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番号は優しさの証
第18話「エルバート夫妻、悪役候補を呼び出す」
──同じ頃、エルバート家の別室。
グランとルークは、なぜかディックの両親、アランとメリッサに呼び出されていた。
ふわりと微笑む母メリッサと、落ち着いた様子の父アラン。
その緊張感の無さに、逆に不穏なものを感じる二人。
「……何のご用ですか?」
ルークが低く問いかけると、アランがゆったりとカップを置いて言った。
「グラン様、ルークくん。貴殿たち、ディックのこと……好きなのでしょう。」
二人がわずかに息を呑む。
メリッサは、まるで天気の話でもするように優しく続けた。
「私たちはね、ディックが幸せなら、それでいいの。
誰を選ぶとか、誰と一緒になるとか……そんなこと、親が決める話じゃない」
「しかし」
アランが重く言葉を繋ぐ。
「ディックを、悩ませるのは可哀想だ。」
静かに、まっすぐに二人を見据えるアラン。
メリッサもふわっと微笑みながら、最後にひと言。
「だから、貴殿たちに判断してほしい。」
それだけを告げ、夫妻は席を立った。
⸻
──その直後。
隣の談話室から、ディックたちの声がうっすら聞こえてきた。
『……くそー、正論すぎてムカついてきた』
『……俺たち兄妹は、多分、すぐ人を好きになってしまう』
『……だって、しょうがないだろ!モブと悪役令嬢だぞ!』
息を詰めて耳を澄ませる二人。
──ああ、やっぱり……
こいつは、
“もう、俺たちを好きになりかけてる”。
そう思った。
長い沈黙、数十分後──
「……何、盗み聞きしてんの?」
不意に、背後からエリの声が飛ぶ。
「……!」
「ったく、これ、パパの魔法だよ」
「……魔法?」
グランが困惑すると、エリはため息混じりに説明する。
「家族限定で、“特定の部屋の声を、隣の部屋にだけ響かせる”っていう……まあ、
ディックの心の声を、わざとお前らに聞かせるための魔法」
「……!」
「兄貴、あんな顔してるけど、家族にはバレバレ。
だから両親もお前らを呼んで、“聞かせる場”を用意したってわけ」
エリは腕を組み、にやりと笑う。
「ま、あとは……
お前ら次第だってよ。」
そう言い残し、二人を置いて立ち去る。
グランとルークは、お互いを一瞥し──
ゆっくりと、決意を固めるように目を細めた。
グランとルークは、なぜかディックの両親、アランとメリッサに呼び出されていた。
ふわりと微笑む母メリッサと、落ち着いた様子の父アラン。
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ルークが低く問いかけると、アランがゆったりとカップを置いて言った。
「グラン様、ルークくん。貴殿たち、ディックのこと……好きなのでしょう。」
二人がわずかに息を呑む。
メリッサは、まるで天気の話でもするように優しく続けた。
「私たちはね、ディックが幸せなら、それでいいの。
誰を選ぶとか、誰と一緒になるとか……そんなこと、親が決める話じゃない」
「しかし」
アランが重く言葉を繋ぐ。
「ディックを、悩ませるのは可哀想だ。」
静かに、まっすぐに二人を見据えるアラン。
メリッサもふわっと微笑みながら、最後にひと言。
「だから、貴殿たちに判断してほしい。」
それだけを告げ、夫妻は席を立った。
⸻
──その直後。
隣の談話室から、ディックたちの声がうっすら聞こえてきた。
『……くそー、正論すぎてムカついてきた』
『……俺たち兄妹は、多分、すぐ人を好きになってしまう』
『……だって、しょうがないだろ!モブと悪役令嬢だぞ!』
息を詰めて耳を澄ませる二人。
──ああ、やっぱり……
こいつは、
“もう、俺たちを好きになりかけてる”。
そう思った。
長い沈黙、数十分後──
「……何、盗み聞きしてんの?」
不意に、背後からエリの声が飛ぶ。
「……!」
「ったく、これ、パパの魔法だよ」
「……魔法?」
グランが困惑すると、エリはため息混じりに説明する。
「家族限定で、“特定の部屋の声を、隣の部屋にだけ響かせる”っていう……まあ、
ディックの心の声を、わざとお前らに聞かせるための魔法」
「……!」
「兄貴、あんな顔してるけど、家族にはバレバレ。
だから両親もお前らを呼んで、“聞かせる場”を用意したってわけ」
エリは腕を組み、にやりと笑う。
「ま、あとは……
お前ら次第だってよ。」
そう言い残し、二人を置いて立ち去る。
グランとルークは、お互いを一瞥し──
ゆっくりと、決意を固めるように目を細めた。
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