女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第七話_ビオラ、お買い物する

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 貿易商のプリムラは他の働き蜂よりも体が大きかった。どうやら途中までロイヤルゼリーを与えられて育てられたようで、十分なロイヤルゼリーを与えられて育ったはずなのに体の小さいビオラとほぼ同サイズであった。

 プリムラはビオラに案内された場所に降り立ち、岩場から張り出した岩にぶら下がるビオラの巣を見上げる。

「えっと…… 立派な巣ですね。なんと言いますか、陽の光を反射して輝いているというか何というか」

 ―― 気を使われたっ!!

 ビオラはちょっとヘコんだ。

「受け入れて頂いてありがとうございます、ビオラ様。 ところで、何か御入用なものはございますか?」

 ニコリと笑顔で問われたビオラは「そうですね~」と腕を組んで考える。

「やっぱり食料ですね。それと布が欲しいです」

「なるほど、食料と布ですね。 どれくらい御入用で?」

 どれくらい、と言われてビオラは困ってしまう。あればあるほどいいに決まっているのだが、問題は。

 ―― お金がないっ!!

 そう、ビオラは無一文である。追放時の物資の中に貨幣のたぐいは一切入っていなかった。そこでビオラはプリムラに提案する。

「あの、物々交換とかでもいいですか?」

「えぇ、もちろんです。 交換だけでなく不用品があれば現金でも買い取りますけど?」

「ホ、ホントですか?!」

「もちろんです。商売ですもの」

「じゃ、じゃあちょっとこっちへ!」

 ビオラはプリムラの手を引いて飛ぶ。向かったのは巨大な木箱である。

「薬草って売れますか? 結構な量があるんですけど」

「売れますよ。妖精蜂の育てた薬草は効能も高くて他種族に人気ですから。 それにしても凄い量ですね。 どうです? 半分くらい売って頂けますか? それでもお一人で使う分には多そうですが」

「はい、それでOKです」

 ビオラの了承を得るとプリムラは「まいどありです」とニコッと笑顔で礼を言ってプリムラ配下の働き蜂たちに声をかける。

「お~い! 運び出しと計量おねがい」

「「は~い!」」

 働き蜂たちが飛んできて薬草を運び出し、プリムラはソロバンを取り出してパチパチと弾きながら働き蜂たちに指示を出し始める。

「ビオラ様。 お売りできる食料ですが蜂蜜でよろしいでしょうか? 花粉団子は栄養価の面や携帯性から我々の食料として必要ですので」

「あ、はい、大丈夫です」

「それでしたら我々の旅で必要な量と予備を除いたすべてお売りできます。 それと布も今回持って来ている量自体がそれほどないので全てお売りできます。 初回のお近づきの印として割引しますと、差額はこれくらいです。銀貨二十枚ってところですかね」

「おぉ!」

 ビオラ、初めての現金収入である。ビオラの目の前で木箱の中に布と瓶詰された蜂蜜、そして銀貨が納入されていく。

「ありがとうございます、プリムラさん!」

「いえいえ、こちらこそ良い商売をさせて頂きました。 ありがとうございます、ビオラ様」

 笑顔で握手を交わす二人。そしてプリムラは「それにしても――」と言うとミニ世界樹のほうへと飛んでいく。

「素晴らしい! 砂漠でミニ世界樹が育つとは! 大発見ではありませんか、ビオラ様?!」

「えっ!? あ、あぁ、うん…… うん?」

「なるほど! これこそが荒地での妖精蜂の可能性なのですね?! わたし、これほど感動したことはございません!!」

「え? えぇっと……」

 ―― なに言ってんだろ??

 感極まった表情でガシッと固く手を握られてビオラは困惑する。

「ビオラ様の高く尊い挑戦! わたし、陰ながらご支援させて頂きます!」

「は、はぁ…… はい」

 眼に涙さえ溜めるプリムラの熱量にビオラはちょっと引いていた。

「それでは、我々はこのあたりで。 もっと研究成果などのお話を聞いてみたいところですが邪魔しても悪いので失礼させていただきます」

「う、うん……?」

 プリムラは部下たちにテキパキと移動の指示を与え始める。指示を与え終えるとクルっとビオラに向かって振り返ると問いかける。

「そういえばビオラ様。 こちらの国名と巣の名前は何とお呼びすればよろしいでしょうか?」

「ん? あ、巣の名前かぁ……」

 ―― そういえば考えてなかったなぁ。

「国名とかは、まだちょっと…… なにせまだ一人なので。 国というにはちょっとね」

「そうですね。お子様ができてからですね。 では、我々はこれで。ちょくちょく寄らせて頂こうと思いますのでよろしくお願いします」

「こんな何もない砂漠にですか?」

「えぇ、砂漠の真ん中に休憩させてもらえる同族の巣があるというだけで我々商人としては非常に助かるのですよ。 それに、これからビオラ様がこの地を豊かにさせていくのでしょう?」

 豊かにさせていくと言われて、まぁ確かにそうかと思うビオラは「えぇまぁ、そうですね」と答える。このまま砂地ばかりの地では生活していけないのだから。

「それでは。 応援しております」

 プリムラはそう言い残し飛び立っていった。
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