女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第二十一話_ビオラ、ロイヤルゼリーを精製する

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 ビオラはミニ世界樹の枝に腰かけながらボケーっと空を眺めていた。そこへES-077がやって来て枝の上のビオラを見上げて声をかける。

「ビオラよ、何してるんだ?」

「ん? あ、ナナちゃん、おはよう。 今ね、ロイヤルゼリーを作成中」

 ビオラの返答を聞いてES-077は首を傾げながら「作成? 何もしてないじゃないか?」と疑問を口にする。
 ビオラは枝からピョンと飛び降りてES-077のもとまでやって来るとお腹をポンポンと叩いて言う。

「ここ。 ここで作ってるの」

「は?」

「花粉団子を食べて蜂蜜を飲んで、お腹の中でしばらく熟成させると完成だよ。 ちょうどもうすぐ出来るから、ちょっと待ってて」

 そう言うとビオラは巣に飛んでいった。ES-077は飛んでいくビオラを見上げながら「何を待つのだ??」とキョトンとした顔で言った。



「おまたせ~」

 戻ってきたビオラは空き瓶を抱えて戻ってきた。

「言われたから待ってたけど、何する気だ?」

「だから、ロイヤルゼリーを出すのよ」

「出す?」

 怪訝な表情をしたES-077の目の前でビオラは大きく口を開け、瓶に向かってドパァ~っと空き瓶に向かってドロッとした液体を吐き出すビオラ。

「味見してみる? 美味しいよ」

「目の前で吐き出したものを人に勧めるな」

 ニコッと笑顔で瓶を差し出すビオラにES-077は真顔で珍しくまともなことを言って断った。と、その時、遠くから二人を呼ぶ声が聞こえた。

「ビオラちゃーん! ナナちゃーん!」

 二人が声のする方向へ振り返ると、砂漠の強い日差しの中、手を振りながら元気いっぱいに走り来る少年とその後ろを歩く大きな人影。

「おっ、アラディールではないか! それにオババ!」

「はぁ…… はぁ…… 久しぶり! ビオラちゃん、ナナちゃん」

 息を切らせて走って来たアラディールは嬉しそうに挨拶すると二人にニコッと笑いかける。

「アラディール、病気は良くなったのか?」

「うん、ナナちゃん。 ビオラちゃんもありがとう! ほらもう元気だよ。 お礼を言いに来たんだ」

「うむ、しっかりと感謝するがよい」

「ふふふっ、よかったよかった」

 腰に手を当てて胸を張るES-077と喜んでブンブンとアラディールの回りを飛び回るビオラのもとへブルースモグも遅れてやって来る。

「ありがとよ、二人とも。 治ったらすぐに会いに行くって聞かなくてね、もうちょっと体力付くまで我慢しろと言ったんだが……」

 苦笑いしながら懐からタバコを取り出したブルースモグはマッチをシュッと摺り、タバコに火を付けるとフゥっと煙を吹いて「一服させてもらうよ」と言いながら岩に腰かける。

「仕方がないから担いできたよ。ははっ」

 ―― すげぇな。 元気だなぁ、この婆ちゃん。

 十歳くらいの少年を抱えて砂漠を歩いて来たという八十二歳の老婆の頑強さにビオラが引いていると、「ねぇねぇ」とアラディールに声をかけられた。

「ビオラちゃん、それは何?」

 ビオラはアラディールの視線の先にある彼女が抱える瓶を見て「あ、これ?」と言う。

「これはロイヤルゼリーだよ。 妖精蜂の完全栄養食ね」

「へぇ~、この前の蜂蜜と何が違うの?」

「そうだねぇ、ちょっと味が濃い感じかな? 食べてみる?」

 ビオラの提案にアラディールは「えっ?! いいの?」と目を輝かせた。

「もちろん! 出来立てだよ!」
「おい、ビオラ。それ……」

「ありがとう、ビオラちゃん!」
「あ、アラディール! ちょ、それ――」

 ES-077が止める間もなく、アラディールはロイヤルゼリーの瓶を受け取ると人差し指を瓶に突っ込み、指先についたロイヤルゼリーを舐めて「美味しい!」と飛び切りの笑顔で言った。

「ナナちゃん、どうしたの? 何だった?」

「うむ。 気にするな、何でもない」

 飲んでしまったものは仕方がないと、ES-077は諦めた。世の中には知らなくていいこともあるんだと彼女は学んだ。

「さて、と。 そろそろ行くかね」

 タバコを喫い終えたブルースモグが立ち上がって言うと、ビオラは「え? もう行くの?」と残念そうな声を出す。

「あぁ、ちょっと町に買出しにね。 あんたらへの礼も買ってくるつもりだが、リクエストはあるかい?」

「肉! お肉! 赤身多めで!」

 ピョンピョン跳ねながら肉を要求するES-077のそばで飛びながら腕を組んで「う~ん……」と唸るビオラ。

「お構いなくって言いたいところだけど、最近布の消費が激しかったから布を貰えると嬉しいかな」

「わかった。 赤身肉と布だね」

 ブルースモグは二人に微笑むと、孫のアラディールを抱え上げると肩車して歩き始める。肩の上のアラディールは「ばいば~い! またね~!」と大きく手を振る。

「ばいば~い!」
「またな~、アラディール」

 手を振ってブルースモグとアラディールを見送ったあと、「おいっ」とES-077は飛んでいるビオラを見上げる。

「吐いたものをアラディールに飲ませるなよ」

「吐いたものって…… ロイヤルゼリーというちゃんとした食品です!」

「う~ん…… そうだけど…… ん? ところで何でロイヤルゼリー作ってたんだ?」

「あぁ、子供が出来たのよ。でね、ロイヤルゼリーを与えると成長の促進と免疫力が向上されたりするわけよ。 普通は特別な事情でもなければ働き蜂にまでは与えたりしないんだけど、ウチの食料事情とか考えると少数精鋭でいったほうがいいかなと思ってね。 ま、与えすぎると女王蜂になっちゃうから注意が必要なんだけど」

「へ~。 ……ん? ちょっと待って、子供産んだの?」

「うん。 イクシアって名前だよ。今お昼寝中だけど」

「わ、妾に何の相談もなく……?」

「え、何で? ナナちゃんに相談必要だった??」

 ショックを受けている様子のES-077にビオラは首を傾げて不思議な顔をする。するとES-077はカッと顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ビ、ビオラちゃんと一緒に産もうと思ってたのにぃ! くそぉ! わ、妾も、妾も産んでやるっ!」

 ちょっと涙目になりながら走り去っていくES-077。ビオラは「あ、ちょっと!」と手を伸ばすが届かない。

 ―― そんな張り合って産むもんじゃないと思うんだけど…… 大丈夫かな? ってか、一緒に産むって何よ??
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