無課金で魔王になったので静かに暮らします

カレス

文字の大きさ
21 / 37

第21話 決 闘

しおりを挟む
疲れた。 地味に疲れた。

あれから並んでいた村人たちを全員スキャン、症状の重い者を優先して自称エテルナさんの力で全員治癒し、待機列が無事解消したのは夕方近くのことだった。

村長に加え、昨日の母親もやってきて村人たちの誘導や整理を手伝ってくれたのは助かった。

しかし元凶のザワンドは来ねえ! 
あいつ絶対許さん。

俺は100人近い人間と対面し、魔王らしくかつ怖がらせない様に気をつけながらこまめに対応した結果、精神が消しゴムの様に擦り減っていた。
魔力やエテルナを行使する事より、よっぽど疲れてしまいもうヘトヘトだ。

しかし、この風土病の元凶こそ絶たないとまた同じ繰り返しになるだろう。

村人たちには悪いが、彼らをスキャンした際に過去の行動履歴も含めた様々な個人情報も収集、解析させてもらった。
その結果分かったことは、感染者は村中央の共同井戸を多く利用していたことだ。

もしそこが魔物から排泄された雑菌が繁殖している温床だとすれば…

明日は村長に許可を取って共同井戸を調べてみることにしよう。
とにかく元凶を潰さないとこの安住の居場所が「毎日行列のできる人気の砦」になってしまいかねん!

まぁ、今晩はせめてゆっくり自分を癒して…

・・・・・
「そうだ。もうなんかルビアだってばれちゃってるし、村の飯屋にでも行ってみようかな」

ルビアには食事も睡眠も必須ではない。
がしかし、今晩は無性に外食でもして酒でも飲んで気晴らしをしたいのだ。
幸い、TAKIDANでの通貨、DANは結構持っているし、地元で使ったほうが経済も少しは回るだろう。
それにこの世界の食事というものがどんなものか確認もしておかなければ。

俺はそんな適当な言い訳を考えながら、魔力が外に漏れないようにするレインコート状の魔力遮蔽外套をはおってリーダット山を降りた。
この方が村人にもあまり気が付かれずに済むと思ったからだ。

麓にある飯屋、というかイメージは居酒屋レストランみたいな感じの店を見つけた。
看板には「きまぐれ飯店」との表記。
何がきまぐれなのかちょっと不安だが、近場ではここくらいしか店がなさそう。
それにまだ夕方だし、店が混まない内に入ってみるなら今だろう。

「おおお!! ルビア様がいらっしゃったぞ!!!」

扉を開けた途端、中にいる客に俺は即バレした。
まぁ、魔力遮蔽外套を着込んでいても、頭からめっちゃツノ生えてるしね!!

奥から筋肉質の店長らしき男が慌てて出てきた。
「ルビア様、この村を… 自治区の皆を救っていただきありがとうございました!」
「私の妻もすっかり体が楽になって、以前より元気になったくらいです!」

あ!そう言えばここの店長も妻を連れて砦まで来てたっけ…

「ルビア様、本当になんとお礼をしましたら良いことやら…」

あれ、やばい。これじゃなんかお礼を強要させに来たみたいだぞ俺。

「あ、あー、そんなに畏まらなくてよい。我はただ食事に来てみただけなのだ」

「な、なんと!! この様な寂れた店に魔王ルビア様がお食事に来てくださるなどと…」
「このニッケルンの名にかけて全身全霊全財産をかけたゴージャスメニューを…」

「いやいや、金はきちんと払うから、皆がよく食べているものと同じものを用意してはくれまいか?」

ええええええ!?

