じゃあ勇者でお願いします。

本能寺隼人

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第六章ー神界転移ー

THE43ーケモノガエリー

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その日の夜、巨大なベッドで妻達に囲まれ転がるもなかなか寝付けないでいた。

悩む…みんな連れて行って生きて帰れるのか…

そんな事を考えていると横から声をかけられる。

「不安か?」

スカーレットが起きていたようだ。

「あぁ…」

すると反対からも声が聞こえる。

「心配しなくても大丈夫ですよ?」

エリスも起きていたようだ。

「明日からみんなとそれぞれと寝ようと思う…」

「「はい」」

2人は俺の意図を汲み取ってくれたようだ。


ー翌朝ー

エイシャとスカーレット、リリョウの4人で稽古をしエリスとナージャは洗濯物を干している。

時折、俺と目が合うと手を振ってくれる。

その間にエイシャの猛攻を片手間で防ぐと癇癪を起こし更に攻めてくる…の繰り返しだ。

休憩の時はエリスとナージャが冷たい飲み物を持ってきてくれる。

「お待たせしましたっ!」
「よしっ休憩じゃ!」

「あー喉乾いた」
「次はあんたから一本とるからねっ!」
「…疲…レタ…」

「あなた?少しお義姉様に優しくしてあげたら?」

「ちょっと!エリス!それじゃあ私が弱いみたいじゃないのよ!」

「これは手を抜くと殺しにきてるから逆に危険なんだよ」

そんな会話や稽古をして1日を終え今日はエリスと2人で巨大なベッドを持て余し、手を握り合い久しぶりにゆっくり話をした。

「ふふっなんかこうやって眠るのも久しぶりね」
「そうだね…」

「まだ悩んでるの?」
「うん…」

「ふふっ…あなたが居なかったら私はきっと魔族病であの時1人寂しく死んでいたのでしょうね」
「なっ!そんな…事…」

「あなたやナージャに救われたこの命、あなたと一緒に戦い死ねるなら私はそれでもいいのよ?」

「……」
俺はなんと答えたらいいのかわからずにいるとエリスは話を続けた。

「もともと戦う相手は違えども、あなたと一緒に戦う為に、旅をする為に、魔法も極めたのよ?
使わないなんてなんの為に、頑張ったかわからないじゃない!」

「そうだね、君を守るよ」
「はいっ私もあなたを守ります」

あの頃まだ腕が回らなかったのに今ではこんなに小さく感じるなんて…

「ふふっ大きくなりましたねっ」
「…うん」

どうやらエリスには俺の考えなどお見通しのようだ。

そして俺の腕の中でエリスは眠った。


そういえば最近、シルバを見かけないとふと考えたが俺は妻達は絶対に守ると決意し眠りに落ちた。

朝、目が覚めるとエリスと目が合い微笑んでくれる。
「あなたっおはよ」
「おはよ」

すると上の階からナージャの声が聞こえる。

「マスター、お姉様、朝食の準備ができましたよ?」
「今行く!」
「ナージャありがとっ」

みんなで朝食を摂り妻達とエイシャは皆仲良く話している。
やはり、シルバがいなかった。

「みんな、シルバはどこに行った?」

「「「「「っ!」」」」

皆俺から目をそらす…

「えっ?」

「今は放っておいてやれ…お主の為じゃ…」
「…?」

朝食を終えてリビングでくつろいているとナージャがたまに客室に入ったりしていた。

「?」
ふと気になり客室に入ってみると…

「なっ!?シルバ?」

ナージャの布で羽交い締めにされたシルバが居た。

「なっ!シルバどうした?」

「ご…主人…だ…ダメ…来ない…で…!」

俺は布を取ってやるとシルバは目の色が変わり勢いよく俺の首筋に噛み付いてきた。

「マスター!」

俺とシルバはナージャに引き剥がされ、シルバはナージャの布に羽交い締めにされて動かなくなった。

「マスター!お怪我は?」
「だ…大丈夫だ…シルバは一体…」

「お主は…放っておけと申したのに…」
スカーレットが扉の淵に寄っ掛かり腕を組んで怒りの表情で立っていた。

「…ケモノガエリじゃ」
「えっ?ケモノ?」

「そうじゃケモノガエリ…何十年かに一度自我は無くただの獣になる日があるのじゃ…」

「そんな日が…」

「マスター…血が…」
ナージャは布で俺の首を押さえている。

「あぁ…」
俺は回復魔法をかけるも痛みが消えない…

「無駄じゃ…」
スカーレットはそう言い腕をまくる。

「っ!?」

スカーレットの腕には獣に噛まれた様な傷が残っている。

「こやつの場合、傷は魔法では癒えぬ…自然治癒に頼るしかできぬのじゃ」

ナージャが布を取ると子供の噛み痕の様な血が布に残っていた。

俺達はリビングに戻りエリスはふくれっ面で俺の傷の手当てをしてくれた。

「もうっこんな見える所に噛み傷なんてっ!」
「恥ずか…シイ」
「マスター…外出禁止!」
「あれ程申したのに…はぁ」

「プフッ!」

「……はぁ」

この世界で魔法で治らない傷なんて呪いしか存在しない。

呪いが子供の噛み傷…

リリョウの言う通り恥ずかしい…

「しかし噛みちぎられていたら助からなかったぞ?」
「…はい」

「もおなんで首なのよ!あなたって人は!」
「…ごめんなさい」

「マスター…上から我の布を巻いておきますね」
「…っ!苦しい…」

「龍…九…ヨシ…ヨシ…」
「…リリョウありがと…でも痛いから首じゃなくて頭をさすっておくれ…」

「あー完璧に痕、残るわよっ!」
「えっ!?」

「プフッ!」
「…」

その日から数日間傷が沁みて酷い目にあった。

そして夜、今日はスカーレットと寝る日だ。

スカーレットはいつも通り俺の左側に横になり俺の首に手を当てている。

「本当にお主は…これ程美しい妻達が側におるのに…」
「…突然だったしシルバだから油断した」

「まったく…首に人の噛み傷など浮気の呪いと思われるぞ?」
「そうなのか?」

「だからエリスも怒っておったのじゃ!」
「し…知らなかった…」

「まぁ4人も嫁がおるお主じゃからの…」
「っ!」
スカーレットはシルバとは逆の首筋を小さく噛んだ…

「ふふふっ妾の跡も残っておるぞ?」
「…そうか?」

「傷が消えたら…皆で街に買い物に行かぬか?」
「えっ?いいけど…っ!」

「約束…じゃぞ?」
「あぁ約束だ」
俺はスカーレットを抱きしめてやると、胸の中で小刻みに震えながら涙を流していた。

スカーレットは俺と同じように皆が無事で帰ってこれないと思っていたのだろう。

「大丈夫…みんな俺が命をかけて守るから」
「お主が死んでしまったら元も子もないではないか!」

「ははっそうだな…」
「そうじゃ…リューク?」

「んっ?」
珍しくスカーレットが弱々しい瞳で俺を見ていた。

俺は妻達も自分も守らねばと決意した。
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