててくれた人に恩返しをして、、、
 いつかは俺を愛してくれる人ができて、、俺も守らなきゃいけない存在が出来て、俺の人生は確かに幸せな道を辿っていた。
 が、その道が、急に塞がった。
 そこで俺は願った。願ってしまった。
 
「俺はまだ人生にやり残した事がある…だからお願いします俺を、幸せにして下さい」と。

 それがこのザマ、今の俺が育っても、子ども1人も守れるどころか6歳になる頃には俺が守られてしまうだろう。
 この実力のせいで友達とのコミュニティを作れる訳でも無い。本当に無駄な事をした。
 
 俺には多幸で死ぬ事は許されないのかとも思ってしまう。


「攻撃は触れずに当てる、そんなのが本当に可能なのか?
 もし、俺の想定を超える敵が出た時、1人でどうにかなるのかな、」

 不安だ。
 いつも、ずっとそうだ。多分これからもそうだ。
 俺は成長する事は無い。

「成長する事が無い体、、なら動きを変える必要はない!
 どうせ攻撃は何しても1だし、いっそ好きに自由にやってみるか」

 なんか考えるのもバカらしくなって来た。
 

 俺は日本で見た、小説ラノベのファンタジーで主人公が使ってるような、ド派手で高威力、広範囲のイケてる技で自分がこの世界で、魔術を1番楽しんでやろうと思った。

 練習する場所?必要ない、どうせ攻撃は干渉したら1になるんだから、壊れる心配すらない。
 そう考えると俺は無性に元気が出て来た。
 魔術の才能はあるのだから。


「やっぱり主人公なら、、火かな?
 それとも氷?
 いや、雷も捨てがたい……
 むしろ、ダーク主人公で闇にでもしてみるか?
 逆に地味な風とかでも悪くない」


 そう言いながら、全ての魔術を一通り試してみる。
 全部ド派手な何でもありの厨二心をくすぐる、
 魔法陣とか自分を軸に円周の軌道をする攻撃、地面から氷が岩のように出て来たり自分の望んだ箇所に雷撃を落としたりとやりたい放題。
 少しは攻撃力が上がっていればと思ったが、それは無理な願い。
 実際には、闇だけは干渉せずに攻撃を実現できるし、ダークヒーローは意外にカッコいい、けど1番不安定。
 流石にメインをこれにするのは不安が残る。


「どうした、今日はやけに派手にやってるな」
「何か見つかるかなって、お父さん、ちょっとで良いから俺の攻撃受けてみてよ」
「もしかして、今のをか?」
「勿論!」

 そう言うと父は少しだけビビっていた。
 無理も無い、あんなド派手な攻撃、いくら攻撃力が1だからって喰らうのには抵抗がある。
 恐らく「もし成長してて、攻撃力が1じゃなかったら」とか考えているのだろう。

 しかし、その問題は俺にはアホに見える。
 もし高火力なら、まずは芝生とか自分の家にも甚大な被害が出ているはずだからだ。
 俺はそれをあえて言わず、「大丈夫だから」と何とも信頼性の無い言葉で返す。

 父としてか、最初だけは躊躇ったが、すぐに覚悟を決めて俺の前に立った。

「よし、来い!ウィル」
「行くよお父さん」

 俺の選択した技は氷だった。
 理由は、1番相手を妨害出来るかもと思ったから。
 その選択は良かった?
 父が俺の出した氷の中で凍ってしまった。

「よし、これなら戦える」

 俺は攻撃力が無くても、相手を無力化する事が出来ると言う事が分かった。
 後は魔術を繰り出す速度を上げないと、

 それにしても父は出てこない、俺は慌てて

「大丈夫?ちょっと待って」

 俺は少し焦っていた、俺は攻撃力が上がったのかと思ったのと同時に、父を殺してしまったのでは無いかと。
 が、その不安は一瞬にして去る事になる。

「全然!問題無いよ
 まあ一瞬びっくりはしたけど、中からも余裕で氷は壊せるし、冷えるけど即死する程の寒さでは無いかな
 強い相手にはあんま効果的じゃ無いかもしれない」
「うん、分かってたよ」


 俺は一瞬の喜びから少し落胆してしまった。
 父が生きていたのは嬉しかった。何よりも嬉しかった。
 しかし、俺が強くなったと勘違いして喜んだ事、やはり俺は弱いんだ、力が無いんだと悔しさで泣きそうになってしまった。
 
「どう足掻いても俺は敵を、、モンスターを倒す事が出来ないの、、
 ねえ!
 どうして!
 俺だけには何も与えないんだ……神さまなんて」



 俺は叫ぶだけ叫んで、父を気にせず家に帰ろうとした。

 その時父に肩を掴まれ静止された。
「これは怒っている」と感じ俺は振り向かなかったが、肩を掴んでいた父の手はやがて俺を抱え抱きしめる。
 そして父は俺に話した。


「ごめんな、お父さんがこんな、、こんな体に産んでしまって……」
「これ以上は何も言わないで、」

 俺がそう言うと、父は諦めたかのように、抱えていた手を緩める。

 俺は父の手から離れ、振り返る。
 父は下を向いてはおらず、前をずっと向いていた。
 俺が立ち止まってくれるとは思っていなかったのだろう。
 ゆっくりと俺の顔に視線を向ける。
 それを感じ取った俺は……
 
「こちらこそごめんなさい、いきなり叫んでしまって、
 力はこれからどうとでもなると思います。変えて見せます
 でも、父親は変えられません。」

 父は何を言われているか分からない様子。

「俺は…俺は、お父さんの子どもで本当に良かった
 だからそんな事は言わないで、また一緒に俺の夢に付き合って欲しい。また一緒に外に行って欲しい。」

 俺が全て話し終えると、父はもう一度、俺を抱き締める、さっきよりも強く。

「そうだな、、頑張ろう、」

 父はそれだけを言って、立ち上がった。
 不器用で正直で優しい父だからこそ出来る、最大限の優しさだった。
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