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第14話:それでも、守りたいと思った
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革命の動きが、静かに加速していた。
王太子殿下とエレナ嬢は、ついに「民衆に直接訴えかける演説」を計画し始めた。
そして、その象徴として提案されたのが――レオの音だった。
「彼の演奏は、人の心を動かす。差別も、痛みも、超えて届く」
「……革命に必要なのは、理屈より、“響き”よ」
エレナ嬢の言葉は、理にかなっていた。
王太子殿下も頷き、すぐに準備を始めようとした。
僕は、一度だけ口を開いた。
「……少し、考えさせてください」
空気が一瞬止まる。
反対は、していない。ただ、まだ……言えなかった。
◇
屋敷へ戻る途中、使用人たちの声が風に乗って耳に届く。
「やっぱり、演奏会に出るんですって」
「顔も綺麗だし、民の印象も良くなりそう」
まるで、レオが“道具”になったみたいだった。
否定できなかった。
僕自身も、そう――あの音に救われた“ひとりの民”だったのだから。
でも、だからこそ。
誰かのために使われるだけの存在には――してはいけない。
◇
夜、扉の前で立ち止まる。
中には、レオがいる。
もう何度もこの部屋の前に立っているのに、今日の扉は、やけに重かった。
ノックもせずに入ると、レオは窓辺でこちらを向いた。
目は合わない。でも、彼は僕の気配にすぐ気づく。
「ユリシス様、こんばんは」
あたたかい声だった。
「……今日、少しだけ、あの曲を思い出して弾いてみたんです」
ピアノの音はもう止まっていたが、
その余韻だけが部屋の空気に残っているようだった。
僕はレオの隣に腰を下ろし、黙ってその気配に浸る。
言葉が、すぐには見つからなかった。
すると、レオがぽつりと問う。
「……僕が音を奏でるの、怖いですか?」
胸の奥が、音もなく軋んだ。
「怖いのは、君の音が“誰かに奪われる”ことだ」
本心だった。
レオは少し黙って、そして静かに言った。
「でも……音は、誰かに届くものですよね?」
その声は、とても穏やかだった。
なのに、どうしてこんなにも苦しいのだろう。
僕は彼の手を取り、指先を絡めるように握った。
そして――小さく、息を吐くように囁いた。
「……君の隣には、俺以外、考えられない」
「……分からないなら、何度でも伝えるよ」
レオの指が、少しだけ震えた気がした。
そして、ゆっくりと顔がこちらに向けられる。
迷うように、でも確かに――その唇に、自分の唇を重ねた。
やさしく、触れるだけのキスだった。
言葉では届かないものを、指先と吐息で確かめ合うような、
静かな夜の口づけ。
唇を離したあとも、彼の手を握ったまま、僕はそっと問う。
「……怖くなかったか?」
レオは、少し照れたような笑みを浮かべていた。
見えていないはずなのに、僕の顔を“感じている”みたいに、まっすぐこちらに向けて。
「……ユリシス様となら、大丈夫です」
それは、答えだった。
王太子殿下とエレナ嬢は、ついに「民衆に直接訴えかける演説」を計画し始めた。
そして、その象徴として提案されたのが――レオの音だった。
「彼の演奏は、人の心を動かす。差別も、痛みも、超えて届く」
「……革命に必要なのは、理屈より、“響き”よ」
エレナ嬢の言葉は、理にかなっていた。
王太子殿下も頷き、すぐに準備を始めようとした。
僕は、一度だけ口を開いた。
「……少し、考えさせてください」
空気が一瞬止まる。
反対は、していない。ただ、まだ……言えなかった。
◇
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「やっぱり、演奏会に出るんですって」
「顔も綺麗だし、民の印象も良くなりそう」
まるで、レオが“道具”になったみたいだった。
否定できなかった。
僕自身も、そう――あの音に救われた“ひとりの民”だったのだから。
でも、だからこそ。
誰かのために使われるだけの存在には――してはいけない。
◇
夜、扉の前で立ち止まる。
中には、レオがいる。
もう何度もこの部屋の前に立っているのに、今日の扉は、やけに重かった。
ノックもせずに入ると、レオは窓辺でこちらを向いた。
目は合わない。でも、彼は僕の気配にすぐ気づく。
「ユリシス様、こんばんは」
あたたかい声だった。
「……今日、少しだけ、あの曲を思い出して弾いてみたんです」
ピアノの音はもう止まっていたが、
その余韻だけが部屋の空気に残っているようだった。
僕はレオの隣に腰を下ろし、黙ってその気配に浸る。
言葉が、すぐには見つからなかった。
すると、レオがぽつりと問う。
「……僕が音を奏でるの、怖いですか?」
胸の奥が、音もなく軋んだ。
「怖いのは、君の音が“誰かに奪われる”ことだ」
本心だった。
レオは少し黙って、そして静かに言った。
「でも……音は、誰かに届くものですよね?」
その声は、とても穏やかだった。
なのに、どうしてこんなにも苦しいのだろう。
僕は彼の手を取り、指先を絡めるように握った。
そして――小さく、息を吐くように囁いた。
「……君の隣には、俺以外、考えられない」
「……分からないなら、何度でも伝えるよ」
レオの指が、少しだけ震えた気がした。
そして、ゆっくりと顔がこちらに向けられる。
迷うように、でも確かに――その唇に、自分の唇を重ねた。
やさしく、触れるだけのキスだった。
言葉では届かないものを、指先と吐息で確かめ合うような、
静かな夜の口づけ。
唇を離したあとも、彼の手を握ったまま、僕はそっと問う。
「……怖くなかったか?」
レオは、少し照れたような笑みを浮かべていた。
見えていないはずなのに、僕の顔を“感じている”みたいに、まっすぐこちらに向けて。
「……ユリシス様となら、大丈夫です」
それは、答えだった。
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