【完結】ヤンデレに恋愛フラグを仕込まれた俺の末路

かおり

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第7話 逃げるフリして、追いつめて

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 ──なんで俺、今日もキスされてんの?

 わけがわからない。
 屋上のあの出来事から三日。
 黒川は、なぜか定期的に「レン君、キスしていい?」と訊いてくるようになった。

 しかも、断るとあの顔だ。

「……レン君のせいなのに、なんで嫌がるの?」

 泣きそうな目で、そう言われると──
 どうしても、拒めなかった。

 唇が触れ合うたび、胸がざわつく。
 指先が震える。気持ち悪いわけじゃない、でも気持ちいいとも違う。

 混ざってる。
 こわい。

「……責任って、もう勘弁してくれよ……」

 ⸻

 逃げ道は、ひとつしかなかった。

 俺は部屋でノートを開いた。
 “あのノート”。フラグを操作する、最悪で最強の道具。

 ──誰かが、俺と黒川をくっつけた。
 そう考えるしか、もう納得できる理由はなかった。

 だったら──

「こっちで、別のフラグを作ればいい」

 ターゲットに選んだのは、田崎雪。別クラスの女子で、黒川の隣の席。
 優しくて、わりと可愛い。何より、黒川と“話したことがある”というレアな女子。

 ノートに記す。

〝黒川悠人と田崎雪が、教室で消しゴムを同時に拾って、ドキドキする〟

 ──これで、いい。

 ⸻

 翌日。昼休みの教室。
 俺はさりげなく教室のドア越しに、ふたりを観察していた。

 そして──起きた。

 雪が消しゴムを落とし、黒川も同時に手を伸ばす。
 小さな指が触れ合い、ふたりの視線がぶつかる。

 田崎「……あ、ごめん……」
 黒川「……ううん、大丈夫」

 完璧だった。
 まるでドラマのワンシーンみたいだった。

 ……成功した。これで、俺は解放される。ありがとう田崎。幸せになってくれ。

 なのに──

 黒川の表情が、ほんの一瞬だけ歪んだ。

 目を見開いて、なにかを失ったみたいな顔。
 そのあとは、いつもの無表情に戻ったけど──


 ……いや、でも。いいだろ?田崎、可愛いいじゃん。俺、ちゃんと選んだんだから……

 だが黒川は、その日一日、なにも言ってこなかった。
 キスも求めてこない。
 でも、見ていた。ずっと。

 無言で、こっちを見ていた。

 ──その“無言”が、一番こわい。

 ⸻

 放課後。

 下足室で靴を履いていると、肩を叩かれた。

「……斎藤レン君、だよね?」

 声の主は、桐生先輩だった。
 同じ校舎にいながら、なにか空気が違う先輩。

「君、最近……変なことに巻き込まれてない?」

 目の奥が、鋭かった。
 まるで、何かを確信してるような──

 俺は、無表情で答えた。

「……いや、別に」

 ⸻

 黒川の部屋。

 机の上には、半分焼け焦げた一枚の写真。
 田崎雪の笑顔が、黒く煤けてゆがんでいた。

 隣に飾られた写真は、レンとの──
 屋上での、あの濃厚なキスの瞬間。

 壁の中央に掲げられた文字だけが、古いインクで滲んでいた。

〝斉藤レンが黒川悠人と誰かのフラグを立てると、内容が斉藤レンに跳ね返るようになる〟
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