店内にいた全員がどよめいた。

「ま、魔王ルビア様がわしらと同じ食事を…!?」

「あ、ありえねぇ… それにもし魔王様のお口にあわなければ… 死?」

俺は焦った。

「待て、貴様ら人間の庶民がどの様なものを食しているのか興味があるだけなのだ!」
「もし口に合わなくても貴様らの命を取る様なことはしないし、ちゃんと金も払うから安心するが良い」

俺はただご飯が食べたいだけなんだけど、なんでこんなに苦労してるんだろうと思いつつ、カウンターの席についた。

「る、ルビア様、小上がりがありますのでせめてそこで…」

「いやここが落ち着くから良い。それよりここでは何が一番人気なのだ?」

「は、はい! ボックテール唐揚げご飯とエールのセットとなりますっ」

ボックテールは安価で栄養価も高いボック(全長2メートル程の養殖用大トカゲ)の尻尾だ。
養殖用としてぷりぷりに太らせた尻尾はある程度重くなると自然に切れて、またすぐに生え変わるので収穫も容易。
TAKIDANでは人間族の間で割と知られたポピュラーな食材なのだ。

「うむ、ではそれで頼む。金は先に払っておこう」

おれはメニューに書かれてあったセット代金(850DAN)を店主のニッケルンに渡した。

「わ、わかりましたっ このお金は家宝に…!!」

「いやそういうのいいから普通に使って!」

俺は決められた対価を払いたいだけなんだが、まぁ相手から見れば仕方ないよな…


10分もしない内にボックテール唐揚げご飯とエールのセットが登場。

イメージ的には濃い塩味のタレをかけた巨大輪切りチャーシューの唐揚が、楕円形のお皿に盛られた大盛りご飯にドカン!と乗っかっている感じ。
ご飯といっても、白米というより麦飯に近い外見で、塩味のタレと唐揚げによく合いそうだ。
薬味としてネギに近い食材を細切れにしたものが添えられていて、かけるかどうかは自由らしい。

まずはエールを一飲み。
現実世界ではビールをよく飲んでいたから、異世界のエールがどんな味なのか楽しみだった。

「ぬるいっ しかし濃厚!」

この世界では冷蔵庫の様な便利家電はなく、魔導冷却器を備えた高級レストランでなければ冷たいエールは飲めない。
しかしこれはこれで味が濃くてまろやか…  結構、アルコール度も高いのではないだろうか?
なんか余裕で20%以上はある感じがするぞ。

続いてメインディッシュだ。

「うん、これは普通に美味い」

唐揚げの衣はパリパリで中身はジューシー。噛むと肉汁が口内に一気に広がっていく。
それに肉の香りもよく臭みは全くない。
若干淡白な肉に濃い塩味のタレが想像以上に馴染んで、現実世界の唐揚げより全然いける!
しかもご飯と一緒に口に入れることで、肉と米の旨み成分が溶け合って最高に味覚を刺激しまくる。

この味であれば現実世界でチェーン店化すれば流行るかもしれない。
しかも食しながらエールを飲むと味覚が一掃され、更に食が進む。
うん、これはさすがに一番出るメニューだ! 最高!!

しかし俺が一番、嬉しかったのはルビアにもちゃんと味覚があることだった。
それだけでもここに来た甲斐があったというものだ。

予想外のあまりの美味さに感動して俺は追加料金を払ってエールをおかわりしていた。
そして3杯目を飲んだ時、異常に気がついた。

「あれ? なんかぐるぐる頭がまわって… 」

現実世界では割とお酒には強い方だったので油断していたが…

「ひょっとしてルビアってお酒にめっちゃ弱い体質…!?

気がついた時には時既に遅しで、疲労もあいまってもう俺はぶっ倒れそうに…

クラクラしながら周囲を見ると、噂を聞いた村人たちが店に集まりだして今は満員状態だ。
なんか入口近くでは立ち見客までいるし。

こんな状況でこのまま酔い潰れたら魔王としての品格が…

そう思った時、店内の隅でずっとエールを飲んでいた男が突然声を上げた。

「おい!! 魔王ルビアッ!!!」

一瞬で静かになる店内。

「俺と勝負しろ!!!」

ただの飲んだくれと思っていた男の胸には銀色のプレートが貼ってあった。
そこに刻印されている文字は…

< B級冒険者 クアルト >
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...