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第34話 クーネイル伯爵
しおりを挟む授業と授業の間の休憩時間。
別にする事もないので席に座ってボーっとしている。
本当は学長なんだけどヴァイトがいれば問題ないと言うか僕が学長するよりヴァイトの方が良い。
今は相変わらず続くギェダ・グズムンドソン教団による誘拐事件の情報収集のために生徒のふりをしている。
ギェダ・グズムンドソン教団は見つけるたびに完全に消しているんだけどまるでGの様にどこからか湧いてくる。
彼らの目的を調べてわかった事なんだけど、彼らはあの儀式で邪神の召喚なんて出来ないのは承知の上で活動しているらしい。
誘拐と殺人が教団の目的の為の手段ではなくて目的そのもの?
ただ人殺ししたいだけの集団?
全くわからない。
デマルクス・セペ団は組織が大きくなりすぎて当初のギェダ・グズムンドソン対策から目的がぶれて警察組織の様になっている。
証拠だとか法律に縛られているので対応が遅い。
悪い奴らの方が迅速に動けるなんて歯痒い事この上ないだろう。
法律によらないところや目的が利己的なところは僕も教団と何も変わらない。
国や司法にすれば犯罪者だ。
アディッサが教室に入ってくる。
「教団の次のターゲットがわかったわ。」
チェリやツッピ、テトもやって来る。
「北の防壁付近にある孤児院を狙っているわ。」
「あそこはエリミリア教会の管轄外だから狙いやすいのよ。」
「クーネイル伯爵と奴隷商人のブッフェルが中心になっているわ。」
調査して来た内容を嬉しそうに報告する。
ワクワクして僕の反応を待っている。
ネズミやコウモリなのにわんこみたいだ。
僕は1人づつ頭を撫でて
「良く調べたね。ありがとう。」
と言う。
細いしっぽをパタパタさせて目をピカピカにしているのが可愛いい。
動物は素直でいい。
いつも教団に先手を取られて犠牲がでてからの対応だったのでこれからは彼らの計画や教団の存在がわかった段階で潰すことにした。
まだ何もしていないのに潰すのはちょっと横暴かな?冤罪?そんなことはどうでもいい。
僕は罪を問うためにやっているんじゃないから。
クーネイル伯爵邸では娘の婚約が決まり、また跡取りの長男の嫁が懐妊してお祝いムードになっていた。
クーネイル邸のホールには楽団や芸人が招かれ演奏が始まっていた。
家族や使用人も集まり晩餐会をはじめるところだった。
表向きはお抱え商人のブッフェルやその家族も来ている。
他にはギェダ・グズムンドソン教団の関係者と思われる子爵や男爵の様な取り巻き達。
クーネイルにとっては教団は取り巻きや協力者を明確にして自分たちの陣営をまとめる為の道具だ。
儀式も形式に過ぎず何か召喚されるなどと期待しているわけでもない。
その召喚された何かが自分の味方になる保証などないのだから。
娘の縁談や孫の誕生で公爵とのパイプも太くなり公爵家も安泰になると満足していた。
クーネイルは皆を見回して幸福にひたった。
「きゃあ、ネズミよ。」使用人が悲鳴をあげる。
こんな時にネズミ1匹で大騒ぎしなくともと声のした方に目を向けて絶句する。
既に使用人は蠢くネズミの群れに包まれて真っ黒になってもがいている。
「なんだ、何が起こっている。」
そう言うまもなく伯爵邸のホールはネズミで溢れた。
ホールにいた人々が無差別に真っ黒な群れに包まれ倒れていく。
そして覆い被せる様に黒い霧の様なものが邸全体を覆い尽くした。
同時刻に奴隷商人ブッフェルの私邸と商館も家族、使用人、商品である奴隷も含めて黒い霧に包まれた。
翌日クーネイル伯爵邸のあった場所には何にもない。
ブッフェルの私邸と商館も同じ、全てが失われた。
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