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3.ドリュート
しおりを挟む我が家の子供達は皆優秀で評判も良い、特に次男のジェラルトは貴族院を首席で卒業した程で、三男のカルーセントは可愛らしい見た目とコミュニケーション能力で作られた人脈は凄まじい。長男のハウゼントは…特にこれといった特徴は無いが、とても優しい子だ。
だからこそ、私はハウゼントが侯爵位を継ぐ事を良しとしていなかった。あの様な陰謀渦巻く社交界であの子が傷付くところを見たくなどなかったのだ。あの子が産まれて、一目見て私は心を奪われた。誰が何と言おうと私にとっては一番可愛いのだ。
争いの火種になる様な事だ、誰にも言ったことなどない。
幼少期は仕方無しに厳しく育てていたが、私自身の我慢の限界で優しくするとあの子がとびきりの笑顔で返事をする。それが堪らなく嬉しかった、本当は甘やかして育ててあげたかった。
そして私の願いが通じたかの様に弟達が成長し、兄であるハウゼントを越していく。ジェラルトが貴族院を卒業する頃には後継者はジェラルトに決まりつつあった。あの優しい子に侯爵家などという重圧を背負わせなくて良いのだと、これからはたくさん甘やかしてやろう、と。
だが、事は思う様に進まない。私は長年厳しくハウゼントに接してきたのだ。今更どう甘やかしてあげたら良いのか分からない。私の中途半端な態度にいつもあの子は困惑していた。
ある時期からあの子が急に領地や経済やらあらゆる分野について学び始めた。いや貴族院で一通りは学ぶが更に深く学んでいたのだ。何があの子をそうさせているのか私には皆目見当もつかなかった。今までのあの子は何に関しても何処か諦めた様子で取り組んでいたからだ。
妻に聞いた話によると、なんとあのハウゼントが恋をしているそうだ。これは父として応援せざるを得ない事なんだが……どうも私には出来そうにない。あの子が当主にならなければ叶わない恋など父からしてみれば可愛い我が子を馬鹿にされている様でどうも納得いかない。
可哀想だが数ヶ月もすれば次男との差に諦めもつくだろうと思っていた私が間違いだった。私はあの子の何を見ていたのかと頭を抱える程メキメキと頭角を現して、周囲の評価も目に見えて変わり当主候補として無視できなくなってしまった。
遂にあの子は我が領で長年悩んできた農作物の不作も品種改良により見事に解決してしまった。領民からの圧倒的支持もあり結局次期当主に指名、してしまった。
あの子が連れてきたお相手は驚く程の美人で、内心嬉しさより騙されているのではないか?と心配に支配されていた。それでもやはりあの子の幸せそうな顔を見ると婚約を許可するしかなかった。
3年の婚約期間が過ぎプリスが我が家に嫁いできた。私の心配をよそに2人は仲睦まじく過ごしているが、どうしてか優しくする事が出来ない。分かっているプリスがあの子に似て優しい子だと、使用人達の評判も良いし私達に対しても敬意を払って接している所を見ても分かるが……。
そんなこんなで無愛想な態度で息子夫夫に接してしまっている。私自身いつも反省ばかりしているのだがそんなある日遂に息子にも釘を刺された。……怒りを浮かべたあの子の顔を今でも忘れる事が出来ない、ああ、私が不甲斐無いばかりに愛する我が子が苦悩している。
「父上、貴方が私を認めていない事は……分かっています。…でもプリスは素晴らしい人だ…!貴方にもそれだけは分かって頂きたい。プリスが貴方達に真心を持って接している分ほんの少しでも彼に返してあげて欲しいだけです。………お願いします。」
違う、違うんだ。お前を認めていないわけじゃない、私は心配なんだ……。ただ、それだけなんだ。
「………フン。」
「っ!…失礼します!」
私はいつからこんな人間になってしまっていたのだろう。…すまない、ハウゼント。私の愛しい子。
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