推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん

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復活の厄災編

第三十一話 神巫の巫女③

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「助けを求める人達はアマツが来てくれて助かるじゃなくて…助けて当然だと思ってしまっていた。強者ゆえの責務、弱い人を助けるという使命が…いつしか面倒な者達に呼び出されて手足のようにこき使われた事に嫌気がさしたんだ。」
「こき使われるなんて、アマツさんはそんな事…。」

 レズリィはクロムが予想した話に首を傾げた。たしかにそれっぽいことは言っていたが、彼女の中では帝国を相手にして大勢の人達を救った神巫の巫女の姿と同じだとは思えずにいた。

「いえ…アマツさんはそう言葉で言っていました。思い出してみてください。」

 コハクは何かに気づいたかのよう皆にアマツが言った会話を語りだす。

 ーー弱い人達のために力を振るえですって?あんた達は私をなんだと思ってるわけ?

 ーー私に助けを求めるという選択肢が頭に入ってるせいで、皆は自身の身をどう守るか考える思考を持たなくなってきてる。

「この言葉から思うに、アマツさんの影響力が凄すぎたあまり《この人がいれば町や里は大丈夫だ。》と住人達は認識してしまった。だから縋(すが)りついてしまったんです、自分達で守るのは不安で仕方なかったから。私はそうクロムさんの話を聞いて気づきました。」

 コハクの話を聞き、ようやくアマツが自分達と協力関係として一緒に戦わないのか全員が理解した。
 アマツは自分が戦って守ることで、弱体化する町の防衛力や、剣士や魔法使いなどの怠慢が生まれてしまったことに憂いた。
 自分達が考察した都合のいい綺麗なストーリーで納得してしまったが、アマツが感じているであろう闇はもっと深い。共感なんて出来ないだろう。

「アマツさんが何故こんなにも闇を抱えてしまったのか…その真理は私達に答えてはくれないでしょう。」

 レズリィはアマツを救いたいという感情を露わにし自分の胸を掴んだ。神官の目からは彼女が困っているように感じた、助けずにはいられないのだ。

「でも…これじゃいけないと思うんです!このままじゃアマツさん、勘違いをしたまま自分を苦しめることになってしまいます!」
「レズリィの気持ちはよくわかる、だがあそこまで拗らせちまったらどんな言葉をかけても心は開かない。私達じゃどうすることもできないんだよ…。」

 どうすることもできないという気持ちを抱えた三人を、俺はじっと見つめる。
 たしかにこれ以上アマツに何を言おうと彼女の気持ちを変えることはできない、こういう電話越しの関係では伝えたい感情が伝わりにくくなる、話は平行線なままで関係が悪化するのは目に見えている。
 それでも…これだけは彼女に言ってやらないといけない。
 俺は手に持っている通信用の魔石を握った、鑑定スキル《アナライズ》で使い方を見た俺は魔石を起動し話し始めた。

「聞こえてるかわからないけど…アマツ、俺達はお前の言う通りお前には頼らない。自分達の力で帝国を、厄災魔獣を止める。」
「なっ!何言ってんだお前!?」

 パーティーの皆は目を丸くして驚いた、俺は彼女達の問いに答えることなくアマツに向けて話続けた。

「だけどアマツ…これだけは言わせてくれ。他人のために戦わないと決めたお前が、どうしてクロノスと行動していた?」

 アマツから返事は無かった、20年前の戦争を切り出した俺の話に皆も固唾を呑んで話を聞いた。

「20年前の帝国との戦争は資料で見たことがある、帝国に立ち向かった者もそうでない者も大勢の人が命を落とした悲惨な出来事だ。お前だって誰かを失いたくないために、これ以上犠牲者を増やさないためにクロノスと協力していたんじゃないのか?」

 アマツは言った、「自分を守れない奴は、自分で守ろうとする勇気がない奴はこの世界では生き残れない」と。
 だが俺はそうは思わない。誰しもそういう力を持ってるわけじゃない、誰しも死にたくなくて強い者達に頼ることしかできない者がいる。
 俺は人というのはそんな弱い存在なのだと彼女に思い出してほしい、それを言葉として彼女にぶつけた。

