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護衛騎士との別れ
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「エンダー!」
護衛達は城外でエンダー団長を先頭に整列していた。
「お嬢様」
縋り付くような声を上げたエリザベスの呼びかけに笑顔で答えてくれる。
エリザベスの見慣れた笑顔だ。
小さい時からエリザベスはエンダー団長に訓練してもらっていた。
エリザベスは護身術を、兄のチャールズは剣術を。
頻度こそ減ったものの今でもだ。
隣に控えてるのはマルク。彼の息子である。エリザベスの専属護衛だった。
その横に控えてる護衛達も皆彼女の護衛で出かける時は交代でいつも誰かついてくれていた。
どこにどの護衛と行ってその時何があったか。エリザベスはすぐに思い出せる。
信用している彼らとどこに行くのも怖くはなかった。
辺境伯領に来るための道中も彼らと一緒だからエリザベスに不安はなかった。
それがエリザベスにとってのいつも通りだったからだ。
それが今、彼らは帰ろうとしている。
エリザベスを置いて。
あたりまえだ。供の1人も連れて行ってはならぬとの命令だったのだから。
それを今になって実感したのだ。
エリザベスは何か喋ろうと口を開いた。
でも鉛が詰まっているかのように声が出なかった。
それでも喋ろうとすると涙が溢れそうになった。
慌てて奥歯をぐっと噛み締める。
エンダーを見上げるエリザベスの瞳は不安で揺らいでいた。
エンダーはサッと膝をついてエリザベスの手を取った。
続いて他の護衛達もザッと膝をつく。
「お嬢様。次にお会いするのはきっと結婚式ですね。
その頃にはひとまわりもふたまわりも成長して辺境伯夫人に相応しい立派なレディーになっているのでしょうか。いいえ、きっとなっています。なにしろエリザベスお嬢様は私達の自慢のお嬢様なのですから!」
あえて未来の明るい話をしてくれたのだろうか。
最後の言葉はいつも厳しいエンダーとは思えないほどおどけた調子だった。
引きずられるようにエリザベスの顔もふっと緩む。
「ええ、ええ、そうね。」
そう言うと顔を上げた。
「必ずあなた達が自慢できる立派な辺境伯夫人になってみせるわ。きっと!」
エリザベスもエンダーに合わせたように答えると、ふわりといつも通りの笑顔を見せた。
エリザベスが護衛たちを見送り、応接室に戻るとアメリアの横にルシアーノが戻っていた。
エリザベスは、ああしまった、と思う。
彼が戻る前に戻ったつもりだった。
エリザベスをみたルシアーノが一瞬目を大きくした。
そして不快そうに眉をひそめた。
(ああ、やはり戻られる前に戻るべきだった。)
「ただいま戻りました。失礼をいたしました。」
エリザベスは丁寧に謝罪をし向かいに座る。
そしてルシアーノよりここでの暮らしについてのお話が始まると不快そうな顔は消え去りルシアーノは貴族の微笑みを浮かべていた。
朝昼は各自部屋で食べていること。
夜は一応時間が決まっており食堂で取る事となっているが
皆日によって部屋だったり時間通りでなかったりまちまちであると言うこと。
身近なものだけのささやかながらの歓迎とお披露目を兼ねたお茶会を準備していること。
専属の侍女をつけたこと。
明日にでも城の使用人達の紹介もすること。などなど。
「今日はもうお疲れでしょう。夕食は部屋に運ばせます。ごゆっくりなさってください。今お部屋に案内させますわ。」
とアメリアが声をかけた。
そしてふと思い出したように
「落ち着きましたら城内を案内させましょう。ルシアーノに。」
するとバッとルシアーノがアメリアの方を見た。
それを見たエリザベスは慌てて
「辺境伯閣下はお忙しいかと思いますので、お気遣い無用でございます。」
「あら婚約者なのですから私たちのことは名前でよろしいのですよ。ねえルシアーノ」
「ええ‥もちろんです。私のことは名前でお呼びください。」
「では私のこともリズとお呼びください。ルシアーノ様アメリア様」
