異世界転生しましたが能力は授かりませんでした。

プロローグ

異世界転生を目指して

ジリジリと太陽が照りつける真っ昼間。
氷田ひだ怜れんは、夏休みの時間を使い、新作ゲームを買いに来た。
「あぢぃ.......焼け死ぬ.......」
暑さの対策もしないまま家を出てきた怜は、外のあまりの暑さに驚く余裕もなく、フラフラとおぼつかない足取りでゲーム屋へ向かって行った。
「涼しぃぃ！生き返る.......」
ゲーム屋の自動ドアが開くと冷たい風が吹き、今までの足取りが無かったかのように、怜は元気になっていた。
お目当てのゲームを見つけた怜は、急いでレジへ向かった。
「これください」
「あいよ。」
ここはちょっとした田舎町｡人気ゲームも直ぐに売り切れないし、店員が少ないお陰でサクサク会計が進む。
そして買い物を終えた怜は、スキップをしながら店を出た。
だが怜は忘れていた。外の地獄のような暑さを｡
むわぁっと顔に吹く風は生ぬるいものだった。
そして外に出た途端、怜は元気を一瞬で失った。
「うっわぁ.......あづい.......」
実はもうこの時点で怜は危なかったのだ。
水分を取らず尿を出し、脱水症状に陥っていたのだ。
「うわ、くらくらする.......前が歪んで見える.......」
もうここで怜は詰んでいた。
とうとう目を閉じてしまい、前に倒れた。
そして追い打ちを掛けるかのように

ぐちゃ

近くを通った引越しトラックに頭を轢かれ、完全に命が消えた。


だが怜は死ぬ直前までこんなことを思っていたのだ。



『せめて異世界転生してチート能力授けてくれ.......』


と。
最後の最期までアホを通り越して脳みそ空っぽだった。