「今、そういう出来事が病魔となって何も知らない人達に襲いかかろうとしている。俺達が帝国の企みを阻止出来ずに病魔が復活してしまっても…里にいる兵達が命張って戦っていても…お前は他人のために戦わないと決めて、周りの人が死んでも心が痛まないっていうんだな。そんな姿、もう英雄でも何でもねぇよ。」

 俺は熱くなって彼女に強い言葉を浴びせた。正直な所、最後の一言は余計だった。周りがサーッと凍りつくような感じがした。

「クロムさん…さすがにそれは言い過ぎでは、巫女さんがそれで不満を起こして余計に人間不信になったら大変なことになりますよ。」
「頼むぜクロム、もうちょっとマシな説得を期待していたんだけどな私は。」
「あはは…そういう直球発言、見ているこっちが一番緊張しますよ。」

 皆は俺の発言に呆れた顔を表した、このまま後味の悪い沈黙が流れる前に俺は言い訳気味に口を動かした。

「たしかに今の発言はやべぇ一言だったかもな、でも俺達にはこうやってアマツと話すことしかできない。今しかないんだ、アマツと正面でぶつかり合えるのは…。」

 失言した際の焦りなどが微塵も感じさせない真剣なクロムの顔に、皆は恐れ入るような眼差しを向けた。
 この男には本当に驚かせられる、きっと意味があるんだってそういう何かに引っ張られるような感じがした。

「聞こえているかアマツ、俺はお前のやり方で人を救わない。それだったらお前が言ってた馬鹿ヒーローの道を歩んだ方がよっぽどマジだ。遅れ過ぎてやって来たヒーローなんて惨めでカッコ悪いからな。」

 再びアマツに向かって余計な一言レベルの言葉をぶつけた。だがしばらく待ってもアマツからは何も応答はなかった。
 俺は苦笑するようなため息を一つ吐くと、通信用の魔石を机に置きその場を後にしようと歩き出した。

「…行こうか。俺達が出来ることはもうない。」
「あっ…おい!クロム!?」

 急に帰ると言い出したクロムを皆は慌てて追いかけた。誰もがクロムの姿に目を向けている最中、机の上に置いていた魔石が静かに光を閉ざしいつもの色へと戻っていった。

 誰もいない家を後にし、遠くまで景色が見える位置にクロムはしばらく座りこんだ。
 最強の仲間を連れてパンデルム遺跡に常駐している帝国軍を討つ予定だったのに、それができなくなってしまった。
 旅の目的が失敗に及んで落ち込んでいると思って皆はクロムの隣に座った。だがクロムの顔には落ち込みや焦りといった表情が見られなかった。何かを掴んでいるような含みの笑みを浮かんでいた。
 クロムはきっとこの状況を見据えて何か策を考えているのだろうと皆は思った、そんな顔をしているからと皆は思うだろう。

(はぁぁぁマジで緊張したぁぁ!アマツがこうなることはゲームをやっていて知っいたから驚かなかったけど、ここでクロムの強気な名言を言わなきゃいけないのはマジで心臓に悪いよ!はぁぁぁ…一番のターニングポイントを抜けられてめっちゃ気が楽になったぁぁ!)

 ただゲームで一番重要な場面をシナリオ通り切り抜けたことに内心喜んでいただけだった。
 そんな事を思っているとも知らず、皆はこれからどうするのか助言を求めるようにクロムに聞き出した。

「クロムさん…これからどうしましょう。」
「アマツさんは協力的とは思えませんし、代わりとなる必要な戦力をかき集めないと。」
「それで、どうなんだクロムは?私達はどうすればいい?」

 皆の視線が集まる中、クロムがゆっくりと腰をあげ遠くの景色を見ながら口を動かした。

「とりあえずまずは知識だ、フォルティアさんは俺達の情報が確かか確認するために早速動き出している。俺達はこれからの戦いに向けて学ばなきゃいけない。こっからは情報戦だ。」

