女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第八十八話_迷子、母の許へ帰る

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 ペパーミントとガーベラのやらかしについての一騒動が落ち着いてビオラたちが巣に戻ると、彼女たちは空になっているベビーベッドを前に蒼白となった。

「グラジオラス! どこ行っちゃったの??!」

「お母さま! 捜索隊の結成を!」

「隊を結成できるほどウチに人員がいないよイクシア! とにかく全員で手当たり次第探すよ!」

 何かとパニックになりがちなビオラと一緒に、珍しくパニックになっているイクシアに、ペリウィンクルは「ナナおばちゃんのトコに行ってくる!」と言って飛び立っていった。

 その後、マーゴロックや身重のサヤまで巻き込んでの大捜索を行った一同だが、遠くから世界樹に向かって飛んでくるグラジオラスの姿が発見されると全員がホッと安心してへたり込んだ。

「もう、グラジオラス。どこ行ってたの?」

 ビオラが「おかぁたん!」と嬉しそうに飛び込んできた娘に問いかけると、コテっと首を傾げながら「おばちゃんとこ」とグラジオラスは答える。

「おばちゃん? ナナちゃんとこかな? サヤさんのとこ?」

「妾のとこには来てないぞ」

「わたしのところもです、ビオラ様」

「……じゃあどこだろ? まぁでも無事でよかったよ。 みんなごめんね、ありがとう」

 探してくれた全員を見渡しながらビオラが礼を言うと、「うむ、問題ない。見つかってよかったな」とナナが返す。

「しかしお母さま、次の子からは常に誰かが見ていた方がいいですね」

「そうだね。 今まで花畑の水やり、雑草取り、蜜採取とか魔法植物の世話とか、色々と仕事が忙しくて大人しくしてるときはベッドに寝かせてほったらかしにしてたときも多かったからねぇ。 次からは誰かが見てるようにしようか」

「そうですね。 ところでお母さま、次の卵は産まないのでしょうか?」

 イクシアの質問を受けてビオラは「そうだね、最近色々あって忘れてたよ」と言ってポリポリと頭を掻く。

「ビオランド王国とスーパーアルティメット・ナナチャン大帝国…… 長げぇ…… の防衛を考えると人員強化も大事よね」

「そうですね。両国の…… ビナ連の防備のためにも人員強化は急務ですね」

 ―― ビナ連?!! ビオランド・ナナチャン連合国の略か?!

「うむ。 そうであれば妾もビナ連の防衛の為にもそろそろ産んでおこうかな」

 ―― ナナちゃんもサラっとビナ連使ってる!?

「ウチも子供が産まれるが、ドワーフは成長が遅いからな。 俺達は色んなもんの生産でビナ連に貢献しようと思う。地獄蟻の子供が産まれりゃ、また食費が嵩みそうだしな」

「そうね、出来れば自給率をあげたいですね。 将来的には畑を広げて、出来ればビナ連の中で牧畜なんかも出来るようにしたいわ。 もちろん、ビオラ様の許可がもらえればですけど」

 マーゴロックとサヤ夫妻が将来の展望を語る中、ビオラは思う。

 ―― ビナ連が定着した!!?

「う、うん。もちろん緑地化した部分の利用は大丈夫だよ。 家畜が雑草食べてくれれば助かるし。花ごといきそうだけど、ちょっとくらいは平気だし」

「そうか、ありがてぇ。じゃあ今度、嬢ちゃんが来たときに相談してみるわ」

 こうして、グラジオラスの迷子騒動から発展し、いつの間にかビナ連が定着して国の将来について軽く話し合った集まりは散開した。
 そしてその数日後、ビオラにとっては思いもよらない訪問者がやって来たのだった。



「お母さま、お客様がお見えです」

 ビオラの部屋に顔を出しながらイクシアが言った。ちょうど産卵のために踏ん張っていたビオラは「お客様? マロニさん?」と問いかけ、股からコロンと卵をベッドに落とす。イクシアは「いいえ」と首を振った。

「リナムさまという妖精蜂の方です」

「えっ、リナムお姉ちゃん?!」

「お姉ちゃんと言いますと、わたしにとっては叔母さまに当たる方ということでしょうか?」

「うん、リナムお姉ちゃんは実家で一番仲が良かったお姉ちゃんだね。 分かった、すぐ行くよ」

 ビオラは部屋を出ると、巣の下で待っていたリナムの許へと降り立った。

「久しぶりね、ビオラ。元気だった?」

「うん、久しぶり。 わたしは見ての通り元気だよ。お姉ちゃんも元気だった? お母さんも元気かな?」

 実家を追い出されたビオラだったが、二人の間には特にわだかまりもなく、二人とも穏やかな笑顔で挨拶をする。

「そのことでね。 知らせようか、迷ったんだけど――」

 目を伏せながら一度言葉を切ったリナムは、顔を上げてビオラを見ると口を開く。

「お母さん、精霊たちに祝福されて大地に還られたわ」

「えっ?!」

 目を見開きショックを受けて固まるビオラの様子を見て、リナムは少しだけホッとする。

「十日前のことよ。 ねぇビオラ、二人だけで話せないかな?」

 リナムがそう言うと、気を利かせたイクシアが「客室を準備してきます」と言って飛び立った。

「そう…… お母さんが……」

 悲しそうな顔で呟いたビオラは眼に涙を溜めてリナムに顔を向ける。

「ありがとう、お姉ちゃん。 知らせてくれて」

「うん、お母さんの最期について、ちょっと話をさせてくれないかな」

「うん、聞かせて。 客間に案内するね」

 そう言うと、ビオラはリナムを連れてオアシ巣に向かって飛んだ。
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