エリザベスは微笑むも、ルシアーノの顔はどことなくぎこちないままだった。
護衛達は城外でエンダー団長を先頭に整列していた。
「お嬢様」
縋り付くような声を上げたエリザベスの呼びかけに笑顔で答えてくれる。
エリザベスの見慣れた笑顔だ。
小さい時からエリザベスはエンダー団長に訓練してもらっていた。
エリザベスは護身術を、兄のチャールズは剣術を。
頻度こそ減ったものの今でもだ。
隣に控えてるのはマルク。彼の息子である。エリザベスの専属護衛だった。
その横に控えてる護衛達も皆彼女の護衛で出かける時は交代でいつも誰かついてくれていた。
どこにどの護衛と行ってその時何があったか。エリザベスはすぐに思い出せる。
信用している彼らとどこに行くのも怖くはなかった。
辺境伯領に来るための道中も彼らと一緒だからエリザベスに不安はなかった。
それがエリザベスにとってのいつも通りだったからだ。
それが今、彼らは帰ろうとしている。
エリザベスを置いて。
あたりまえだ。供の1人も連れて行ってはならぬとの命令だったのだから。
それを今になって実感したのだ。
エリザベスは何か喋ろうと口を開いた。
でも鉛が詰まっているかのように声が出なかった。
それでも喋ろうとすると涙が溢れそうになった。
慌てて奥歯をぐっと噛み締める。
エンダーを見上げるエリザベスの瞳は不安で揺らいでいた。
エンダーはサッと膝をついてエリザベスの手を取った。
続いて他の護衛達もザッと膝をつく。
「お嬢様。次にお会いするのはきっと結婚式ですね。
その頃にはひとまわりもふたまわりも成長して辺境伯夫人に相応しい立派なレディーになっているのでしょうか。いいえ、きっとなっています。なにしろエリザベスお嬢様は私達の自慢のお嬢様なのですから!」
あえて未来の明るい話をしてくれたのだろうか。
最後の言葉はいつも厳しいエンダーとは思えないほどおどけた調子だった。
引きずられるようにエリザベスの顔もふっと緩む。
「ええ、ええ、そうね。」
そう言うと顔を上げた。
「必ずあなた達が自慢できる立派な辺境伯夫人になってみせるわ。きっと!」
エリザベスもエンダーに合わせたように答えると、ふわりといつも通りの笑顔を見せた。
エリザベスが護衛たちを見送り、応接室に戻るとアメリアの横にルシアーノが戻っていた。
エリザベスは、ああしまった、と思う。
彼が戻る前に戻ったつもりだった。
エリザベスをみたルシアーノが一瞬目を大きくした。
そして不快そうに眉をひそめた。
(ああ、やはり戻られる前に戻るべきだった。)
「ただいま戻りました。失礼をいたしました。」
エリザベスは丁寧に謝罪をし向かいに座る。
そしてルシアーノよりここでの暮らしについてのお話が始まると不快そうな顔は消え去りルシアーノは貴族の微笑みを浮かべていた。
朝昼は各自部屋で食べていること。
夜は一応時間が決まっており食堂で取る事となっているが
皆日によって部屋だったり時間通りでなかったりまちまちであると言うこと。
身近なものだけのささやかながらの歓迎とお披露目を兼ねたお茶会を準備していること。
専属の侍女をつけたこと。
明日にでも城の使用人達の紹介もすること。などなど。
「今日はもうお疲れでしょう。夕食は部屋に運ばせます。ごゆっくりなさってください。今お部屋に案内させますわ。」
とアメリアが声をかけた。
そしてふと思い出したように
「落ち着きましたら城内を案内させましょう。ルシアーノに。」
するとバッとルシアーノがアメリアの方を見た。
それを見たエリザベスは慌てて
「辺境伯閣下はお忙しいかと思いますので、お気遣い無用でございます。」
「あら婚約者なのですから私たちのことは名前でよろしいのですよ。ねえルシアーノ」
「ええ‥もちろんです。私のことは名前でお呼びください。」
「では私のこともリズとお呼びください。ルシアーノ様アメリア様」
エリザベスは微笑むも、ルシアーノの顔はどことなくぎこちないままだった。
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