女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第七十七話_アラディール、絶好調

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 猛スピードで砂漠を爆走するアラディール。「「おわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」とビオラとマーゴロックが叫び声をあげているが、ナナとペリウィンクルはジェットコースター気分で「「わぁっ!」」と楽しそうである。サヤは早々に諦めて背負子の持ち手を掴むことに集中していた。

「ア、アラディールくん! は、速いっ! 速いって!」

「え? そう? マーゴロックさんたち抱えてるからいつもより遅いよ」

「うそ~ん……」

「ごめんねぇ、だから二時間じゃ着かないや。 たぶんだけど、四時間弱くらいかなぁ?」

「……うん、そっか」

 猛スピードで走りながらも全く息を切らせることなく普通に会話をしているアラディールに驚きつつ、ビオラは冷や汗をかく。

 ―― ロイヤルゼリーのせいじゃないよね……?

 遊びに来るたびに、おやつとしてロイヤルゼリーを与えていたビオラ。更にはペリウィンクルが手料理と称して食べさせていた模様。

 知らず知らずのうちに超人に育てられていたアラディール。そして彼自身はその異常性に気が付いていなかった。なにせ、一番身近な人間がナチュラルに超人の祖母である。この程度普通、というか自分はまだまだだとアラディールは思っていた。



 それから二時間ほど走ったところで、遠く前方の砂丘がモゾモゾと動くのが見えた。

 ―― なんだろう?

 ビオラが疑問に思っていると前方の砂丘から大きな砂煙が上がり、体長三メートルを超える巨大なミミズのような魔物が姿を現した。

「サ、サンドワーム!」

 マーゴロックが焦った声で叫ぶ。しかしアラディールは平気そうな声で「うん、最近住みついたみたいで、この辺りはあの子の縄張りなんだ~」と気の抜けた返事をする。

 サンドワームは鋭い歯が円状に奥まで並んでいる大きな口を開けて、走ってくるアラディールを待ち構えている。

「アラディール! 危ねぇっ!」

「大丈夫だよ」

 マーゴロックの悲鳴に平然と返したアラディールはスピードを落とすことなくサンドワームに近づき、直前でわずかに速度を落とすと「ちょっとどいてね」と言いながらステップを踏んで素早くサンドワームの側面に回り込む。

「えいっ」

 まったく気合の入ってない声でアラディールが蹴りを繰り出すと、三メートル超えのサンドワームは数メートルも宙を舞い、その隙にアラディールは走る速度をもとに戻して走り去った。



 更に二時間弱、距離を考えればあっという間に一行はスカプキン村に到着した。

 アラディールは息も切らせずケロッとしているが、その横でマーゴロックとビオラはぐったりしている。サヤは終始後ろ向きだったためにサンドワームも見ておらず、ただ運ばれていただけなので平気そうである。ペリウィンクルは楽しかったようでキャッキャッ言いながらアラディールの周囲をブンブン飛び回っていた。

 ぐったりしているビオラにナナが近づいて来てボソッと言う。

「ビオラよ。 ロイヤルゼリー……」

「言わないで、ナナちゃん……」

 こういう時だけ妙に勘の良いナナであった。

「さてと、じゃあ挨拶に行くか。 アラディール、すまねぇが案内してくれるか」

「うん、こっちだよ」

 立ち直ったマーゴロックはサヤ、ペリウィンクルと共にアラディールに案内されて家の中に入って行った。

「妾たちはどうする?」

「う~ん、そうだね。 マーゴロックさんたちは色々と話があるだろうし、わたしたちは後で合流すればいいかな? 散歩でもする?」

「うむ、よいな。そうしよう!」

 嬉しそうにナナは頷き、二人は並んで小さな村の中を見て回ることにした。特に目的もなくウロウロしていると村人と出会うことがある。
 大人たちはナナの姿を見ると一様に「うわぁっ! 地獄蟻?!」と驚き構えるが、隣にいるビオラを見ると「あっ!」といった表情をする。

「もしかしてビオラちゃんとナナちゃん?」

「うむ、そうである。 もしかして妾たち有名人?」

「あぁ、アラディールがよく君たちの話をしてるからね」

 村人のうち親し気な一人がそう言いながらビオラたちに視線を近づけようとしゃがむ。

「ありがとう、君たちのおかげだよ、アラディールが元気になったのは。 昔は病気がちでね、あんまり外で遊んだりもしなかったんだ。 頻繁に遠出してまで遊びに行くなんて、ちょっと前までは考えられなかったよ」

 小さな、親戚が集まって出来たような村である。村人はアラディールが元気になったことが本当に嬉しいようで、ビオラとナナに笑顔で感謝を伝える。

「うむ、妾たちもアラディールと一緒は楽しいぞ! だから気にすることはない。当然のことをしたまでだ」

「うん、ナナちゃんの言う通りだよ。 アラディールは色々とお手伝いもしてくれるからお互い様だよ」

「そうか、ありがとう。 アラディールの言う通りだ」

「む? アラディールが何か言っていたのか?」

「あぁ。 地獄蟻は恐ろしい生き物だけど、ナナちゃんは違うってね。可愛くて優しくてちょっと抜けてる、良い地獄蟻だってね」

「むぅっ! 可愛いとは、アラディールのやつめ! 妾は美しく高貴なのだぞ!」

 そう言いつつもナナは嬉しそうに体をくねくねさせる。「はははっ」と笑った村人は立ち上がると「じゃあね。 何もない村だけど、ゆっくりして行ってくれ」と立ち去って行った。

「よかったね、ナナちゃん」

「む、ビオラこそ。 アラディールが元気になったのはビオラとロイヤルゼリーのおかげだろう? 元気になりすぎではあるが」

「……うん、まぁ。 美味しそうに食べるからさ、こんなことになるとは思わなかったし、ちょっと加減を間違えた感はあるけど。 今後はちょっと控えようと思います。 でもさ、ロイヤルゼリーだけでああなるとは思わないんだよね。絶対オババの遺伝だってぇ」

 ポリポリと頭を掻きながらビオラが反省する。

「潜在能力みたいなものを引き出したのかもな。 だが今更控えたところでもう手遅れな気がするが………… ふむ、日も暮れて来たし、そろそろアラディールの家に行くか?」

「そうだね」

 小さな村を一通り見て回った二人は、マーゴロックたちと合流するためにアラディールの家へと向かった。
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