女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第十九話_ビオラ、建国を宣言する

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「さてと、卵が孵るまでに巣の拡張をしないとね!」

 働き蜂である娘が卵から孵るのが待ち遠しいビオラであるが、ずっと様子を見ているわけにはいかない。彼女は娘のためにも新しい部屋を作って拡張しようと張り切っていた。

「娘の部屋を作るのは当然だけど、トイレも作らないとね。さすがに娘の前でコンポストに直にまたがって用をたすのはマズい。教育に悪いし」

 実は今までビオラは面倒くさいがために用をたす際にはコンポストに直またがりでしていたり、誰も見ていないのをいいことに広い砂漠の真ん中でしたりと、やりたい放題やっていたのだった。した後はペペッと足で砂をかけて終わりである。

「砂漠の真ん中でも…… あれはあれで解放感があって気持ちよかったんだけど。娘のためにも仕方がない」

 少し残念に思うビオラだったが、娘が真似したらマズいと思う程度には常識はあった。

 早速、オロロとクリームを分泌すると部屋を幾つか作成し、部屋が固まる間に食事を摂るビオラ。それも終えると食後の散歩と巣の周りをブンブン飛び回る。

 やがて散歩も終わり、巣がぶら下がる岩場のてっぺんに止まったビオラは一面の砂漠を眺めながら思う。

 ―― もうすぐ娘が出来るんだ。もうこの巣もわたし一人じゃなくなるんだね。

 物思いにふけっていると、ふと商人プリムラの「こちらの国名と巣の名前は何とお呼びすればよろしいでしょうか?」という声が脳裏によみがえってきた。

「そうだね、娘も出来るしそろそろ決めないとね」

 腕を組んで「う~ん……」とビオラは唸りながら考える。

「国名は、せっかくだし自分の名前を入れたいな。 巣の名前は、どうしよう……?」

 そしてビオラは思うのだった。賑やかな、笑顔の絶えない巣になってほしい、と。

 砂漠の中に少しずつだけど広がっていく緑の大地。そこには自分たち妖精蜂だけじゃない、ES-077やプリムラたちなど色々な人たちがやって来て楽しそうに豊かな緑を囲む。

 そんな理想郷のような光景を思い浮かべながら決意した様子のビオラはグッと拳を握り高らかに宣言する。

「よし、決めた! 今日からここはビオランド王国! そして巣の名前はオアシ巣よ!」

 拳を高々と上げて大声で叫んだビオラの様子を離れた場所から眺めていた人影がある。ビオラの姉でありシルバーフルーツ王国の働き蜂のリナムであった。

 ビオラの宣言を聞くと思わず彼女はその感想を叫ぶ。

「だっさっっ!!」

「ん?」

 何か声が聞こえた気がしたビオラが振り返ると、リナムはサッと岩場の陰に隠れて呟く。

「いや、国と巣の名前ダサすぎるでしょ?! 砂漠の中に緑のある場所ってことだろうけど安直すぎる…… シャレのつもりなの?? 国名だって自分の名前そのままならともかく、ちょっとだけ捻ってるあたりが痛い…… とにかくセンスが……」

 頭を抱えて共感性羞恥に耐えるリナム。しかしハッとして自分の使命を思い出した彼女は気を取り直す。

「そうだ、とりあえずお母さんに報告を!」

 そう、彼女は度々カサブランカ女王の指示を受けてビオラの巣を訪れ、見つからないようにコッソリと様子を伺っていたのだった。

 リナムはビオラに見つからないように全力でシルバーフルーツ王国へと飛び去って行った。



 数日後、シルバーフルーツ王国の女王の間にてリナムの報告を聞いたカサブランカ女王はガックリと膝を折り両手を地に着け、項垂れて嘆く。

「センス…… うちの子のセンス……」

 そんなショックを受ける女王にリナムは追い打ちをかける報告を加える。

「あとお母さん、追加の報告ですけど、ビオラは誰も見てないのをいいことに砂漠の真ん中でトイレしてます」

「…………は? え? なにそれ??」

 告げ口混じりに報告を聞いたカサブランカは、手をついたまま顔だけを上げてリナムに問いかける。何を言っているのか分からないといった表情で。

「ですから、砂漠の真ん中でウンチしてます。 終わった後の表情を見る限り清々しい感じで気持ちよさそうでしたよ。 そうそう、犬みたいに足でペペッと砂かけてましたね」

「まじで……?」

「たまにコンポストに直またがりしてもしてましたよ」

 再び項垂れ、片手で頭を抱える手にビキッと力が入るカサブランカは、ちょっと怒りを籠めながら「あんのアホ娘はぁ……っ!」と娘の行儀の悪さを嘆いた。
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