 ーー霊長の里・御神木前

「……。」

 神巫の巫女アマツとの会話を終えたクロム達は、戦いの場であるパンデルム遺跡の周辺《死霊の谷》についての情報を探し求めようと御神木の麓まで転移で降りてきた。
 俺達はアルノアの件で里の近衛隊達と険悪な関係となっていて、里で情報を探すのは難儀すると思っていた。
 だが、御神木の頂上から転移し里へ帰ってきた頃には近衛隊の様子がガラリと変わっていた。

「お帰りになられましたか勇者御一行様、あの場に私達が起こした数々の無礼をお許しください!」

 ずらりと道の端に並んで俺達に向けて深く頭を下げている。謝罪のためにここまで大袈裟にやるとこっちが怖くなってくる、俺達は唖然とした表情で彼らを見ていた。

「フォルティア様から事情は聞きました、あの憎き悪魔に姿を変えられその復讐のために旅をしているのだと。私達もその悪魔に騙され多くの同士を奪われた故、その気持ちは痛いほど分かります!」
「この霊長の里近衛隊一同、勇者御一行様に無礼を行った詫びと憎き悪魔達の討伐に力を尽くすと決め、あなた方と協力することにしました!」
「私達に指示を!共に里を守りましょう!」

 この場にいる近衛隊達は皆、人を敬うような目で俺達を見ていた。王室に入る前では皆、警戒のためか人を殺すような目で睨んでいたのを思い出し、その変わり映えした姿に少し恐怖感を感じた。

「えっ、ええ…何コイツら、あんな人を殺すような態度とってたのに急に親密な関係築きあげようとしてるんだけど。怖えよ、絶対路地裏に回されてリンチにされるよ。」
「ちょっとアルノアさん!声を抑えて!聞こえちゃいますよ!」

 アルノアは顔が引きつり困惑している表情を見せながら近衛隊の変貌に愚痴をこぼしていた。
 俺もさすがにこの変貌ぶりに怪しさを感じていた、俺は近衛隊をまとめる一人の隊員に近づきこの状況を詳しく聞いた。

「謝罪はもう大丈夫だ、それよりさっき俺達から指示をくれって聞こえたけど具体的今どういう状況か教えてくれるか?」
「現在、近衛隊隊長ジアロ率いる近衛隊の一部が死霊の谷に集まっていると言われる帝国軍の偵察に出向きました。残った私達は勇者御一行様のサポートをお願いするよう里長から頼まれました。」

 予想通り、フォルティアはもうすでに手を打っていた。しかもそれ以上に問題視していた近衛隊との関係をも良好にさせてくれていた。
 どうやってアルノアの誤解を説得したのかわからないが、今の近衛隊を見て一つわかったことがあった。
 掟やルール、里長の指示など自分達より上の存在が作り上げた命令には絶対遵守の心構えがある。
 ジアロの時のような掟破りに反する容赦のない対応、他人の思いより自分達が掲げてきた掟を優先する思考、もしこのようなマニュアルに頑固な隊員で構成されているなら自然と結びつく。
 近衛隊達はフォルティアの命令には逆らわない、例えさっきまで敵だった者と協力しあうことになっても。

「わかった…近衛隊達の皆、手を貸してほしい。俺達と一緒に死霊の谷についての情報を探したい。地形や気候、何でもいい。お願いできるか?」
「わかりました。よし皆、メンバーを小分けにしてこの里にある死霊の谷、およびパンデルム遺跡の情報をかき集めるんだ!」
「「はい!!」」

 一致団結したような雰囲気に包まれ、近衛隊達は了承の声をあげた。

「おい…本当に信じて大丈夫か?私達コイツらに殺されかけたんだぞ、もっと警戒すべきだろ。」
「俺達にはフォルティアさんっていう後ろ盾がいるんだ、もし命令に反することをすれば隊員同士で反発が起きる、ジアロ隊長の時みたいにな。それを望んでいないのは俺達でも隊員でもない、里長のフォルティアさんだからだ。」
「つまり…この隊全員、上の指示がないと何も出来ない指示待ちな奴らってことか。」

