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隣の部屋
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エリザベスはバルコニーで風に当たっていた。
夕焼けのオレンジの街も美しかったが朝の光に明るく照らされている街も静かでいい。
エリザベスは先日夕焼けを見せてもらった客室に来ている。
ルシアーノがカーテンを開けた時バルコニーに椅子があったことをエリザベスは見逃さなかった。
そこで朝食の後こっそり一人でやってきたのだ。
しかしメイドが客間を一部屋一部屋掃除している最中であったのでエリザベスは戸惑ったが
どうやら扉の閉まっているところは掃除済み。開いているところはこれから。というルールらしいと気づいたため陰から様子を見ていた。
するとちょうどお目当ての部屋からメイドが数人出てきて扉を閉めたのだ。
そして隣の部屋に掃除道具を持って入っていくのを確認してエリザベスは件の部屋に滑り込んだのである。
昨日はあまり眠れなかった。
エリザベスは男性に怒鳴られたのが初めてだった。
部屋に戻り侍女に下がってもらい1人になると震えて涙が溢れそうになった。
エリザベスは震える自分の手を握りベットでシーツにくるまりながら
涙を1人で堪えることしかできなかった。
(だって泣けばきっと今日は目が腫れてしまってみっともないことになっていたわ。未来の辺境伯夫人としても恥ずかしいし、パーティで癇癪起こして泣いた公爵令嬢なんて噂されたくないわ)
「ええ!パーティで癇癪起こして主様に怒鳴られたって本当だったんだ!」
(えっ?)
隣の部屋からだ。
掃除のために窓を開けているのだろう。
おしゃべりしながら掃除をして今窓付近を掃除しているらしい。
エリザベスははしたないと思いながらも気付かれぬよう気配をけし聞き耳を立ててしまう。
「本当よ!専属侍女になったマリーに聞いたもの!」
「あら。マリーって悪役令嬢の専属侍女になったのね。お気の毒!」
「でもやっぱり1人ぼっちのせいかしら?おとなしいらしいわよ。」
「取り巻きがいないとやっぱり悪役令嬢ってダメなのね、劇の通りじゃない」
そこまで言うと皆でくすくすと笑う。
「パーティでジュースかけられたんだって?」
「自業自得よぉ。今まで悪役令嬢が王都でやってたことなんでしょう?」
「癇癪起こしてパーティは台無し。それで主様に執務室に呼び出されて怒鳴られたってわけ」
「でも怒鳴られたって本当なの?主様が女性に怒鳴ってる姿なんて見たことないわ。そもそも室内のことなんてわからないじゃない。」
「それがマリーは執務室の外で待機していたらしいんだけど、扉がしまっているのに怒鳴り声が聞こえてきたって言っていたわよ。」
「ええ、怖い。さすがに悪役令嬢といえど同情するわ」
「そ、れ、が!部屋から出てきた悪役令嬢!しれっとした顔をしてたらしいわよ!マリーは扉の外でも手が震えたって言っていたのに!」
まああと一同感嘆ともつかない声をあげている。
メイドたちは掃除の手はすっかり止まり、おしゃべりに興じてるらしい。
それにしてもパーティで癇癪起こして泣いた公爵令嬢の噂は立たなかったが
パーティで癇癪起こして怒鳴られても平気なふてぶてしい悪役令嬢との噂は立っているらしい。
エリザベスはため息をつきそうになった。
そもそも自業自得と言われても悪役令嬢はやっていたのかもしれないがエリザベスはやっていない。
「今朝もケロッと朝食食べていたそうよ。マリーはアレク様に悪役令嬢の様子を聞かれたからその様子を伝えたら、流石にアレク様も苦笑いされてたそうよ」
「ほんとさすが悪役令嬢ねえ。無視しても堪えないんでしょ?」
「無視?してないでしょ?ちゃんとお世話してるわよ。みんな」
「そりゃそうよ!お世話を放棄したら大奥様にクビにされるわよ!ただ必要以上の話を一切してないってことよ。あなた知らなかったの?」
「まあ、私たちメイドと話す機会なんてないけどねえ。」
ああ、とエリザベスは声をあげそうになってしまった。
やはりそうだったのか。
こちらに来てからずっと誰もエリザベスの雑談に応じてくれないのだ。
でもいつかは話してもらえるだろうとエリザベスはのんびり構えていたが皆で示し合わせていたらしい。
エリザベスはゆっくり首を振ると立ち上がった。
隣室の掃除はまだまだかかりそうだ。
見つかる前に立ち去ろうと思ったのだ。
「そういえばそろそろセイラ様が戻って来られるのでは?」
セイラ様?
思わずエリザベスの足が止まる。
「進水式のために領地に戻っているよね。今回は悪役令嬢が来ることになったから主様もアメリア様も進水式を欠席になって、ずいぶん怒っていらっしゃったのを見たわ」
「怒っているのは進水式の事だけじゃないでしょう。悪役令嬢が割って入ってこなければセイラ様が辺境伯夫人だったのだから。」
(!?)
