女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第四十四話_連合国、ノリで誕生する

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 ES-077はコロッセオの観客席のうち、女王専用の豪華な彫刻が刻まれた椅子にふんぞり返り試合を観戦している。広いコロッセオの中央にはゼフィとサリスが気合の入った声を出し合って戦っていた。

「「さーいしょはっ! グーっ!!」」

「「じゃんけんっ! ポンっ!!!」」

 互いにチョキをだした二人は目を見張り、そして睨み合う。

「「あいこでっ!!」」

「「しょっ!!」」
「「しょっ!!」」
「「しょっ!!」」
「「しょっ!!」」
「「しょっ!!」」
「「しょっ!!」」

 二人は大きな動作で駆けまわりながらジャンケンをし続ける。遠くから眺めれば、とてもジャンケンをしているとは思えない動きである。

 いつ終わるともしれない、果て無きあいこの応酬を満足そうな頷きをもって見守るES-077の許へ、ブーンっとビオラが飛んでくる。

「なにしてるの? ナナちゃん」

「おっ! ビオラか。 一緒に見るか? ゼフィとサリスのジャンケン勝負」

 ES-077は自分の席の横にある、これも女王席と同等に豪華な彫刻のある椅子をポンポンと叩きながら言う。

「うん、いいけど」

 勧められてビオラは素直に着席する。ES-077は隣にビオラが座ると一瞬パッと嬉しそうな表情をした。

「で、なんでジャンケン?」

「うむ。 このコロッセオ、作ったはいいがどんな競技をすればいいのか分からなくてな。 いろいろと試しているところだ。 今はヴェスパシアヌス(公衆便所)の糞尿をコンポストに運ぶ仕事を賭けてのジャンケン勝負中だ」

 ES-077が説明しているとコロッセオの中央で「ぎゃぁぁぁぁっ! 負けたぁ!!」とサリスが叫ぶ。大の字になって転がるサリスの横で片膝を着いて荒い息をするゼフィは「いい試合だった…… 今日のヴェスパシアヌス当番はサリスね……」と言って額の汗を拭う。

「どうしたらジャンケンでこんな死闘っぽい雰囲気を……?」

「誰だってヴェスパシアヌス掃除はあまりしたくないだろう? それに妾たちは肉食だからな、結構ウンコが臭いぞ」

「うん、知ってる。 コンポストに花粉運んで混ぜてるのわたしだし」

「ところでビオラよ。 何か用事か? それとも単に遊びに来てくれたのか?!」

「あ、そうそう。そうだった。 ナナちゃんにお客さん」

「む? 妾に? アラディールか?」

「ナナちゃんにっていうか、わたしたち二人にって感じかな? アラディールくんじゃなくて商人のマロニさん」

「おぉっ! ちょうど食料が心もとなくなってきたのだ。 一昨日、卵も孵化して一人増えたしな」

「あ、ナナちゃんのところも産まれたんだね。わたしのところも昨日産まれたのよ」

「おぉ! そうか。 今はビウムが面倒をみているのだ。歩けるくらいに成長したらビオラの子と会わせてみよう。 ゼフィたちとイクシアやペリウィンクルのように仲良くなるかもしれんな」

「そうだね。 産まれた子はどんな感じの子?」

 何気なく聞いたビオラだったが、問われたES-077はちょっとマズそうに視線を逸らして言う。

「問題児の匂いがぷんぷん」

 ―― そっちもかぁ……

「ナナちゃんが言うならよっぽどよね」

「ちょっとソレどういう意味、ビオラちゃん?」

 あまりに心外過ぎて素になったES-077だった。



 巣穴から出てきた二人の前にマロニと、そしてやや下がったところに二人のドワーフが立っていた。

「お久しぶりでございます、ナナ様」

「おぉ! マロニ。 食料を運んできてくれたのか?! 待ってたぞ」

「はい。 ですが商談に入る前にまず、こちらの二人を紹介させてください」

 マロニがそう言うとドワーフ二人が前に出て口を開く。

「俺はセッキーノ派の鍛冶師マーゴロックだ。 そしてこっちは妻のサヤだ」

 サヤと呼ばれたドワーフの女性は「お初にお目にかかります、女王さま。 サヤでございます」と言ってペコリと頭を下げる。

「うむ。 妾はスーパーアルティメット・ナナチャン大帝国の女王、偉大なるナナである」

 ―― あ、もう名前はナナで統一したんだ。

 ふんぞり返って自己紹介するナナにビオラは近づき、「この二人が砂漠に住みたいんだって」と言う。

「砂漠に? なんでわざわざ?」

「さぁ?」

 首を傾げるビオラとナナにマーゴロックは近づき、しゃがんで目線を近づけると説明を始める。

「鍛冶師として、作りたいものがある。 それがここでなら作れるかもしれねぇ、そんな気がするんだ」

「「ふ~ん」」

「あの、マーゴロックさんは変な人ではありません。犯罪者とかそういうのでもありません。 信用できる人だというのはわたしが保証致します。って、一度しか取引してないわたしが言うのも何ですが」

 マロニが前に出て言うと、ビオラとナナは顔を見合わせ「いいよね?」「うむ、悪い感じはせんしな」と移住を了承した。

「で、ナナちゃん。 マーゴロックさんたちの住む場所なんだけど」

「うん?」

「マロニさんの話だと、許可が出ればウチの岩場の端っこを洞窟状にくり抜いて住むのを想定してたみたいなんだよ」

「うむ」

「別にくり抜くのはいいんだけど、それならナナちゃんの都市に住まわせてもらったほうがいいかなって思って声かけたのよ。そっちのほうが快適でしょ?」

「ふむ、なるほど。 つまりは妾の、スーパーアルティメット・ナナチャン大帝国の臣民になりたいと、そういうことか」

 いつも通りを装い、ふんぞり返りながら言うナナであるが何となく嬉しそうである。

「あぁ、許可を頂けませんかね」

「うむ。 ビオラの国に移住予定だったようだが、お前らが良いなら寛大な心で妾は受け入れよう」

「すまんな。失礼なことを言ってるのは分かっとる。 他の国に移住しようとして来といて、あんたの国に住まわせてくれと――」

「なぁに、ビオラの国と妾の国は二つで一つのようなものだ。気にするな、マーゴロックよ」

「二つで一つ? 連合国みたいなもんか?」

「うむ、そのとおりだ。 ビオランド・ナナチャン連合国だ」

「知らん間に合併されてる!!」

 ―― でもまぁ、ナナちゃんとだし、まぁいいか……

 ナナの適当ないつもの軽いノリで、いつのまにか国家を統合されてしまったビオラだった。
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