アルバの為に。

めちゅう

文字の大きさ
1 / 2

1

しおりを挟む


 王都のど真ん中に建つハンターギルドの端で武器の手入れをしながらひと月ほど前に魔王討伐へ出た仲間の勇者一行を待つ。勇者一行の一員とはいえど、元は田舎暮らしの農民であった俺はさほど戦力にもならないのでギルド内で待機する事が最近では多くなってきた。加入当初は勇者と肩を並べ魔物討伐に出たりなどしていたがそれもめっきり無くなった。そもそもなぜ俺が勇者の仲間になったのかというと、……実際のところ俺にもよく分からない。


 その日もいつも通り農作業をして、1日が過ぎていくはずだった。勇者一行が田舎の何もない辺鄙な村に立ち寄ったのだ。村長たちも、もうそれはそれは喜びできる限りの贅を尽くしてもてなした。なんでも勇者がこの村で何か大事な物を手に入れる為に来たのだとか。それは俺もいまだに分からないのだが、勇者一行が村から旅立つ時何故か俺も旅支度をさせられ勇者一行側に立っていたのだ。村長がいうには「時が来れば分かる。」との事だった。全く理解ができなかったが。


 そして現在、魔王討伐へ同行する事もなくいまだに村長の言葉の意味も分からずじまいなのだ。最近特に思う、

「俺なんで連れてこられたの??」

 天を仰ぎなら小さく呟く。同じく俺と残された仲間もいるが相性があまり良くないのか皆それぞれ別行動をとっている。一応残されたのは商人や遊び人、バーサーカーなどなど、確かにこのメンバーで編成して討伐に出るのは難しいかもしれない。そもそも俺は役職などない、強いていうのならバトルファーマーかな?

 勇者からそれなりのお金は貰っていたがあまり使う気にもなれず、ギルドでの依頼を出来る範囲でこなしながらその日暮らしをしている。が……最近飽きてきた。元より俺は農作業が好きであったし、何よりあののどかな村が好きだったのだ。離れてみてわかるという感じなんだろうな。だから、昨日仲間にも伝えたがあと3日でここを去ろうと決めた。遊び人のロメオがいつもとは打って変わって物凄い剣幕で止めてきたがもう俺の心は変わらない。


 勇者はいい奴だ。だが、いつ戻るかもわからないのを待つほどの仲ではないと思うのだ。なんて少し薄情か?けど俺の人生だから1日も無駄にしたくない。うん、そうと決まれば支度だ支度。なんだか胸が痛い気がするが何か変な物でも食べただろうか?


 そして3日が過ぎ、俺はギルドの前で仲間たちに別れを告げいざ村へ帰ろうという時だった。空に一筋の光が上がり暖かな灯りが降り注ぐ、あぁ、やっと終わったのか。おそらく勇者一行が魔王討伐をやり遂げたのだろう、集まった仲間たちで顔を見合わせると皆笑顔になっていく。俺たちは行けなかったが皆がやってくれた、無意識のうちに目からこぼれ落ちる物を気付かないふりをし、改めて仲間に別れを告げる。

