女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第六十四話_フロバン(誰だっけ?)、ようやく巣を見つける

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「あったぜぇ…… ようやく見つけた」

 最近市場に出回り始めた望遠鏡を覗き込んだウサギ族の男フロバンはニヤッと笑う。その横でラバは「何が見えるのですか?」と首を傾げた。

「ほれ、見てみろ」

 フロバンがラバに望遠鏡を手渡す。非常に高価なため緊張しながら受け取ったラバは「こ、こうですか?」と言いながら小さいほうの先端を覗き込む。

「緑? この砂漠に? 木と、その周囲に花が咲いてますね」

「そっちじゃねぇ、岩場のほうだ。 岩場の先端に何かくっついてブラさってるだろ?」

「……何かの巣? ……まさか妖精蜂?」

「そのまさか、さ」

 望遠鏡から目を外したラバは顔を歪めて笑うフロバンを見た。

「どうしてこんな砂漠に? 滅多に森の奥深くから出てこない種族なのに」

「さぁな、何か目的があるのか。それとも、よっぽどの馬鹿が女王なのか…… まぁいい、俺達はアレを襲って出来るだけ多くの妖精蜂を捕獲するだけだ」

「それで今回こんな装備なんですね……」

 ラバはそう言って後ろを振り返る。フロバン、ラバと同じように革鎧を身につけ剣や弓など各々得意な武器で武装している者が四人。そして更にその後ろに虫取り網とちょっと大きめの虫カゴを肩から下げた男達が三人いた。革鎧に身を固めた屈強なウサギ族の傭兵が虫取りセットを装備しているのがなんともシュールである。

「それならそうと最初に仰って下さい。 今だから言いますが、指示を受けたときフロバンさんの正気を疑いましたよ」

「どっから情報が洩れるか分からねぇだろ」

「まぁ、そうですね。 ところでフロバンさんは何故ここに妖精蜂の巣があると?」

 ニッと笑ったフロバンは「オニバスの生首さ。 妖精蜂の針で受けた傷があった」と答える。ラバは生首の塩漬けを思い出して「うっ」と声を漏らして嫌な顔をした。

「よし、気付かれないように岩場に回り込んで一気に仕掛ける。 野郎ども、あそこには大金がブンブン羽音を鳴らして飛び回ってるぞ。逃がさず傷つけず、なるべく多く捕獲しろ」

 フロバンが部下達に向かって言うと、部下達もニヤニヤしながら頷く。

「警戒すべきはあの木の周辺の緑だ。攻撃用の魔法植物が植わってる可能性が高い。 だが、見たところその類のものが見えんな…… 噂じゃ、奴らが蜜を採取する花畑や巣の周囲はガチガチに魔法植物で固められてるって話なんだが……?」

「どうします? 念のため燃やしますか?」

 魔法植物を警戒したラバの提案を聞き、フロバンは見下したような表情で「馬鹿か、テメェ」と吐き捨てるように言う。

「そんなことしたら妖精蜂に逃げられるだろうが。奴らは火を怖がる。火や煙を見たら巣を捨てて真っ先に逃げるだろうよ。 巣の中身にだけ用があるなら煙を焚いて追い出せばいいかもしれんが、俺達の目的は妖精蜂そのものだ」

「はっ、すみません」

「それにだ、奴らの育てる植物には価値があるんだ。燃やしてどうする。 もし巣に延焼したらどうする気だ? そうなったら巣に蓄えてる蜜も手に入らんだろうが。副収入まで灰にしてどうするよ」

 叱られて、長い耳を垂れて落ち込むラバにフロバンはスッと近づき小声で言う。

「だがお前の懸念も分かる。だから雇ったやつらを盾に使え。そのために雇ったようなもんだ、気にすんな」

「え…… えぇ……」

「奴らは非力だ。戦い方は貧弱な弓と、ほとんど魔法植物頼りらしい。そんでもって魔力には限りがある。攻撃されたっていつかは止むさ。 行くぞ」

 引きつった笑みを浮かべるラバの背をポンと叩いたフロバンはオアシ巣に向かって歩き出す。フッと小さく鼻で笑い、お前も俺の盾なんだがなと、心の中で呟きながら。



 フロバンの襲撃に気が付いたのはオアシ巣から見て岩場の反対側に設置されているコンポストに花粉を運ぼうとしていたペリウィンクルだった。

 岩場の陰にコソコソと移動する九人の獣人を見つけ、驚いたペリウィンクルは咄嗟に陰に隠れた。幸い、彼女はフロバンたちに見つかることはなかったようである。

 コソコソと世界樹のある花畑やオアシ巣を伺う獣人たちを確認したペリウィンクルは持っていた花粉を投げ捨てて一目散に世界樹の花畑で作業していたビオラの許へと飛んでいった。

「お母さん! 変な奴らがいる!」

 慌てた様子のペリウィンクルが岩場のほうを指さして叫ぶと、ビオラは「イクシア、戦闘準備!」と隣にいたイクシアに声をかけ、ペリウィンクルには「ナナちゃんに知らせて来て!」と指示を出すと武器を取りにビオラ自身はオアシ巣に向かって全力で飛んだ。

 ペリウィンクルは地下都市のほうへと駆けるように飛び。イクシアも遅れてオアシ巣に向かって飛ぶ。しかしやはり、イクシアはあまりスピードは出せない。

 様子を伺っていたフロバンは「ちっ、気付かれた!」と舌打ちし、「行くぞ!」と言うと岩場を飛び出す。続いて部下達が飛び出すのを確認すると、フロバンはやや速度を落として部下達を先行させた。

 世界樹の花畑に近づくと、花々の中に隠れるように植えられていた四株のショット大豆が一斉に豆を噴いた。先頭にいた部下が不意の直撃を食らって苦痛の声とともに体を傾ける。しかし着込んでいた革鎧のおかげもあって重傷という程ではないようだ。バランスを崩した男であったが、しっかりと踏ん張って倒れることはなかった。

 本来、大きな妖精蜂の巣であればテリトリーを囲むように植えられた魔法植物によって飽和攻撃を受けることになっていただろう。しかし、たった四株のショット大豆では防具で身を固めた獣人一人に膝を着かせることも出来なかったのだった。

 それを見てフロバンは、イケるとほくそ笑むのだった。
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