無課金で魔王になったので静かに暮らします

カレス

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第11話 転生したら魔王でした

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ここはどこだ。
地面が冷たい。

そっか。俺、階段から落ちて…
あれ? ひょっとして死んだ?

仰向けに倒れているのはわかる。

このまま目を開けるのがとても怖く感じる。

「しかし… このままじゃ埒が開かないよな」

恐る恐る目をゆっくりと開けてみた。

何もない晴れ渡った青空が上空に広がる。

「あれ? もう夕方じゃなかったっけ」

大きな鳥が遥か上空を通り過ぎていった。
アンギュアアアアァァ… という鳴き声と共に。

「いやあれめっちゃドラゴンじゃん!!」
「しかもさっきのは雄叫びというより、悲鳴…!?」

そのドラゴンの翼は見る見るうちに炎に包まれ、悲痛な叫びと共に地平線の彼方へと墜落して爆発。

慌てて半身を起こして見渡すと、プスプスと燻っている黒焦げの廃墟が周囲に広がっていた。
そして自分の後方には、空中200メートルほどに浮いた巨大な城が炎に包まれている。

「これ、ゲームの魔王城じゃないか!」

そのゲームで見慣れた魔王城は現在豪快に炎上中だ。
そこからたくさんの魔物どもが黒焦げになりながらも脱出、そのまま地上に落下している。

「おいおい… まさかここって… 」

そう、俺はいきなり異常事態発生中の TAKIDAN 世界ど真ん中にいたのだ。

何だこれ!?
走馬灯の続編なのか?
いやいやそれはない!

じゃ俺はゲームの続きをしているのか?
いやそれもない!

TAKIDAN はPC画面上で操作をするタイプのゲームだ。
そのため、操作は客観視された俯瞰画面で行われることがほとんど。

しかし今の状況は肉眼でそのまま見た世界が広がっている。
これじゃ没入型バーチャルリアリティゲームの世界だろ!?
俺は改めて自分の手をみた。

「あ 俺の手、何かおかしい」

目の前にかざした自分の掌は疲れ切った男のそれではない。
ふっくらして細い、でもしっかりした女性の掌だった。

「いやまさか」

俺は立ち上がり、廃墟で壁だけになった建物にふらふらと近づいた。
一歩歩くごとに炭化して硬くなった地面の表層がまるでクッキーのように砕けていく。
建物の屋根は吹っ飛び、石畳の床には割れた鏡の破片がキラキラと光りながら散らばっている。
その破片の一つに映った自分の姿を見て俺は愕然とした。

そこに映ったのは魔王ルビア。
しかも恥ずかしいビキニアーマー装備の…

「えぇーーーーーーーー!?」

色々とあかん状況だ。
それに夢にしては感覚がリアルすぎる。
もしもここが死後の世界だと仮定しても、こんなに現実的な感覚なのか?
そもそも俺、キャラチェンジしてるし!?

その時、遠くで悲鳴が聞こえた。

その方角を見ると村人が手負いの魔物に襲われている。
魔物は魔王城から落下してきたらしい焼き豚一歩手前のグレートオーク。

オーク種の中で最も凶暴かつ脂肪もめっちゃ分厚いBランクの魔物だ。
どうやら爆発のショックでパニック状態になり我を忘れているらしい。

村人たちは必死に抵抗しようとしている。
震えながらも鍬を握って戦う爺さん、赤ん坊を庇う母親、冒険者らしき者も数人。

意識を集中すると人間たちの頭上にそれぞれのステータスが表示されていく。
見る限りLv値は絶望的に低い人間ばかりだ。
冒険者と言ってもLv10から25程度のDランク(駆け出し初心者)しかいない。
村人にいたってはLvが一桁台で話にならない。

そして魔物のグレートオークは手負いとはいえ Lv 71。
これはもう詰んでいる。

ゲーム画面で見ているだけなら「あー あいつら終わったな」で何も感じなかっただろう。
でもここまでリアルな世界の中では無理だ。
目の前で魔物に酷く惨殺されるリアルな人間とか絶対見たくない。
そんなの見たら俺がトラウマでどうにかなりそうだ。
だから俺自身の心の平安のためにも助けなくては!

グレートオークが手に持った大斧を冒険者たちの頭上へ振り翳した直後、俺は奴の正面に超速で移動していた。
そのまま振り下ろされた大斧を、人差し指と中指に挟んで軽く受け止める。

「デ・トワ・フリーズ」

本能的に俺は詠唱していた。

すると大斧はグレートオークの力でもピクリとも動かせないどころか、指で挟まれた部分から凍結を始めていた。
これは相手の武器から力の源である魔素を奪って弱体化、そのまま凍結させる中級魔法だ。
人間たちを避難させる時間稼ぎならこの中級魔法で十分。
そう思っていました。さっきまでは。

次の瞬間、凍結は武器だけにとどまらずグレートオーク本体にまであっという間に伝わり、そのでかい図体を粉々に砕ききってしまった。

「あれぇえ!?」

中級魔法はルビアのとんでもない魔力でえげつないパワーを発揮してしまった様だ…

「やっぱり俺はルビアだよ。こんな魔力はルビアにしかない」

俺の背後では冒険者や村人たちが唖然として固まっている。

「ま、魔王ルビア…様!?」

「何で俺たちを?」

「えっと、それから何故その様なお召し物で??」

やばい。
俺めっちゃビキニアーマー穿いてるんだった!?
えっとこの状況はどうする!?
ルビアらしく振る舞いたいけどこの格好では言い訳ががが…

俺の中で何かがプッツンと切れた。

「私に質問をするな。このくそ下郎どもが!」

「ヒィぃいっ!!!」

人間たちは顔面蒼白で地面に平伏しガタガタと震えている。
爺さんに至っては小便を漏らして気絶しているし、赤ん坊は火がついた様に泣き叫んでいる。

あ、やばい、さっき魔物に襲われていた時より皆さん怯えているのでは!?

ルビアらしい台詞を何とか吐き出したつもりが、めっちゃ「威圧効果」が付与されたらしく、このままじゃこの人間たちが死んじゃいそうだ。
そうなったら本末転倒もいいところ!

俺は思いっきり笑顔を作って言った。

「あの… えっと、驚かしてごめんね! み、みんな怪我はない?」

魔王ルビアはゲーム中で「可愛い笑顔」を見せたことは、これまで一度もなかった。
そんな表情を出すようなシチュエーションがないのでプログラムすらされていないのだ。

急場凌ぎで作ったルビアとびきりの笑顔は、口角が不自然に釣り上がって犬歯が剥き出し、眉間には谷のように深い皺が刻まれ、控えめに言ってほぼ大悪魔の形相であった。

気絶していた爺さんがまずは絶命した。
冒険者も全員魂が抜けかかっている。
母親だけは泣き叫ぶ赤ん坊を庇うように硬くうずくまっている。

「あぁ やはりこの世で一番強いのは母親なんだなぁ」

と感心している場合ではなかった。
いやもうはっきり言って逆効果も甚だしい。
みんなこのままじゃ死んじゃうじゃん!! いやもう一人いっちゃってるし!!

ルビアの顔の問題は後回しだ!
とりあえず爺さんを何とか戻さないと!

ARのように目の前に浮かんだルビアの各種ステータスを確認したが回復系魔法が見当たらない!

なんてこった! ルビアには自分を回復させるスキルはあっても、他人に対しての回復魔法は一切ないだって!?

今度は俺が詰んだ。
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