「世話になった、やっぱり俺は農村に戻るよ。一度決めた事だ覆すことしたくない。勇者たちが帰ってきたら、ありがとう楽しかったと伝えてくれ。じゃあ皆元気でな。」

 精一杯笑って挨拶をすると、悲しいというよりかはどこか心配そうな顔をしていた。

「なぁ、せめて勇者が帰ってくるまで待ってやらねぇのか?」

 バーサーカーのバルトが眉を八の字にして俺に問いかけてきたが、やはり変える気にはならない。

「いや、俺は元々大した戦力でもなかったしな。ネコの手も借りたいような感じで連れてこられただけだろう。魔王討伐が終わった今ますます必要がないと思うのでな。」

「んーそういうことじゃねぇんだけどよ。」

 バルトが呆れた顔になり、商人のアニーに目配せを送る。

「そうだよ、残ったら?勇者絶対悲しむよ!……てゆうか勝手に帰したって怒られんのわたしたちじゃないの…?!」

「?すまない、最後の方がよく聞こえなかった。」

「なんでもないでーーす。あーもうあと知らなーい。あとロメオよろしくねー。」

「あ!まてなんでこんな時だけ僕なんだ!…っほんとに恐ろしいんだぞあいつ。」

 遊び人のロメオが顔を真っ赤にして怒ったかと思えば今度は真っ青になりブルブルと震え始めた姿を見て、ふっと笑みが溢れてしまう。ああ、俺ここに来てよかったかも。

「じゃあ今度こそ行くよ、皆と会えて良かったっ。辺鄙な村だけどいつでも遊びに来てくれ!」

 3人が諦めたように笑い手を振って送り出してくれる。さぁ、ここから徒歩で約2日…頑張るかっ。
















「ちょおおぉぉぉおっと、まったたあぁぁああああ!!!」

 聞き覚えのある大きな声に思わず肩が跳ねる。

「アルバっ!!待って!っふ、まってっ!」

 振り返るとなんとそこには息を切らしながら俺の名前を呼ぶひと月ぶりの勇者がいた。なんでここに?先程まで魔王の根城に居たのではないのか?

「っ?勇者?なぜここに?」

「っアルバが俺の帰りも待たずに村に帰るって!ロメオからテレパシーで聞いたぞ!」

「?ああ、そうか。勇者も別れの挨拶をしに来てくれたのか?」

「違う!!俺っアルバに言いたい事があるんだ!魔王倒したら絶対に真っ先にアルバの所に行って伝えたい事があったんだ。」


 どうやら別れの挨拶ではないようだ。…俺に言いたい事?なんだろう、もしかして直接の戦力外通告??それならば悔しいがちゃんと聞いてから旅立たねばいけないな。

「なんだ?……覚悟はできている。言ってくれ。」

「っ!アルバ!っやはりバレていたか?」

 勇者は照れくさそうに笑い俺の方を見ると決意のこもった瞳に変わり、突然俺の前に跪いた。

「っ!?なんだ?」

「アルバ!!俺と結婚してくださいっ!」

「ハッ!?」

 !?驚き過ぎて声が裏返ったぞ!今結婚して欲しいと言ったか……?

「お、俺とか?」

「ああ!もちろん!アルバしかいないよ。」

 ……段々と理解してきたがそれと同時にみるみる顔が熱くなってくる。俺の顔は真っ赤に燃えているんだろう。こんな冗談を言うような男ではないと分かっているからこそ思う。

「な、なんで?なんで俺?ただの農民…だぞ?君は勇者で魔王を討伐したんだからこの国の姫だって聖女だってよりどりみどりじゃないか!」

「アルバじゃなきゃ意味ないよ。知ってる?俺この世界に来る前からアルバに恋してたって?」

 この世界に来る前?あ、そうか、勇者は確か国王の命で異世界から召喚されたと聞いた事があった。あまりにこの世界に馴染んでいたから気にした事がなかったんだ。

「……それだけじゃ分からないが?」

「だよね。一から説明させて?」

 勇者が静かに語り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

悪役Ωは高嶺に咲く

菫城 珪
BL
溺愛α×悪役Ωの創作BL短編です。1話読切。 ※8/10 本編の後に弟ルネとアルフォンソの攻防の話を追加しました。

声なき王子は素性不明の猟師に恋をする

石月煤子
BL
第一王子である腹違いの兄から命を狙われた、妾の子である庶子のロスティア。 毒薬によって声を失った彼は城から逃げ延び、雪原に倒れていたところを、猟師と狼によって助けられた。 「王冠はあんたに相応しい。王子」 貴方のそばで生きられたら。 それ以上の幸福なんて、きっと、ない。

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

とある冒険者達の話

灯倉日鈴(合歓鈴)
BL
平凡な魔法使いのハーシュと、美形天才剣士のサンフォードは幼馴染。 ある日、ハーシュは冒険者パーティから追放されることになって……。 ほのぼの執着な短いお話です。

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

処理中です...