女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第五十五話_ペリウィンクル、手料理をふるまう

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 イクシアが花畑にジョウロで水撒きをしていると「ただいま~」とビオラが帰ってきた。

「おかえりなさい、お母さま」

「おかえり、ビオラ様」

 イクシアの隣にはマーゴロックの妻サヤがいる。サヤはビオラたちから肥沃になった土地の一区画を借りて畑を耕していたのだった。

「サヤさん、どう? 何か育ちそう?」

「そうねぇ、まだ耕したところだけど、土はフカフカでとても砂漠の中の土地とは思えないわ。いろいろ植えて試してみるわね」

「そっか、よかったよかった」

 うんうんと頷くビオラに「ビオラ様はどちらにお出掛けだったの?」とサヤが問いかける。

「ナナちゃんのコロッセオだよ。 今日はゼフィたちの腕相撲大会だったんだけど、何故だか途中からわたしとナナちゃんの対戦になっちゃって……」

「まぁ! どちらが勝ったのかしら?」

「当然ナナちゃんだよ~、肉体派だからね。まったく歯が立たなかったよ」

「勝敗はともかく、相変わらずコロッセオの使用方法が迷走してますね、お母さま」

「そうなのよねぇ。ナナちゃんも作ったはいいけど持て余してる感じね」

 イクシアの指摘通り、これまでコロッセオではジャンケン勝負、鬼ごっこ、花いちもんめ、大縄跳び、腕相撲と、いまいちしっくりくる競技が行われていなかった。大きく作り過ぎて完全に持て余し気味である。

「あっ、そうでした。 お母さま、アラディールさまがお見えになってます」

 コロッセオのことは置いておいて、イクシアがアラディールの来訪を思い出してビオラに知らせる。

「そっか、最近よく来るねアラディール」

「はい、ペリウィンクルと随分仲良くなったようで、今もあの子にはアラディールさまのお相手をさせています」

「そう、わかったよ」

「アラディールさまが何かお手伝いしたいと仰ったので二人にはお花畑の手入れをお願いしています」

 ―― 妹には甘いなぁ、イクシア。 ぜったい理由つけて二人を遊ばせてるでしょ。

 自分自身やGPシスターズには厳しいイクシアの別の一面を見てビオラは微笑ましい思いになる。

「二人は岩場の方のお花畑に居ますよ。 お花畑デート中です」

「え? デートなの? え? 二人そんな感じ?」

「に、見えなくもないです、お母さま」

 イクシアの言葉を聞いてビオラはしばし固まる。そして再起動すると「ちょっと、覗いて――」とボソッと言う。するとイクシアは「お母さま!」と少し強い口調で言う。

「だ、ダメだよね。や、やっぱりお邪魔しちゃ――」
「仕事を任せた責任者として、二人の作業状況を確認する必要があります」

 ―― イクシア……??

 キリっとした表情で言うイクシアも二人のことが気になっていたらしい。もっともらしい理由を作るとビオラとイクシアは岩場に向かい、コソッと陰から岩場を覗き見た。

 花畑の近くにある岩にアラディールが一人、腰かけて汗を拭っていた。

「休憩中でしょうか? ペリウィンクルの姿が見えませんね」

 ビオラが「そうだね」とイクシアの言葉に頷いていると、ペリウィンクルが小瓶をかかえてニコニコしながら飛んで戻ってきた。

「アラディール、アラディール!」

「あ、ペリちゃん。 どこ行ってたの?」

「ご苦労さま。 はい、ロイヤルゼリーだよ。アラディール好きでしょ? わたしが作ったの! アラディールに食べて欲しいなぁ」

「えっ、いいの? ありがとう!」

 嬉しそうに小瓶を受け取ったアラディールは瓶に指先を突っ込み、指についたロイヤルゼリーを舐めると「うん、美味しい!」と言ってニコッとペリウィンクルに笑いかける。ペリウィンクルも褒められて嬉しそうである。

 ―― もう彼女やんっ!!

「い、いいいいいイクシア! ぺ、ペリウィンクルがアラディールにてててて手料理を~! ぜ、ゼロ歳九カ月に彼氏はまだ早すぎない??!」

 ビオラが動揺していると、「落ち着いて下さい、お母さま」とイクシアは冷静に母に言う。
 ところで、お腹の中で熟成させて吐き出したものを手料理といっていいのだろうか。見方によってはペリウィンクルはヤンデレ彼女も真っ青なことをしているようにも見えなくもない。

「確かに仕事中にイチャイチャはいけませんが、ですが今は休憩中です。まぁ、問題ないでしょう」

「いや、そうじゃなくてっ!!」

「冗談ですよ、お母さま」

 冗談と言われて脱力し、両手両膝を地面について項垂れるビオラに「ですからデートみたいだと言ったじゃないですか、お母さま」とイクシアは冷静に言う。

 ―― い、イクシア…… あなたの冗談は冗談なのか分からないわ……

「まぁいいじゃないですか。 同種族でしたらツガイになっていたでしょうけど、人間と妖精蜂ですよ。 そもそも、わたしたちに生殖機能はありません」

「そういえばそうね」

「お母さまは博識なために他種族の恋愛事情を参考に心配されたんでしょうけど、ペリウィンクルにとっては仲のいい兄妹みたいな感覚では?」

 ―― 博識って…… 漫画の知識ですけどね。

「そうか、そうよね。 そう思えば微笑ましいものよね」

 ビオラとイクシアは再びペリウィンクルたちの様子を覗き込む。イクシアに兄妹のようだと言われて見ると確かにそのような雰囲気に見えるものである。

 どうやら休憩も終わったようで、アラディールは「ロイヤルゼリーありがとう! 美味しかったよ、ペリちゃん。 さ、もう一息がんばろう!」と作業を再開した。

「作業の進捗も問題なさそうです、お母さま」

「そ、そう? そういえばそんな名目で覗きに来たんだっけ。 じゃあ二人とも楽しそうだし、そっとしておいてあげましょう」

「はい、そうですね、お母さま」

「さっきはちょっと動揺しちゃったけど、よく考えたら二人が幸せなら恋人みたいになってもいい気がしてきたわ」

 ビオラとイクシアはニコッと笑い合ってコッソリその場を後にした。


――――――――――

前回の話のときに載せようとして載せ忘れました。巣の周辺の様子です。

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