女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第五十一話_ミニとガチ、育つ

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 ビオラ、イクシア、ペリウィンクルの三人はベビーベッドを覗き込んでいる。「あぅあぅ」と言いながら忙しなく手足を動かしているペパーミントが寝転がっていた。「かわい~」と言いながらペリウィンクルが頬をチョンチョンしている。

「ねぇ、イクシア」

「はい、何でしょうお母さま」

「ペパーミント、すごく顔立ち整ってるわね」

「はい。 可愛い寄りの美人顔ですね、ペパーミント」

「うん。それに何だか、ペパーミントの周りがキラキラ輝いているような気がするのよ」

 ペパーミントはまだ赤ん坊ながら既に顔立ちがしっかりしていた。艶のある金髪にクリっと大きな青い瞳。周囲がキラキラと輝いて見えるほどの整った容姿である。とビオラは思っていた。

「いえ、お母さま。気のせいではないですね。 ペパーミントの周囲に輝きのエフェクトが常に掛かってます」

「エフェクト???」

 何のことかと小首を傾げるビオラにイクシアは「いえ冗談です」と真顔で答える。

 ―― いや、エフェクトが何なのか教えて! あとイクシアの冗談は冗談なのか分からいのよぉ……

「お母さま。 このキラキラですが――」

「うん」

「光の精霊ではないでしょうか?」

「………………マジだ!」

 目を凝らしながら全身の感覚を研ぎ澄ませ、キラキラから発する魔力を感じとったビオラは驚いた。

「え? なんで??」

「さぁ? 精霊は基本的に気まぐれですし、ペパーミントの美人顔に寄ってきたとか?」

「そういうもん? にしても、こんなガッツリと目で見えるほどに現れるもんなの??」

「それは何とも…… それでどうしますか、お母さま? 光の精霊に祝福されてる子なんて滅多にいませんが、この子を次代の女王に育てますか?」

 イクシアに問われてビオラはペパーミントを抱き上げたときの感覚を思い出す。明らかに問題児を予感させる感覚を受けたビオラはちょっと引きつった笑顔で「いいえ」とイクシアに答えた。

「ま、まだわたしも若いし、ペパーミントに決めちゃうと次代との間隔が狭すぎるからね。 今後のことも考えると、複数の女王蜂候補がいると派閥争いの危険もあるから……」

 問題児ということは隠してなんやかんやと理由をつけたビオラだが、イクシアは納得したように「確かにそうですね」と頷く。

「ま、まぁそんな感じで…… あ、ペパーミントももうすぐ立ち上がると思うからそろそろ次の卵を産んでおこうかな」

「そうですね、お母さま。 よろしくお願いします」

 しばらくして砂漠に「ふんぬぅっ!」というビオラのいきみ声が響き渡った。



 ビオラたち三人は巣を出ると魔法植物を育てているプランターのほうへと飛んでいく。

「プランターのお世話はペリウィンクルにお願いしています。 時期的にはそろそろ植え替えしていいくらいに育ってると思いますが。 どう? ペリウィンクル」

 三人はイクシアの速度に合わせてゆっくりと飛ぶ。飛びながらイクシアはペリウィンクルに生育の状況を聞いた。

「うん! ばっちり! ミニ世界樹の一株なんか物凄く元気に育ってるよ!」

「……お母さま。嫌な予感はしませんが、それでも不測の事態と思われます」

「奇遇ね、イクシア。 わたしもそんな気がしてきた……」

 笑顔で自信満々に答えたペリウィンクル。何かが起きていると予感を感じたビオラとイクシアは逸る気持ちを抑えてプランターの許へと飛んだ。

「じゃーんっ! どう? お母さん!」

 ペリウィンクルが両手を広げて指し示す六つのプランターには四株のショット大豆、そして二株のミニ世界樹が育っていた。が、そのミニ世界樹のうちの一株が妙に大きい。もう片方のミニ世界樹よりも二回りほど大きく幹や枝葉の艶が違う。

「こ、これは……?!」

 大きいほうのミニ世界樹の苗を見たイクシアは驚きで固まった。

「ガ、ガチ世界樹!!」

「……ガチ?」

 ビオラはイクシアに向かって首を傾げて問う。

「あ、すみません、取り乱しました。 ガチと言ってしまったのは勢いで、本物の世界樹という意味です」

「本物……?」

「はい。 以前お話した通り、ミニ世界樹は本物の世界樹の成り損ないなのです。本物が育つには様々な偶然が重ならないといけないのですが…… まさかこんな事が起こるなんて! ペリウィンクル、お手柄です!」

 ガシッと手を掴まれたペリウィンクルは「わーい! お姉ちゃんに褒められたぁ!」と呑気に喜んでいる。

「お母さま、早速植えましょう! 場所は巣から少し離れた開けた場所がいいですね。成長すると巨大な樹になりますから」

 イクシアはウキウキで世界樹の苗を抱えると巣から離れた砂地に向かい、世界樹を植えるとその周囲にショット大豆も植えた。

「ふぅ…… 世界樹が立派に成長してくれればこの周囲もより豊かになりますね。 歴史上、五本目の世界樹ですよお母さま」

「え? そんなに少ないの?!」

「はい。 しかも原木ともう一本は既に枯れていると本で読みました。現存するのはこれを含めておそらく三本ですね」

「おぅ…… まじかぁ」

 結構大変なことが起こったとビオラは笑顔を引きつらせる。

「もう一本のミニ世界樹のほうですが、今のお花畑の傍に植えましょう。 ミニ世界樹が肥沃にした土壌が今のお花畑と繋がるような感じになるように」

 イクシアの提案どおりにミニ世界樹も植えなおしたビオラは「あれ?」と疑問を口にする。

「静かだと思ったら、いつもお花畑で遊んでるゼフィたちは?」

「ゼフィたちならナナさまから招集を受けて突貫工事中です。 何でもマーゴロックさまの工房を作るとか。 火を扱うため、地下に作ると大変ですので地表の岩盤をくり抜いて作るそうです」

「ふ~ん、そっか」

 また休憩なしで働かされてないだろうかとGPシスターズを心配するビオラだった。
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