【完結】ヤンデレに恋愛フラグを仕込まれた俺の末路

かおり

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第2話 たまたまじゃね?いやマジでヤバくね?

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 部屋の中で、俺は机に肘をつきながらノートを見つめていた。

 ――フラグノート。

 先週、空から降ってきた正体不明の黒革表紙。
 まさかの「恋愛フラグを発生させるノート」。

 軽い気持ちで一度だけ試したら、あっさり成立した。
 中村と橘。今や昼休みに一緒にパンを分け合ってる仲だ。

 ……いや、たまたまだろ? 偶然だよ、偶然。
 一回だけで判断するのは早計ってやつだ。

「──もう一回だけ」

 俺はペンを取り、ノートを開いた。
 真っ白なページに名前を記す。

 ⸻

「花江夏希 井上蒼太」
「帰り道で水しぶきがかかり、タオルを貸す」

「伊藤渉 井村陽介」
「図書室で同じ本に手を伸ばす」

「田中実 吉田真帆」
「給食でおかずを譲る→偶然手が触れる」

 ⸻

「よーし、これで検証してみよう」

 俺はふんぞり返って天井を見上げた。
 誰かに怒られる気もしたけど、たぶん神様ってそうヒマじゃない。

 ⸻

 翌日。

 俺はなるべく無表情を装いながら、観察に徹していた。

 まず、花江と井上。

 校門前で、花江が濡れた髪をタオルで拭いていて、
「これ使って」と井上に差し出してる。

 まさかの成立一発目。
 ……いやいや、まだ偶然の範囲内。全然ある。

 次。図書室。

「えっ、ごめん。あ、それ……」
「あっ……いや、大丈夫、どうぞ」

 伊藤と井村の手が、本の背表紙のところで触れてた。
 お互い顔赤い。なんか“空気”できてる。

 ラスト。給食。

「やべ、俺おかず食い忘れた……」
「いいよ、これあげる。……あっ、手ぇ……」

 田中と吉田が、手を引っ込めながら微妙に照れ笑いしてた。

 ──三連コンボ。成立率100%。

 ⸻

「……うおぉ、マジかよ……」

 俺はトイレの個室でガッツポーズを決めた。

「いやこれ、すごくね? 世界の恋愛を俺が支配してる感あるんだけど!?」

「よし、よしよし……いける。いけるなコレ……!」

 ノートをパタンと閉じて、ニヤリと笑った。

「俺が……この世界の少子化と多様性、
 ぜんぶ解決してやるぜーー!!」

 ⸻

 その日の放課後。

 カップル未満の“微妙な距離感”で話す三組を見かけた俺は、
「これぞ青春」って顔でベンチに座って頷いていた。

 全部、俺の字だ。俺が書いたんだ。
 “運命”じゃない。“介入”だ。

 にもかかわらず、当人たちは誰一人それに気づいていない。

「最近さ、あの人のこと気になっちゃってさ」
「なんかわかる……自然と目がいっちゃうというか……」

 ……自然、ね。

 俺は一瞬、背中に冷たいものが走った。

 いや、でも、悪いことしてるわけじゃないし。
 全部、本人たちが幸せそうだし。
 うん、大丈夫。たぶん、問題ない。

 ⸻

 ……と思っていた、その時だった。

 廊下の角で、クラスメイトの高城が
 窓の外のカップル(田中×吉田)を見て、ぽつりとつぶやいた。

「……あの子、好きだったのに。
 まあ……俺なんか、最初から眼中なかったか……」

 え?

 俺は、喉がカラカラに乾くのを感じた。
 高城の視線の先には、俺がノートに書いた二人。

 あれって、俺が──
 もしかして、俺が……。

 ⸻

「……っ、」

 俺はノートを鞄に突っ込んで、その場を逃げるように走り出した。

 走って、走って、家まで。

 部屋に着いた瞬間、机の引き出しを乱暴に開け、ノートを放り込む。

「もうやめる。二度と使わねえ。……俺は、神様じゃない。」

 そう言い聞かせて、ノートの上に辞書を乗せた。
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