 もっと他に言い方があるだろと小さく呟いた後、ため息を吐いてその場を流した。

「とりあえず、俺達も近衛隊達と協力して少しでも情報を見つけよう。夜、宿屋に集まって作戦会議だ。」

 皆はこくりと頷き、隊員達と行動しながら別々に散って行った。
 俺もこれから起きるであろう出来事を、ゲームをしていた時を思い出しながら必要なものを一つずつ書き写し行動に移した。

 ーー霊長の里・宿屋

「よいしょ…持ってきましたレズリィさん、死霊の谷に関する資料です。」
「ありがとうございますコハクさん、こっちは地図を持ってきました。」
「くそっ、なんで私が買い出しなんてしなきゃならないんだよ。こういうのはクロムの仕事だろ。」

 日が遠くの山に入り世界が薄暗く広がり始めた頃、パーティーの皆が宿屋に集まり探し集めた死霊の谷についての資料を並び始めた。
 だがその場所に時間と場所を指示したクロムの姿が見当たらず、アルノアは呆れた表情をして頭を抱えた。

「っていうかあいつはどこに行ったんだ?集まって作戦会議じゃなかったのかよ。」
「クロムさんのことです、きっと何か特別な情報を持って帰ってくるはずですよ。」
「いや、絶対遊び呆けてるよ。帰り道に男が寄り付きそうないかがわしい店あったから絶対そこに行ってるよ。」

 アルノアが呆れた物言いをすると、急に血相を変えたレズリィがアルノアの肩を掴みその物言いを否定した。

「行くはずないでしょクロムさんが!そんな、はっ…破廉恥なお店に!」
「わっ、悪かったって!落ち着けレズリィ!例えだ!例え話だって!」
「そうですよ!クロムさんがそんな店に行く訳ないじゃないですか、あの時の添い寝のことだって…あれ?結局あれってどっちが悪かったのでしょうか?」
「添い寝?どういうことだよそれ。」

 今朝の出来事が少しうろ覚えだったコハクは添い寝という単語を口に滑らし、アルノアがそれに反応した。

「あっ…あっ…。」
「おいしっかりしろレズリィ!今度は何だ!?悪かったって言ってるだろ!」

 それと同時にしおしおに枯れていくレズリィに気づいたのか、アルノアは必死に彼女の息を吹き返そうと必死に彼女の体を揺らした。

 それと同時刻、霊長の里を離れ結界の外にある湖。
 薄暗い外を灯り一つで歩いているクロムの姿があった。

「不思議だ、ここは結界の外だっていうのに魔物が襲い来ない。夜行性の魔物は凶暴だって聞いたんだけどな。」

 いつどこから魔物が襲いにくるかわからない危険な状況で、人と話すほどの声量で独り言を話すクロム。
 乏しいランタンの灯りで自分の場所を知らせている身の程知らずな姿を晒しているのには理由があった。
 静かすぎるからだ。
 魔物の呻き声、足音、こちらに向ける殺気が無くまるでまだ里の中にいるような感覚だった。

「まさか…お前が全部片付けてくれたのか?」

 最初から全てわかっていたかのように目の前に広がる暗い湖にそう口にすると、風が吹くのと同時に声が耳に流れ込んできた。

「誰がお前のためですって?」

 湖の近くにある人の背丈ほどの大きな岩の陰から人影が現れた。
 特徴的な長い黒髪に紅いコート、背中を隠すほどの大きな黒い翼、そして俺にだけ向けられる嫌悪な視線。
 セーレだ。

「魔物達と同じ場所に送ってやろうかしら?クロム。」
「ははっ、死んだら亡霊になって一生お前の耳元で口笛吹いてやる。」
「何それキモいんだけど近寄らないでくれる!?」

