女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第五十話_イクシア、拘束される

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 安堵からハァと息を吐いたマーゴロックの許へナナが駆け寄ってきた。

「よくやった! マーゴロックよ」

「いや、俺は何も……」

 そう言ってマーゴロックは首を向けて後ろを振り返る。ビオラが気を失っているイクシアに向かって「イクシアー!」と泣きながら飛んでいく姿が見える。イクシアの周囲にはゼフィたちGPシスターズとペリウィンクルがいた。

「ほら、陛下もあっち行ってやれ」

「うむ」

 ナナが「大丈夫か、イクシアー!」とビオラたちの許へと走って行くのを見送ったマーゴロックは再び大きく息を吐いて、体を投げ出すようにゴロンと寝転がって青空を見上げた。



「おばちゃん大丈夫。イクシアちゃん、気絶してるだけだよ」

 サリスがそう言うとビオラは「よかったぁ……」と言いながらへにゃへにゃと高度を下げて地面に膝を着いた。

「おばちゃん、イクシアちゃんはわたしたちが運んで寝かせるね」

「わたしたちが看てるから!」

ゼフィとビウムの言葉にビオラは「うん、ありがとう。 お願い」と頷く。

「イクシアちゃんをわたしたちのお部屋で看病するぞー!」
「「おーっ!!」」

 ゼフィたちは意識のないイクシアを担ぎ上げるとワァワァ騒がしく地下都市のほうへと走って行った。ペリウィンクルも落ち込んだ様子で運ばれるイクシアに付き添っていく。そこへ、マロニが「ご無事でしたか」と言ってやって来た。

「あ、マロニさん。 ありがとうございます、助けて頂いて」

「いいえ、どうやらあの男はわたしたちを付けて来たようですので。商売敵がわたしの新しい販路を探ってたようです。 こちらこそご迷惑を」

 ビオラがマロニと話始めるとマーゴロックの許へナナがトコトコ歩いて戻ってくる。そしてすぐ近くに転がっているウサギ族の男の首無し死体に近寄ると「何食分かな?」と呟いた。

「なぁ、陛下」

「ん? 何だ、マーゴロック」

「食うのか?」

「うむ。 ビオラの毒が回ってる部分は除くがな」

「そうか……」

 気の良い奴だが地獄蟻だしな。と仕方なく思うマーゴロックはせめてと思ってナナに頼む。

「なぁ、人型の生き物を解体したり食べたりするときは俺たちの見えないところでしてもらえるか?」

「ん? どうしてだ?」

「俺たちの感覚じゃ、同族に近い生き物が食われているような感覚なんだ。地獄蟻の陛下たちには気にならん事なんだろうが」

 マーゴロックの発言を受けてナナは「ふむ……」と言って考え込む。

「なるほど、そういうものか。 だが確かに今後ウサギ族が妾の臣下に加わるかもしれんし、悪いドワーフが襲ってくるかもしれんな。そんなときに同族が食われているのは嫌か……」

「ま、そうだな」

「よし分かった。緊急事態以外では人型のものは食わんことにする。 イグアナとかサソリとかヘビとかはいいんだろ? ウシとかブタとかトリも」

「理解してくれて助かる、陛下。 家畜とかは大丈夫だ。俺も食うしな。 人種や獣人種なんかはやめてくれると助かるぜ」

「うむ」

 ナナが納得して頷いていると、ビオラがブーンと飛んでやって来た。

「おっ、マロニとの話は終わったか?」

「うん。 ありがとう、ナナちゃん。 マーゴロックさんも」

「うむ、ペリウィンクルが呼びに来てくれたのだ。間に合ってよかったぞ」

「そっか。あの子もあとで褒めておかないと。 なんだかちょっと落ち込んでたみたいだし。 ……そうそう、マロニさんが早めに防備を固めることを勧めてくれたわ。今後こういう事が増えるかもって」

「む? そうなのか? 今まで結構平和だったが」

「マロニさんたちの推測だと、今回襲ってきたのは商人に雇われた人みたい。 帰ってこないってなると原因を探るはずだから、遅かれ早かれわたしたちの国の存在が知られちゃうだろうって」

「おぉ! 妾たち、有名人になるのか?!」

「いや、まぁそうなんだけど。 マロニさんみたいな人ばっかりだったらいいのよ。でも、わたしたち妖精蜂は悪い人からするとお金になる生き物なんだよ。作る蜂蜜や魔法植物に価値があるし、わたしたち自身が鑑賞用として高値で取引されるらしいの」

 ビオラの言葉を聞いたナナの顔色がサッと変わる。

「ビオラちゃんを捕まえようとする人がいるの……?」

「うん、そういう人が出て来る可能性が高いって――」

 ナナは奥歯をギリッと噛み、グッと拳に力を入れて叫ぶ。

「絶対させない! ビオラちゃんはわたしが守ってあげる!」

 感情的になったナナに少し驚いたビオラはナナの固く握られた拳を手に取って「ありがとう、ナナちゃん」と礼を言う。

「わたしもナナちゃんたちのこと守るね!」

 感情的になり過ぎて目に涙を溜めていたナナはグシグシと袖で目元拭うと「うむ!」と同意して続ける。

「武器を作れる者が臣下に加わったしな」

 視線を向けられたマーゴロックは「あぁ、任せろ」と寝転がったまま笑って請け負った。




 その頃。

 イクシアは全身を拘束されたかのような息苦しさを覚えてパチリと目が覚めた。彼女はGPシスターズが普段使用している三人並んでも十分な広さのベッドの真ん中に寝かされ、両手両足をGPシスターズそれぞれにガッチリとホールドされ、更にその上にペリウィンクルが覆いかぶさるように乗っかっているという状況であった。

 ホールドしているGPシスターズは疲れたのか大きな鼾をかいて眠っていた。ペリウィンクルからもスゥスゥと寝息が聞こえる。

「…………どういう状況ですか、コレ?」

 言いながら前後の状況を思い返したイクシアは、おそらく必死になって助けてくれたのであろう妹と友達に向かって、眠りを妨げないように「ありがとう、ゼフィ、サリス、ビウム。 ペリウィンクルも」と小声で礼を言った。

「…………でも、重い。 あと鼾うるさい。 ゼフィ、口が血生臭い」
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