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第八話_お隣さん、お怒り
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プリムラを見送ったビオラは思う。
―― 休憩所か。それもいいな。
久しぶりに人と話して寂しさが紛れたビオラは楽しかったのだった。
「お客さんが泊まれる部屋とか、くつろげるスペースとかあってもいいかもね」
空中をスキップするかのように飛び回ったビオラは日が暮れていたこともあって部屋に戻り寝ることにした。
翌朝。目が覚めてビオラはググっと背伸びをする。
「体が痛い…… 床に寝るのは辛いわ。 でもそれも今日でおしまいね。布は手に入ったし、これでお布団作れるぞー!」
生活改善の期待にテンションの上がるビオラ。
「でもその前にまずは蜜採取ね。 今日はもう取れるはず」
ウキウキで外に出たビオラだったが、その彼女の前に絶望の光景が広がった。小さな花畑としてもよい一帯が荒らされていたのだった。
「きぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
今まで出したことのない声でビオラは叫んだ。「な、なんで? えっ、ちょ! なんでぇぇっ!!」とうろたえるビオラの視線にモシャモシャと育った花を食べているイグアナが映る。「お前か、こらぁっ!!」と声を張り上げるビオラとイグアナのパッチリお目々がバッチリ合った。
パチンッとウィンクするイグアナにイラっとしたビオラは小石を拾いあげると思いっきり投げつける。
「あっち行けー!」
飛んでいった小石は放物線を描き、イグアナにペチンッと当たる。だが非力なビオラである、イグアナにはたいした痛みはなかった。
しかし、ビオラが攻撃したことによってショット大豆が反応する。ビオラの敵意を感じ取ったショット大豆が銃口(花弁)をイグアナに向けて一斉に豆を吹き出した。瞬間、イグアナの頭がごっそりと吹き飛ぶ。
「あぁ…… せっかくのお花が…… ようやく育ったと思ったのに……」
涙を溜めながら肩を落とし、ひょろひょろと高度を下げてビオラは膝を着く。そんな彼女に向かって「コラーッ! うるさーいっ!!」怒鳴る声が聞こえた。
ビオラが振り向いてみると、ちょっと離れた場所にビオラと同じくらいの身長の、オーバーオールっぽい服を着た女の子が両手を腰に当てて立っていた。
「最近うるさいと思ったら! 妾の領土に勝手に巣を作ってるとは。 お前、妖精蜂だな!」
「えっ?! りょ、領土?!」
「そうだ、この周辺一帯は妾の領土! スーパー真・大・地獄蟻大帝国の領土だぞ!」
「ス、スーパー……! え、なに? なに大帝国??」
「スーパー真・大・地獄蟻大帝国だ! 妾はスーパー真・大・地獄蟻大帝国の女王、ES-077である!」
得意げに胸を張って威張る女の子をしばし見つめてビオラは思う。
―― 帝国なのに女王??
「……えっと、ごめんなさい。 挨拶が遅れましたが隣に引っ越してきた妖精蜂のビオラです」
「いや、引っ越してきたじゃないでしょ! 妾の領土だって言ってるじゃないっ! ここは妾と、妾のお友達しか住んじゃダメなのっ!!」
ES-077と名乗った、茶色のショートカットの髪に触覚の生えた女の子は地団太を踏んでプンスコ怒っている。
「え~っと、わたしがここに来たとき誰も居なかったよ。 数日間誰も来なかったし文句も言われなかったし」
「だから今、妾が気づいたの!」
「そ、そっか。 ご、ごめんなさい。でも砂漠に大帝国があるなんて聞いたことなくて」
「そ、それは…… えっと……」
ES-077はスッと視線を逸らせる。
「……ねぇ、その大帝国っていつ頃建国されたの?」
ビオラに問われてES-077はボソッと「に、二か月前…… くらい、かな?」と言う。
「……その大帝国は何人くらい住んでるの?」
「わ、妾一人…… かな?」
「自称じゃん」
「う、うるさいっ! 妾が二か月前に『この周辺は妾の領土である』と叫んだのだ! だからここは妾の領土である! さぁ、侵略者よ、覚悟せ――」
勢いよく捲し立てていたES-077のお腹が突然大きくグゥゥッと鳴った。そして「――よ」と言い残してパタリとES-077は倒れる。
「あの~、地獄蟻さんですよね?」
そう言いながらビオラは倒れたES-077の頬っぺをツンツンする。