 セーレは本気で嫌そうな顔をした後3歩ほど退がった、それでも彼女からは俺を追い出そうとする悪意は感じられなかった。
 旅の道中では何回かイタズラ半分で殺されそうになってその度にしてやったりという表情をしていたが、今では満更でもなさそうに見えた。

「はぁ…それで、私に会いに来たってことは何か私に用があるってことなんでしょう?さっさと話しなさいな。」

 先程の会話から切り替えて面倒そうに俺へ用事の件を尋ねた。

「俺達が向かう死霊の谷に里の偵察隊が投入された、敵情報を確認した上で戦いに挑む気なんだろうんだろうな。でも俺が欲しいのは谷にいる戦力数じゃない、もっとその奥…シトリー達の行動だ。」
「へぇ、つまり…私に潜入調査させろってことね。」
「ああ…。」

 俺はセーレの話に頷くと少しの間沈黙が流れた、セーレは湖を眺めながら何かに思い更けてる表情を見せていた。
 なんとなく彼女の今の気持ちがわかるような気がした。悪く言えば俺達がヘラグランデからセーレの使役権を奪ったことにより、彼女を無理矢理パーティーの仲間として行動している。
 まだ仲間意識で帝国に未練があるとするなら、この調査はあまりにも酷だ。帝国の計画を妨害する立派な裏切り行為だからだ。  

「やっぱ…無理だよな…。」
「いいわ…のってあげる。」
「えっ…今なんて…?」

 セーレに殴られるんじゃないかと覚悟していたが、彼女はあっさりと調査の協力の返事をして俺は唖然とした表情で聞き返した。

「いいのか?てっきりお前の頼み事なんて聞くもんかって断られると思っていたのに。」
「私はお前達の仲間であってレズリィ様の僕(しもべ)よ。お前達がそうしたいっていうなら私はそうする、それがお前達と私の関係でしょう。」

 セーレは淡々と自分がこちら側の味方だと話していく。
 改めて聞かされると彼女の言動が怪しく見えてきた、帝国として本当に未練はないのか?まだ信頼という築きが不十分であるうえでその答えの真意を知りたかった。

「だけどそれって…。」
「私と帝国の関係を危うく見てるの?どっちにしたところで私は帝国には帰れない。裏切り者で殺されるくらいなら抗って生きてやるわ。」
「わからない…なんで?」
「しつこいわよクロム、お前達となら安全な気がするから。ただ…それだけよ。」

 そう言うと俺に向かって歩き出し、手に持っている物を俺に押し付けた。
 俺の体から転げ落ちるのを素早くキャッチすると、手の中で硬い何かに触れた。

「黄色の魔石…マジックダイヤルか。っておい!」

 魔石を受け取った事を確認すると、セーレは翼を広げて飛んで行った。
 言葉数も少なく彼女の真意を聞けなかった、しかも何故彼女からマジックダイヤルが出てくるのか?まだまだ聞きたいことがあったのにと心に思いながら深くため息を吐いた。

「はぁ…あいつだけはどうやって接していけばいいかわかんないんだよなぁ。」

 ゲームのシナリオ上、セーレはルーナ城で倒れる存在だった。そこから彼女がどういう人物か深掘りされることなくシナリオは最後まで進む。
 いわばセーレだけ謎めいている存在で、彼女が何を目的として行動しているのかまったくわからないのだった。

「このゲームは知り尽くしてると思ったけど、お前のおかげでまだ知らないことだらけだって気付かされたよ。この旅路の目的、もう一つ付け加えなきゃいけないな。」

 俺はセーレからもらった魔石を握りしめ来た道を戻って行った。
 帝国を倒すだけじゃない、この世界にはまだ俺の知らない物語が待っている。そう考えると心が躍った、この気持ちはまるで新たなゲームをプレイしているあの何も知らないワクワク感を体験しているようだった。

「まだまだ知られていないこのゲームの物語を知ってみてぇ!ゲーマーとして血が唆るぜ!」

 俺はこの期待感をさらけ出すよう、子供が無邪気に走るように里へ走って行った。
 今だけはこの先に起こる過酷な試練を忘れて…。
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