思わずエリザベスは目をみはった。
「正式には決まってなかったとはいえ、ねえ。」
「でも侍従のトムが、セイラ様と主様の2人で結婚の話してたってこっそり教えてくれたことがあったわよ。話は進んでたのよ」
「あら、侍従の?トムが?なんであなたに?」
「あら、あなた侍従のトムと親しいの?知らなかったわ?」
そこからは恋バナになってしまった話し声を後に、エリザベスはこっそり部屋を出たのだった。
夕焼けのオレンジの街も美しかったが朝の光に明るく照らされている街も静かでいい。
エリザベスは先日夕焼けを見せてもらった客室に来ている。
ルシアーノがカーテンを開けた時バルコニーに椅子があったことをエリザベスは見逃さなかった。
そこで朝食の後こっそり一人でやってきたのだ。
しかしメイドが客間を一部屋一部屋掃除している最中であったのでエリザベスは戸惑ったが
どうやら扉の閉まっているところは掃除済み。開いているところはこれから。というルールらしいと気づいたため陰から様子を見ていた。
するとちょうどお目当ての部屋からメイドが数人出てきて扉を閉めたのだ。
そして隣の部屋に掃除道具を持って入っていくのを確認してエリザベスは件の部屋に滑り込んだのである。
昨日はあまり眠れなかった。
エリザベスは男性に怒鳴られたのが初めてだった。
部屋に戻り侍女に下がってもらい1人になると震えて涙が溢れそうになった。
エリザベスは震える自分の手を握りベットでシーツにくるまりながら
涙を1人で堪えることしかできなかった。
(だって泣けばきっと今日は目が腫れてしまってみっともないことになっていたわ。未来の辺境伯夫人としても恥ずかしいし、パーティで癇癪起こして泣いた公爵令嬢なんて噂されたくないわ)
「ええ!パーティで癇癪起こして主様に怒鳴られたって本当だったんだ!」
(えっ?)
隣の部屋からだ。
掃除のために窓を開けているのだろう。
おしゃべりしながら掃除をして今窓付近を掃除しているらしい。
エリザベスははしたないと思いながらも気付かれぬよう気配をけし聞き耳を立ててしまう。
「本当よ!専属侍女になったマリーに聞いたもの!」
「あら。マリーって悪役令嬢の専属侍女になったのね。お気の毒!」
「でもやっぱり1人ぼっちのせいかしら?おとなしいらしいわよ。」
「取り巻きがいないとやっぱり悪役令嬢ってダメなのね、劇の通りじゃない」
そこまで言うと皆でくすくすと笑う。
「パーティでジュースかけられたんだって?」
「自業自得よぉ。今まで悪役令嬢が王都でやってたことなんでしょう?」
「癇癪起こしてパーティは台無し。それで主様に執務室に呼び出されて怒鳴られたってわけ」
「でも怒鳴られたって本当なの?主様が女性に怒鳴ってる姿なんて見たことないわ。そもそも室内のことなんてわからないじゃない。」
「それがマリーは執務室の外で待機していたらしいんだけど、扉がしまっているのに怒鳴り声が聞こえてきたって言っていたわよ。」
「ええ、怖い。さすがに悪役令嬢といえど同情するわ」
「そ、れ、が!部屋から出てきた悪役令嬢!しれっとした顔をしてたらしいわよ!マリーは扉の外でも手が震えたって言っていたのに!」
まああと一同感嘆ともつかない声をあげている。
メイドたちは掃除の手はすっかり止まり、おしゃべりに興じてるらしい。
それにしてもパーティで癇癪起こして泣いた公爵令嬢の噂は立たなかったが
パーティで癇癪起こして怒鳴られても平気なふてぶてしい悪役令嬢との噂は立っているらしい。
エリザベスはため息をつきそうになった。
そもそも自業自得と言われても悪役令嬢はやっていたのかもしれないがエリザベスはやっていない。
「今朝もケロッと朝食食べていたそうよ。マリーはアレク様に悪役令嬢の様子を聞かれたからその様子を伝えたら、流石にアレク様も苦笑いされてたそうよ」
「ほんとさすが悪役令嬢ねえ。無視しても堪えないんでしょ?」
「無視?してないでしょ?ちゃんとお世話してるわよ。みんな」
「そりゃそうよ!お世話を放棄したら大奥様にクビにされるわよ!ただ必要以上の話を一切してないってことよ。あなた知らなかったの?」
「まあ、私たちメイドと話す機会なんてないけどねえ。」
ああ、とエリザベスは声をあげそうになってしまった。
やはりそうだったのか。
こちらに来てからずっと誰もエリザベスの雑談に応じてくれないのだ。
でもいつかは話してもらえるだろうとエリザベスはのんびり構えていたが皆で示し合わせていたらしい。
エリザベスはゆっくり首を振ると立ち上がった。
隣室の掃除はまだまだかかりそうだ。
見つかる前に立ち去ろうと思ったのだ。
「そういえばそろそろセイラ様が戻って来られるのでは?」
セイラ様?
思わずエリザベスの足が止まる。
「進水式のために領地に戻っているよね。今回は悪役令嬢が来ることになったから主様もアメリア様も進水式を欠席になって、ずいぶん怒っていらっしゃったのを見たわ」
「怒っているのは進水式の事だけじゃないでしょう。悪役令嬢が割って入ってこなければセイラ様が辺境伯夫人だったのだから。」
(!?)
思わずエリザベスは目をみはった。
「正式には決まってなかったとはいえ、ねえ。」
「でも侍従のトムが、セイラ様と主様の2人で結婚の話してたってこっそり教えてくれたことがあったわよ。話は進んでたのよ」
「あら、侍従の?トムが?なんであなたに?」
「あら、あなた侍従のトムと親しいの?知らなかったわ?」
そこからは恋バナになってしまった話し声を後に、エリザベスはこっそり部屋を出たのだった。
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