ビオラが言う地獄蟻とは種族名である。ES-077は触覚のほかにもお尻の上あたりからは通常の蟻でいうところの腹部が大きく突き出ている特徴がある。
彼女らは蟻の性質をもつ人型の種族である。女王を中心として働き蟻たちが仕事をするという、妖精蜂と似たような社会を形成する種族なのだが妖精蜂と比べるとかなり戦闘的な種族である。
妖精蜂と違うのは、戦闘的というのもあって女王以外の命にはまったく頓着しないところである。巣と女王のためにはその他は捨て駒というのは妖精蜂も一応そうではあるが、地獄蟻はよりその傾向が強い。そのためか産まれてくる蟻たちは個人名というより型番のように無機質に呼称される。
「……なんか食べさせて」
「え~っと、人間の風習で引っ越し蕎麦ってのがあるって聞いたことあるんですけど、蕎麦がないので引っ越し蜂蜜でいいですか?」
「は、蜂蜜なんかいらん。いや、蜂蜜も貰えるなら欲しいんだけど、それよりアレちょうだい」
ES-077は視線でイグアナの死体を指し示す。その彼女の視線の先を追ったビオラは言う。
「じゃあ、引っ越しイグアナってことで。 引っ越し認めてくれる? あ、そういえばお友達なら住んでいいんだっけ? じゃ、お友達ってことで」
ビオラがそう言うと一瞬だけES-077の顔が喜びでパッと明るくなる。しかしその後すぐ、再びグゥゥッと腹の音が鳴ると切羽詰まった様子になる。
「み、認める。認めてやるから、早くちょうだい。 げ、限界なのぉ……」
ビオラはイグアナのもとに飛び、死体をズルズルと引きずってES-077のところに持って来てあげた。
「あ、ありがとう! た、助かった……」
ちゃんとお礼を言ったES-077は泣きそうになりながらイグアナの死体にかぶりついた。
―― 休憩所か。それもいいな。
久しぶりに人と話して寂しさが紛れたビオラは楽しかったのだった。
「お客さんが泊まれる部屋とか、くつろげるスペースとかあってもいいかもね」
空中をスキップするかのように飛び回ったビオラは日が暮れていたこともあって部屋に戻り寝ることにした。
翌朝。目が覚めてビオラはググっと背伸びをする。
「体が痛い…… 床に寝るのは辛いわ。 でもそれも今日でおしまいね。布は手に入ったし、これでお布団作れるぞー!」
生活改善の期待にテンションの上がるビオラ。
「でもその前にまずは蜜採取ね。 今日はもう取れるはず」
ウキウキで外に出たビオラだったが、その彼女の前に絶望の光景が広がった。小さな花畑としてもよい一帯が荒らされていたのだった。
「きぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
今まで出したことのない声でビオラは叫んだ。「な、なんで? えっ、ちょ! なんでぇぇっ!!」とうろたえるビオラの視線にモシャモシャと育った花を食べているイグアナが映る。「お前か、こらぁっ!!」と声を張り上げるビオラとイグアナのパッチリお目々がバッチリ合った。
パチンッとウィンクするイグアナにイラっとしたビオラは小石を拾いあげると思いっきり投げつける。
「あっち行けー!」
飛んでいった小石は放物線を描き、イグアナにペチンッと当たる。だが非力なビオラである、イグアナにはたいした痛みはなかった。
しかし、ビオラが攻撃したことによってショット大豆が反応する。ビオラの敵意を感じ取ったショット大豆が銃口(花弁)をイグアナに向けて一斉に豆を吹き出した。瞬間、イグアナの頭がごっそりと吹き飛ぶ。
「あぁ…… せっかくのお花が…… ようやく育ったと思ったのに……」
涙を溜めながら肩を落とし、ひょろひょろと高度を下げてビオラは膝を着く。そんな彼女に向かって「コラーッ! うるさーいっ!!」怒鳴る声が聞こえた。
ビオラが振り向いてみると、ちょっと離れた場所にビオラと同じくらいの身長の、オーバーオールっぽい服を着た女の子が両手を腰に当てて立っていた。
「最近うるさいと思ったら! 妾の領土に勝手に巣を作ってるとは。 お前、妖精蜂だな!」
「えっ?! りょ、領土?!」
「そうだ、この周辺一帯は妾の領土! スーパー真・大・地獄蟻大帝国の領土だぞ!」
「ス、スーパー……! え、なに? なに大帝国??」
「スーパー真・大・地獄蟻大帝国だ! 妾はスーパー真・大・地獄蟻大帝国の女王、ES-077である!」
得意げに胸を張って威張る女の子をしばし見つめてビオラは思う。
―― 帝国なのに女王??
