僕らを残したこの世界で笑う

Ran

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第1章 取り残された世界で

4. 二階堂れら

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「にしてもよかったね。偶然とはいいあかねが追っていた人間達を無差別に襲う半妖を捉えることが出来て。」

 体育館での騒動を終え、学校の外を歩きながら瑠依が蒐に言う。

「ほんまや、あの犯人の目的、おそらく半妖の自分達をバカにしてくる人間への復讐やな。」

「…復讐ね。」

 復讐という言葉に瑠依は少し反応する。

「今の時代、どの種族もハーフを多かれ少なかれうとまうふしがあるけれど、人間は特に毛嫌いしとるさかい。相当嫌な思いしたんやろなぁ。人間への憎悪が半端じゃなかったわ。けどあの学校にいった本来の目的はほぼ果たせなかったけどええの?」

 蒐がそでの長い着物で口を隠しながら言う。
 着物の袖で口を隠すのは蒐のいつもの癖だ。

「いいんだよ。あの学校には2年いたけど、1年目でこの学校であの人に関する情報はほぼ得られないと察していたから。それでも学校にい続け、蒐まで呼んだのは僅かな可能性に期待していたからだよ。悪かったね。手間を取らせて。」

「いいんどすぇ。かまへんで、れら・・・

 れらと言われた少女は顔に手をかけ、ベリベリっと変装用のマスクを外す。
 するとそこには真っ黒な長いロングヘアーと右目を半分ほど覆った長めのアシメの前髪。そして切れ長で綺麗なブルーアイが現れた。
 それは紛れもない人間族の長、二階堂れらの姿だった。

「ありがとう蒐。」

 れらはれら・・のいつも通りの無感情な目で口元だけ薄く笑いながらお礼を言う。
 別に感謝の気持ちがこもってない訳じゃない。
 ただ、れらはこうゆう笑顔しか出来ないのだ。感情を1度封じてしまったれらにはこれが精一杯の笑みだった。
 その事を蒐は知っている。痛い程しっている。

「けど、あそこでノンスキル状態を解除しなくても余裕で勝とったんやないの? なんでわざわざ解除したん?」

 蒐はふと、疑問に思っていたことを聞いてみた。

 各種族は皆、魔力を感知する能力を持っている。
 ノンスキル状態は、魔力を魔術で封じ込める術で魔力が強い者にしか使えない術だ。
 魔力があまりに強いとノンスキル状態にしておかないと色々めんどうなのでノンスキル状態が出来るものは大体そうしている。
 ノンスキル状態にすると、魔力が封じられるため本来の10%の力しか使えなくなる。だが、あの敵はれらの10%の力でも十分に倒せる相手だった。
 要するに、れらがとてつもなく強いのである。

「ああ、突然学校に来なくなって下手に捜索されるよりも楽だと思ったからだよ。適当な理由をつけて学校を辞めるにしても時間がかかるしね。」

 れらが答えた理由に蒐は納得して「なるほどなぁ。」と言う。

 確かに下手に詮索されて困ることがこの人には沢山あるからなぁと蒐は思う。けれど、たかが学校の先生ごときに詮索されて正体がバレるようなヘマをするような人でもない。

「そういえば、蒐はこの後どうするの?」

学校近くの横断歩道に差し掛かった時、れらが相変わらずの無表情で尋ねてきた。

「せやなぁ、仕事があるさかい鬼の村に帰るわ。」

「そう、私も家に帰るとするよ。蒐も鬼の長・・・で多忙なのに、よく今回の依頼引き受けてくれたね。助かったよ。本当にありがとう。」

 そう言われ蒐は頬を赤らめる。

「そ、そないに礼を言われることではおまへんっ、かまわへんとも言ったやないの。そんな事よりうちはもう帰るで。」

 蒐は照れ隠しをしながらそっぽを向く。

「わかった。じゃあ私が鬼の村まで送るよ。」

「そら助かるわぁ。頼むで。」

 れらが蒐の近くにいく。そして

「テレポート」

 そう言うとれらの魔術で蒐を1000km離れた鬼の村へ転送させた。



 蒐が消えたあと、ふとれらが

「今回も収穫なしか…。一体いつになったら私はあの人の元へ行けるんだろう…。」

 そうボソリと呟いたが、その声を聞くものはいなかった。
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