上 下
58 / 67

マリンの戦い2

しおりを挟む
マリン視点



ドオオオンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ


容赦なく降り注ぐ砲撃、激しい水柱、ゴーテン号は今まさに集中砲火に晒されていた。


マデリン「お前達三姉妹、敵艦どちらかの死角に廻りこんで急加速だ、そのまま一気に離脱する!」


三姉妹「「「わかりました!」」」


ガガァアンッ、バアアンッ、ドォンッ


数個の弾薬が、空中で爆発する。

私の結界に触れたからだ。


「うっ、ぐ」


マデリン「マリン様?!」


魔力切れからの回復が、間に合ってないわね。

今の私の魔力は本来の四割かしら。


「大丈夫、とは言いがたいわね。結界を維持できるのは、もって半刻かしら」


それを聞いたマデリンは、覚悟を決めたように私を見た。


マデリン「あれを使います。よろしいですね」


「他に選択肢はないわね」




◆◆◆




兵士「不明船、止まりません!まっすぐこちらに向かってきます」


指揮官「なに?ただの海賊船じゃないのか?だとしても、宰相閣下からこの海域に入った不審船は全て撃沈せよとの事だ。通すわけにはいかん。蹴散らせ!」


兵士「は!」


兵士は、下の砲手指揮所に駆け込む。

ここには、沢山の管がありそれがあちこちの兵士の詰所、各砲手に繋がっている。

兵士は、その管の全てのフタを開けた。


「指揮官の指令を伝える、蹴散らせだ!以上」


砲手達はただちに、大砲に弾を込めた。


「撃てっ」


ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッ


一気に放たれた砲弾は敵艦に向かって飛んでいくが、際どいところで反らしてしまう。

まっすぐ飛んだものは、船に当たる直前で爆発してしまう。


指揮官「なんだ、魔法か?」


兵士「あ、あれを!」


指揮官「な、なんだ?あれは?!」


不審船の船首に、巨大なナイフがついていた。




◆◆◆





マデリン「ラム戦用意!」


サリー「はい」、サリーがレバーを上げる。

メグがハンドルを廻す。

モモがハンドルを廻す。


ガラン、ガラン、ガラン


船首が二つに割れて、なかから長くて大きな鉄?の固まりが現れた。

さらに、船首側に立ち上がるとそのまま、船首前方向に倒される。


ガコンッ、なにかに嵌まる音。

それは巨大なナイフの様だった。

巨大なナイフが、ゴーテン号の船首についている。


三姉妹「「「用意、完了しました」」」


マデリン「よし、最大船速!!マリン様、お願いします」


マリン「わかったわ。タンちゃん、私のところに掴まって!」


タン「うん!」、タンがマリンのイスと手摺りを掴む。

マリンの椅子は、甲板に固定されている。


サリー「風の加護を、船に力を与えたまえ」

メグ「風の加護を、船に力を与えたまえ」

モモ「風の加護を、船に力を与えたまえ」


マリン「結界、展開!!」


結界が船首を中心に拡がる。

船の速度がどんどん、どんどん上がっていく。

敵艦二隻のうち、その一隻に真っ直ぐ向かっていく。


敵艦は途中から回避行動を始めたが、すでに遅かった。

ゴーテン号の刃が敵艦の真横、中心に突き刺さる。


マデリン「突入!」


ドガガガガーンッ


「うわー!!」、「ぎゃー?!」、「ひぃーっ?!!」


敵兵士達の悲鳴を後ろに、ゴーテン号が突き進む。

軍船はゴーテン号に中央を突き破られ、左右に真っ二つになって沈んでいく。


ゴーテン号はそのままの速度を維持したまま、あっという間に二隻から遠ざかっていった。




◆◆◆




マリン視点


今、私達は秘密裏に帝国のエルヌナ港に上陸している。


結論から云えば、私達はあの足止めで誘拐犯達に追い付けなかった。

奴らの乗った荷馬車は、既に帝都に向け出発した後だったのだ。

タンちゃんは半狂乱になって奴らの後を追おうとしたが、私がなんとか踏みとどまらせた。


とにかく、帝国の事情に詳しくない私達はここでブラックの従者ベクターと連絡を取り、港で落ち合う事になっていた。


私達が港近くの食堂で待っていると、ベクターが現れた。


「忙しいところ、すまないわね。こちらの事情は連絡した通りよ」


ベクター「いえ、あの、他の英雄の方達は?」


「?魔道レターで連絡済み、多分、皆、直接帝都に入るのではないかしら?」


ベクター「…………わかりました。では、私が案内しますのですぐ帝都に向かいましょう。よい隠れ家があります。そこで皆さんと合流してから救出に向かいましょう」


マデリン「……………」


ベクターの表情が妙に固い?マデリンも何か気づいた。?


「わかったわ。マデリン、後で魔道レターを用意して」


マデリン「……わかりました」


「ブラックはその後、どうしたの?こちらには結局、連絡はなかったけど」


ベクター「大丈夫です。帝都で皆さんをお待ちしております」


「あら、そうなの?!随分、人騒がせだったけど、貴方も大変ね」


ベクター「慣れておりますので、大丈夫です」





どちらにしても私達に選択肢はない、今は彼を信じるしかないわ。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あれは媚薬のせいだから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:77

元・Sランク冒険者はスローライフを目指したい!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:10

僕はボーナス加護で伸し上がりました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,090pt お気に入り:55

ネトゲ世界転生の隠遁生活 〜俺はのんびり暮らしたい〜

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:3,716

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:340pt お気に入り:4,636

異世界でショッピングモールを経営しよう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:27,939pt お気に入り:579

二度目の結婚は、白いままでは

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:68

処理中です...