鏡結び物語

無限飛行

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鏡の亜理砂▪その十二 (銀髪イケメン)

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家族も同族もいない。

皆、殺された。

彼は、この世界で、たった一人の銀狼族。

なんて、なんて重いっ……。


「あやぁ、聞かなきゃよかった。重い、重いよ!、はああぁ……」
「アリサ、考え違いはしないで下さい」

「ん?」
「私は、貴女の同情を買う為にウォルフの事を伝えた訳ではありません」

「ああ、そりゃ、分かるよ」
「…… 私達、獣人にとってつがいは確かに大事です。でもつがいは対等。だから、ウォルフが貴女につがいたる事を強要する事はありません」

「マルリーサ」
「でも、堪らなく惹かれるんです。それがつがい。だから、貴女がハミルトン侯爵令息の婚約者であってもです」

「ロイド!?い、いや、アイツとは」
「だからウォルフは、貴女を陰から見守る事にしたんです」

「え?」
「貴女には、すでに将来を約束された方がいる。だからウォルフは、貴女と会わない」

「ち、違っ」
「貴女の、つがいの、幸せを見守る事。それが、彼が決めた事です。そして彼は、一生、ひとりで過ごすと決めまし」

「違うの!もう、ロイドとは終り!!」
「アリサ!?」

はあ、はあ、はあ、はあ

なんなのよ、それ!

一方的にあたしを勘違いして、一方的に見守って、一方的に身を引く訳?

あたしに一度も会わずに!?

そして一生、ひとりで生きるの?
家族も一族もいない、天涯孤独を生き、あたしを思って死んでいくわけ??!

ふざけんな!

何、その追っかけストーカー人生!
接触もしないから、ストーカーですら無い。

「冗談じゃない!あたしの知らないところで、あたしを熱望しながら居なくなるつもり?!そんなの許さない」
「ええっ、ア、アリサ?」

「言ったでしょ、ロイドは振ってやった。婚約破棄したの。だから、あたしはフリー」
「本当に?」

「本当に、本当。で?」
「??」

「居るんでしょ、ウォルフ」
「ア、アリサ、なんで!?」

「貴女がさっき言ったじゃない。ずっと見守ってるって」
「!!」

ガタッ

宿の後ろで音。
やっぱり!

ダッ、あたしは、すぐに駆け出した。
目指すは、この宿の裏だ!

「アリサ!」

マルリーサが叫んだけど、あたしは構わず宿の裏に向かう。

「ウォルフ!?」

ガタンッ
宿の裏は小さな庭になっており、1本の木が生えている。
しかしウォルフらしい人影はなく、静まりかえっていた。

居ない!
確かに気配がしたのに……あ?

あたしが辺りを見回すと、地面に銀色の……毛?

ダダッ
「アリサ!?」

マルリーサが追い付いて来たけど、あたしは構わず、しゃがんでその銀色の毛を拾う。

これ、ウォルフの体毛だよね?
じゃあ、確かに彼は、ここに居た!
でも何で居ないの?

あたしは手が震えた。

「ねぇ、マルリーサ」
「はい、アリサ?」

「あたし、ね。あの、ウォルフの人の姿、見た事あるみたい」
「ウォルフの人の姿……」

「どっかの洞窟で、あたしを看病してたのかな。今、思い返すと、銀髪、銀の目ですっごいイケメン、あたしのドストライクだわ!」
「ど、どすとらいく?」

「そう!えーと、好きなタイプって事よ!」
「な、アリサ!?」

「ああ、でも何で逃げるかな?!ねぇ、マルリーサ。あたしって魅力ないのかな?」
「み、魅力ですか?そんな訳はありません」

「なら、何で逃げるのかな。あたし、ウォルフに会いたいんだよ」
「……分かりません。でも、別に逃げたわけでは」

「はあ、そうだよなぁ、あたし、魅力ないから」
「アリサ!」

マルリーサが怒り顔で私を呼ぶ。

でもさ、マルリーサ。
やっぱり逃げたんじゃないかな。
こんなブス、貰ってくれないよね?
なんか、悲しいかな。

あたしがぼうっと立っていると、マルリーサが近づく。
「アリサ、大丈夫。ウォルフはちゃんと分かってくれてます」
「本当に?」

ガタッ
「!?」
えっ、屋根の上で音がする??!


あ、ああ、あああ、やっぱりだ。

やっぱり、ドストライク!


ひゅんっ、シュタン!

長い銀髪を振り乱し、一人の優男が下り立った。

銀髪、銀目、鋭い目つき、細身だが、筋肉が機能的にあり、白い肌でカッコいい。
皮の上着と皮のズボン、肩に掛けた長い紐は、腰に掛かる長剣に結ばれている。

洞窟の夢で見た通りのカッコいいイケメン。


ウォルフが其処に居た。

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