役目を終えた転生ヒロインは元男♂につき、隠遁してスローライフ を目指します。世界を救うヒーロー 達には絶対近づかない!逆ハーレムはお断りです

無限飛行

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白い空間だ、どこまでも白い。

でも、遠くに何か見えてきた。

あれは、スベリ台?

バンビー保育園側の、日歩公園のスベリ台だ。


いつも、亜黒あくろ兄ちゃんが迎えに来てくれた公園だ。

あ、スベリ台の側に誰かいる、きっと亜黒兄ちゃんだ。


「兄ちゃん!」


振り向いたその人は、「ルケルお兄ちゃん?」


にこっ、と優しい笑顔を見せるその人は大好きなルケルお兄ちゃん!

僕は、お兄ちゃんに抱きついた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、ルケルお兄ちゃん!、良かった、お兄ちゃん、生きてる!」


お兄ちゃんは、にっこり笑って僕の頭を撫でた。


「ここが、オリビアの居た世界か」


ルケルお兄ちゃんの視線の先には、様々な高さのビルディング、どこまでも続くアスファルトの道、遠くに走るのは新幹線だ。

沢山の自動車と、横断歩道を渡る沢山の人々。


「うん、そうだよ。とっても便利で簡単に遠くまで行ける。食べ物に困ることはなくて、家にいながら世界中の事がわかって、普段は命の心配がない誰にでも優しい国かな」


「そうか、だからお前は誰にでも優しいのか」


「そんな事ないよ、僕だって怒るときは怒るし」


「そうだな」


ああ、お兄ちゃんが遠くを見ている。

また、僕は置いていかれるのかな。

お母さんやお父さん、亜黒兄ちゃんみたいに僕を置いて逝くのかな。

また、僕は一人ぼっちに


「そんな顔をするな、私達は家族だろう?」


そんな僕の気持ちを諭すように、ルケルお兄ちゃんが頭を撫でる。


「逝くの?」


「ああ、呼ばれている」


「また、逢える?」


「必ず、逢える。家族はいっしょにいるものだからな」


僕は涙を流しながら、お兄ちゃんに笑った。


「大好きでした。貴方の事を忘れません。いつまでも永遠に僕達は家族です」


「愛している、私もだ。未来永劫、私達は家族だ」


お兄ちゃんは振り返ると、白い光の中に歩いていく。

遠くにお兄ちゃんに、似ている女性が立っている。

お兄ちゃんはいつの間にか、小さい子どもになって駆け出した。

ああ、お兄ちゃん、その人なんですね。

その人が、お兄ちゃんのお母さんなんだ。

とっても綺麗な人、二人は僕の方を振り返って笑った。

僕も笑った。

そして、二人はそのまま光の中に消えていく。




ふと、僕は人の気配を感じて後ろを振り向いた。

そこには、二人の女性が立っている。


一人は黒髪で白い肌、青い瞳の美しい女性。

一人は白髪で少し黄身な肌、黒い瞳のきれいな女性。


「「リンレイ麟太郎」」


横を見ると、長い黒髪の青い瞳の女の子が僕の左手を握っていた。

なんとなく女の子は、自分な気がする。

女の子も、僕を見ているけど鏡を見ている気がする。

白髪の女性が僕を、黒髪の女性が女の子をそれぞれ抱き込んだ。

この温もり、憶えがある?!


「「貴女は誰?」」


「「……………………」」


二人は微笑むだけで、答えない。

でも、僕にはなんとなく分かる気がする。


「「お母さんお母様」」


「「貴女は、これから選択を迫られる。その選択の前に逃げなさい」」


「「逃げる?」」


「「私達が道を開く」」


光が強くなる、眩しさで目を開けていられない。


「「お母さんお母様」」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「ん、ここは?」


僕が目覚めたのは、壮麗な部屋の大きなベットの上だった。


トンッ、トンッ「お目覚めですか?お嬢様」


数人の侍女が入ってきて、僕の服を脱がしていく。


「あ、あの、僕がここにいる事情がわからないんだけど、誰か、説明してくれる!?」


侍女達は、僕が質問している間にも、どんどん着替えを進めていく。


「皇帝陛下の、ご命令でございます」


着替えを進めている一人の侍女が言った。


「皇帝陛下?じゃあ、ブラックさんの?」


たしか、前にブラックさんが皇帝は義父だって言っていたな、じゃあ、ブラックさんもいるのかな?


「あの、僕、ブラックさんの仲間のリンレイです。ブラックさんはおりますか?」


僕はもう、すっかり豪華なドレスに着替えさせられていた。


「で、殿下ですか?!殿下は」


一人の侍女が、反応して話始めた。

ブラックさんは、なんと、反逆罪で捕まっているというのだ。

いったい、どういう事なんだろう?!


ふと見ると天井付近に、白い光の玉が浮かんでいる?

その光の玉は動き始め、侍女達に近づく。

けれど、侍女達にはその光の玉が見えていない様子だ。

そして、光の玉が侍女達の間をスウっと駆け抜けた。


バタッ、バタバタバタ、突然、侍女達が倒れていく?!


「こ、これは?」


『『大丈夫、眠らせただけ』』、光の玉が答える。


「!あ、あなたはお母様お母さん?」


『『ええ、そうよ。愛しい私の息子、この城の中だけ力で具現化できる』』


うっすらと光の玉の向こうに、二人の姿が見える。

光の玉はスゥーッと、僕の出した手のひらに乗った。


『『今は、話している時間がないの、私の後に付いてきなさい。城から脱出するわ』』


「駄目だよ、ブラックさんを助けないといけない!お母様、手伝って」


『『!!、知ってしまったの、駄目よ。あそこに入ったら二度と外にはでられない』』


光の玉は、僕の顔の前まで浮かんだ。


『『お願い、全ての時間軸の中であなたを脱出させられる時間は今だけ、私の言うことを聞いて』』


「いやだ、脱出するならブラックさんも一緒だよ」


『『やはりこうなってしまうの!なんで神はこの子ばかり苦しめる。なんで、なんで、なんでぇ!!』』


「お母様?」


『『もう、時間がないわ、あなたには幸せになってほしかった。まもなくあの男が来る。力のない私を許して、私の愛しい息子』』


そう言って、お母様は消えていった。


ガチャッ、急にドアが開いた?!あいつ、ハベルだ!


「おい、おせーぞ?!な、なんだこりゃ?なんで侍女どもが倒れてる?」


侍女A「う、あら、私なんで?」、侍女B「?」、侍女C「え?急に眠くなって?」


「?!嬢ちゃん、なんか魔法使ったか?あまり手こずらせると、お仲間が不味い事になるぜぇ」


僕はハベルを睨む。


「仲間に手を出したら許さない」


「へへ、相変わらず勇ましいこった。なら、一緒についてきな。仲間に合わせてやるよ」


「どこへ行くんだ」




「皇帝様のところだぜ」


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