女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第七十二話_ビオラ、いけない妄想をする

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 地面に魔力が染み込み終わるのを見終わったビオラはクルリと振り返る。

「さ、日も暮れたし解散かな。みんなお疲れさま。 アラディールもありがとね」

「うん、でも埋葬の手伝いだけで…… そんな大変なことになってたの知らなかったよ…… 出来れば僕も、みんなを守りたかったな」

「ありがとう、気持ちは嬉しいけど、アラディールは体弱いんだし無茶なこと考えちゃダメだよ」

 ニコッと笑ったビオラにそう言われ、アラディールはちょっとだけ不服そうに口を尖らせながら「うん」と答える。そのアラディールの頭上にブーンと飛んできたペリウィンクルがまるで定位置だといわんばかりにチョコンと座った。

「もう夜だけど、アラディールはどうするの? 泊ってく?」

「うん、そうだね。その辺の岩場とかで――」

 寝床となりそうな場所を目で探しながら言うアラディールに、「うむ、それなら」とナナが提案する。

「アラディールよ、妾の地下都市に泊っていくといい」

「え、いいの?」

「うむ。 アラディール用の屋敷も建築済みである」

 ―― なぜ……?

 何故に移住の予定もないアラディールの屋敷が用意されているのだろうとビオラは疑問に思うが、当のアラディールは「ホント!? ありがとう、ナナちゃん!」と素直に喜んでいた。

「では案内するぞ、付いて来いアラディール」

「うん!」

「お母さん、アラディールのお家みてくるね~」

「うん、いってらっしゃ~い」

 ナナに案内されるアラディールの頭の上からペリウィンクルが手を振る。ナナの娘たちとマーゴロック夫婦もぞろぞろと後を付いて地下都市へと帰って行った。

 アラディールが案内されたのはナナの屋敷があるパラティーノの丘にあった。屋敷といっても人間用の小さな一軒家程度のものである。表札にはナナが覚えたての文字で『あらでぃ~る』と書いていた。

「わぁ! ここ、僕の家?!」

「うむ。 存分に使うがよい。家具は妾が岩で作ったベッドとテーブルと椅子くらいしかないが、他に何か欲しければマーゴロックがいろいろと作ってくれるぞ」

 喜ぶアラディールに満足してナナが調子のいいことを言うと、サラッと仕事を増やされたマーゴロックがアラディールに聞こえないように小さな声で「おいこらっ!」とナナに注意を飛ばす。

 アラディールは興奮して屋敷に飛び込んでいった。



 一方そのころビオラたちである。
 ビオラ、イクシア、ペパーミントはビオラの部屋に集まって蜂蜜を吸って一服していた。

「ふぅ、疲れたねぇ」

「お疲れさまです、お母さま」

「おつかれ~」

 一息ついたビオラはチラッとベビーベッドの上の卵を見て言う。

「もうすぐかな? 家族団らんのときはこの部屋に集まってたけど、この子が産まれたらこの部屋も手狭になっちゃうね」

「そうですね、今でもペリウィンクルが戻ってきたら結構キツキツになりそうです」

 妖精蜂の巣の一部屋一部屋はそれ程大きくないため、ベッドとベビーベッドが二つ、テーブルと椅子が人数分あるビオラの部屋はいっぱいいっぱいであった。

「う~ん…… 壁を取っ払って部屋を何個か繋げる感じで大部屋とか作ってみる?」

「いいですね、お母さま。 家族みんなで集まれる食堂のような部屋なんてどうでしょう?」

「いいね、楽しくお喋りしながらご飯食べて。うん、そうしよう!」

「かしこまりました、お母さま。 では明日から作業に取り掛かろうと思います。あっ、そうでした。先ほどマーゴロックさまとお話ししたのですが、明日の朝にセナナートゥスに全員集まって防衛について話をすることにしました」

「おっ、そうなんだ。 じゃあそろそろお開きにして、明日に備えて今日は早めに寝ましょうか」

「そうですね。 ペパーミント、お片付けして寝ましょう」

「は~い!」

 テーブルの上の空き瓶を片付け始めたイクシアとペパーミントを見つつ、ビオラはふと気が付く。

「…………ペリウィンクル、遅くない?」

「そういえばそうですね、お泊りでしょうか?」

 さらりと返された言葉に電撃が走るようなショックを受けたビオラは「おっ、お泊りっ!!」と悲鳴に似た叫びをあげる。瞬間、甘い台詞を囁くアラディールに抱かれるペリウィンクルの恥じらう姿がビオラの脳裏に浮かぶ。

「あかーーんっ!!! い、いいいいいイクシアぁ! ぺぺぺぺぺペリウィンクルがああああアラディールに押し倒されてぇーーっ!! あげなことやそげなことをーーっ!!」

「落ち着いて下さい、お母さま。冗談です。 想像力豊かなのはお母さまの良いところかと思いますが、二人のサイズ感がおかしいですよ、お母さま」

 ビオラの脳内を覗いたわけでもないのに、正確にビオラの想像を察したイクシアは冷静に母の間違いを指摘する。恋愛漫画のワンシーンにアラディールとペリウィンクルの姿を当てはめたビオラは脳内で二人のサイズを同じにしていた。

「ねぇねぇ、イク姉ぇ。ママどうしちゃったの?」

「大丈夫よ、ペパーミント。 娘可愛さ故、なので問題ありません。むしろこれほどまでに我が子を心配して下さるお母さまの優しさを嬉しく思いましょう。 さ、お片付けを続けて」

「は~い」

 涙目で頭を抱えながら部屋中をブンブン飛び回る母親を気にすることなくイクシアとペパーミントが空き瓶を片付けてテーブルを布巾で拭く。そうしていると「ただいま~」とペリウィンクルが帰って来た。

「よかったぁ~! おかえりぃ~、ペリウィンクルぅ~」

 帰ってくるなり半泣きの母親に取りすがられたペリウィンクルは「え?! な、なに、お母さん??」と混乱した。
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