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第35話 お茶の時間
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「秋緒さんの入れるコーヒーはやっぱり味わい深いよなぁ」
あぁ… 今日もやつに会ってしまった。
謎の老人セイジロウである。
全く何を考えているかさっぱりわからないが、やつはほぼ毎日の様にアキオ宅にやってきては どうでもいい話をして帰っていく。
不思議なのは私について必要以上に詮索しないというか、あえて触れない様に振る舞っているところだ。
まるで私を困らせない様に気遣っているのではないかというぐらいに。
「秋緒さん、最近はうまくやっとる? 多分大丈夫とは思うけど、もし困ったことがあればすぐに教えてね」
「は、はぁ。特に問題ないですよ。いたって平穏に暮らしていますので」
「そうかそうか! まぁ何も問題ないのが一番良いことだよ」
セイジロウは安心したように 私が煎れたコーヒーを美味しそうに飲み干した。
それにしてもこの男は私の過去について何か違うものを見ているかの様だ。
元のアキオの記憶でもなければ、この私、ルシアの記憶でもない何かを。
いやそれともやはり痴呆が進行して幻の記憶の海を彷徨っているのだろうか。
それにしては行動そのものにブレは一切なく、会話の内容も理屈も終始一貫しているように感じてしまうから厄介だ。
「あ、でも秋緒さん、ほんとうに困ったら私をいつでも頼っていいからね。しっかりそこだけ覚えといてね」
「え、えぇ。わかりました。有難うございます」
「それじゃそろそろお暇するよ。今度来る時はクッキー焼いてくるから楽しみにしていて」
「は、はい、有難うございます。 あの、帰り道はお気をつけて…」
玄関から出た老人は前を向いたまま、ひらひらと彼女へ手を振って階段を下り帰路へついていった。
「ふぅ ようやく帰ってくれたか」
老人を見送った後、ルビアは力が抜けた様にソファへと座り込んだ。
彼女にとってこの弱々しい老人は最も畏怖すべき対象であることに何ら変わりはなかった。
「私の魔力…鑑定スキルすら全く通じない、そしてやつは私が知らない何を知っている」
一体、やつは何者だ?
何もわからないだけに対策の立てようがない…
「以前、式神を何度か一階の彼の住居まで飛ばしてみたけど、玄関に入る直前で消滅してしまったし 一体何なんだ…」
「ははっ 何が私を頼ってねだ。こんなの怖すぎてどう頼ればいいと?」
ルビアは半笑いを浮かべてそのまま瞳を閉じた。
ちょうど小さな台所の出窓から夕陽が差し始め、ソファに深く座った彼女の頬を優しく照らしていた。
それからほんの少し眠っただろうか。
夕陽が建物の影に隠れた頃、彼女は思い出した様に起き上がり、冷たくなったコーヒーを飲み干しながら今までのことを思い出していた。
セイジロウはここを訪問する時、しばしば何らかの手作り菓子を持ってくる。
何でも「手作り菓子」は私が好きだった食べ物の一種らしいが、いかんせんそんな記憶は一片もない。
ただ彼が持ってくる手作りお菓子とやらは全て「美味」という事はわかる。
もといたTAKIDANでは感じられなかった重厚かつ複雑、神経を擽ってやまない魅惑の食感といったら良いのだろうか。
確かに私が煎れるコーヒーによくマッチしたものであり決して嫌いではない。 いやむしろ好きだ。
ということは本当に私はもともとセイジロウの手作り菓子が好きだったのか?
であれあば何故彼に関する記憶がない?
そしてどうして私の魔力がセイジロウには通らないのだ?
「あぁ、もうヤメヤメ!」
これ以上考えても仕方ないと諦めて立ち上がった瞬間、激しい目眩が彼女を襲った。
「あ… これは…!」
ルビアの足元を中心に真っ赤に点滅する緊急転送用魔法陣が展開されている。
「こ、これってアキオ… また死にかかってる!?」
あぁ… 今日もやつに会ってしまった。
謎の老人セイジロウである。
全く何を考えているかさっぱりわからないが、やつはほぼ毎日の様にアキオ宅にやってきては どうでもいい話をして帰っていく。
不思議なのは私について必要以上に詮索しないというか、あえて触れない様に振る舞っているところだ。
まるで私を困らせない様に気遣っているのではないかというぐらいに。
「秋緒さん、最近はうまくやっとる? 多分大丈夫とは思うけど、もし困ったことがあればすぐに教えてね」
「は、はぁ。特に問題ないですよ。いたって平穏に暮らしていますので」
「そうかそうか! まぁ何も問題ないのが一番良いことだよ」
セイジロウは安心したように 私が煎れたコーヒーを美味しそうに飲み干した。
それにしてもこの男は私の過去について何か違うものを見ているかの様だ。
元のアキオの記憶でもなければ、この私、ルシアの記憶でもない何かを。
いやそれともやはり痴呆が進行して幻の記憶の海を彷徨っているのだろうか。
それにしては行動そのものにブレは一切なく、会話の内容も理屈も終始一貫しているように感じてしまうから厄介だ。
「あ、でも秋緒さん、ほんとうに困ったら私をいつでも頼っていいからね。しっかりそこだけ覚えといてね」
「え、えぇ。わかりました。有難うございます」
「それじゃそろそろお暇するよ。今度来る時はクッキー焼いてくるから楽しみにしていて」
「は、はい、有難うございます。 あの、帰り道はお気をつけて…」
玄関から出た老人は前を向いたまま、ひらひらと彼女へ手を振って階段を下り帰路へついていった。
「ふぅ ようやく帰ってくれたか」
老人を見送った後、ルビアは力が抜けた様にソファへと座り込んだ。
彼女にとってこの弱々しい老人は最も畏怖すべき対象であることに何ら変わりはなかった。
「私の魔力…鑑定スキルすら全く通じない、そしてやつは私が知らない何を知っている」
一体、やつは何者だ?
何もわからないだけに対策の立てようがない…
「以前、式神を何度か一階の彼の住居まで飛ばしてみたけど、玄関に入る直前で消滅してしまったし 一体何なんだ…」
「ははっ 何が私を頼ってねだ。こんなの怖すぎてどう頼ればいいと?」
ルビアは半笑いを浮かべてそのまま瞳を閉じた。
ちょうど小さな台所の出窓から夕陽が差し始め、ソファに深く座った彼女の頬を優しく照らしていた。
それからほんの少し眠っただろうか。
夕陽が建物の影に隠れた頃、彼女は思い出した様に起き上がり、冷たくなったコーヒーを飲み干しながら今までのことを思い出していた。
セイジロウはここを訪問する時、しばしば何らかの手作り菓子を持ってくる。
何でも「手作り菓子」は私が好きだった食べ物の一種らしいが、いかんせんそんな記憶は一片もない。
ただ彼が持ってくる手作りお菓子とやらは全て「美味」という事はわかる。
もといたTAKIDANでは感じられなかった重厚かつ複雑、神経を擽ってやまない魅惑の食感といったら良いのだろうか。
確かに私が煎れるコーヒーによくマッチしたものであり決して嫌いではない。 いやむしろ好きだ。
ということは本当に私はもともとセイジロウの手作り菓子が好きだったのか?
であれあば何故彼に関する記憶がない?
そしてどうして私の魔力がセイジロウには通らないのだ?
「あぁ、もうヤメヤメ!」
これ以上考えても仕方ないと諦めて立ち上がった瞬間、激しい目眩が彼女を襲った。
「あ… これは…!」
ルビアの足元を中心に真っ赤に点滅する緊急転送用魔法陣が展開されている。
「こ、これってアキオ… また死にかかってる!?」
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