「……えっと、ごめんなさい。 挨拶が遅れましたが隣に引っ越してきた妖精蜂のビオラです」
「いや、引っ越してきたじゃないでしょ! 妾の領土だって言ってるじゃないっ! ここは妾と、妾のお友達しか住んじゃダメなのっ!!」
ES-077と名乗った、茶色のショートカットの髪に触覚の生えた女の子は地団太を踏んでプンスコ怒っている。
「え~っと、わたしがここに来たとき誰も居なかったよ。 数日間誰も来なかったし文句も言われなかったし」
「だから今、妾が気づいたの!」
「そ、そっか。 ご、ごめんなさい。でも砂漠に大帝国があるなんて聞いたことなくて」
「そ、それは…… えっと……」
ES-077はスッと視線を逸らせる。
「……ねぇ、その大帝国っていつ頃建国されたの?」
ビオラに問われてES-077はボソッと「に、二か月前…… くらい、かな?」と言う。
「……その大帝国は何人くらい住んでるの?」
「わ、妾一人…… かな?」
「自称じゃん」
「う、うるさいっ! 妾が二か月前に『この周辺は妾の領土である』と叫んだのだ! だからここは妾の領土である! さぁ、侵略者よ、覚悟せ――」
勢いよく捲し立てていたES-077のお腹が突然大きくグゥゥッと鳴った。そして「――よ」と言い残してパタリとES-077は倒れる。
「あの~、地獄蟻さんですよね?」
そう言いながらビオラは倒れたES-077の頬っぺをツンツンする。
ビオラが言う地獄蟻とは種族名である。ES-077は触覚のほかにもお尻の上あたりからは通常の蟻でいうところの腹部が大きく突き出ている特徴がある。
彼女らは蟻の性質をもつ人型の種族である。女王を中心として働き蟻たちが仕事をするという、妖精蜂と似たような社会を形成する種族なのだが妖精蜂と比べるとかなり戦闘的な種族である。
妖精蜂と違うのは、戦闘的というのもあって女王以外の命にはまったく頓着しないところである。巣と女王のためにはその他は捨て駒というのは妖精蜂も一応そうではあるが、地獄蟻はよりその傾向が強い。そのためか産まれてくる蟻たちは個人名というより型番のように無機質に呼称される。
「……なんか食べさせて」
「え~っと、人間の風習で引っ越し蕎麦ってのがあるって聞いたことあるんですけど、蕎麦がないので引っ越し蜂蜜でいいですか?」
「は、蜂蜜なんかいらん。いや、蜂蜜も貰えるなら欲しいんだけど、それよりアレちょうだい」
ES-077は視線でイグアナの死体を指し示す。その彼女の視線の先を追ったビオラは言う。
「じゃあ、引っ越しイグアナってことで。 引っ越し認めてくれる? あ、そういえばお友達なら住んでいいんだっけ? じゃ、お友達ってことで」
ビオラがそう言うと一瞬だけES-077の顔が喜びでパッと明るくなる。しかしその後すぐ、再びグゥゥッと腹の音が鳴ると切羽詰まった様子になる。
「み、認める。認めてやるから、早くちょうだい。 げ、限界なのぉ……」
ビオラはイグアナのもとに飛び、死体をズルズルと引きずってES-077のところに持って来てあげた。
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