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第11話 テルファお嬢様1
しおりを挟むテルファお嬢様はクグルイア伯爵邸に向かうところだったそうだ。
ならば、と言う事で一緒に帰ることになった。
「テルファ、勇者様を返しなさい。」
「あら、ごめんなさいミュツスお嬢様つい抱いていることを忘れてしまいましたわ、おほほほほ。」
こいつ絶対わざとだし。
まあでもテルファに抱っこされている方が気持ちいいかな。
それでもやんわりとではあるけど謎の怒気を感じさせられながらミュツスに取り上げられた。
ウツミは馬車に揺られながら不機嫌なミュツスに怯えるのであった。
「そだねー。ウツミ君ねー。もうちょっと強くなったら僕が剣を教えてあげるけど、今はミュツスに教えてもらいなよー。」
そりゃそうだ、今、剣聖のこいつに稽古つけられでもしたら死んでしまう。
「ミュツスも加減が下手だから気を付けないと死んじゃうよ。」
ハプテス子爵の従者がこの時期にクグルイア伯爵領に来たのには理由がある。
クグルイア伯爵領とハブセス子爵領の境目あたりに大きなゴブリンの巣が出来たらしい。
近隣の村に被害が出ているので駆除の協力を頼みに来たと言うことだ。
その件はクグルイア伯爵領でも問題になっておりすぐに対策の協議に入ったようだ。
テルファお嬢様が来たのには別の理由があるようだけれど。
この日は夕食は伯爵と夫人それからテルファお嬢様や従者、ミュツスの兄、姉も同席しての会食となった。
「勇者様はどうして伯爵様の所にいるのかしら?」
テルファお嬢様が言う。
「本来なら王宮で暮らすんだけれど過去に召喚された勇者様と違って弱っちいから強くなるまで面倒を見るようにと王様に言われたのよ。」
ミュツスがそのまま答える。
なんか他に言いようはないんか?その通りだけれど。
「おかしいわね、魔王が攻めて来ている訳でも無いし、邪神が復活するって訳でもないのになんのために勇者召喚なんてしたのかしら?」
テルファお嬢様が首を傾げている。
他国を牽制するための権威づけって理由がなくもない。
どんな勇者でも勇者は勇者って事。
ただ今までの勇者でどこか一国に肩入れするような勇者はいなかったはずだけど。
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