女王蜂の建国記 ~追放された妖精、作業服を着て砂漠を緑地化する~

はとポッポ豆太

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第四十五話_ナナ、市民権を与える

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「そんなわけでさ、ナナちゃん。OKだったらマーゴロックさんたちをナナちゃんの地下都市に案内してあげてくれる? わたしはマロニさんと商談してるから」

「うむ、よかろう」

 請け負ってくれたナナに「ありがとう、ナナちゃん」と笑顔で礼を言ったビオラはマロニと一緒にオアシ巣のほうへと戻って行った。

「よし、ではついて来いマーゴロックよ。 ……おっと、そうだ」

 ナナはごそごそとポケットを漁り、石の破片で作られた二枚のカードを取り出すと「これを渡しておこう」と言ってマーゴロックとサヤに手渡す。

 ナナの体格に対してのカードサイズであるため、マーゴロックたちからするとかなり小さい。摘まむように受け取ったマーゴロックは「なんだ、これは?」とナナに聞く。何も書かれていないカードだったが、表面が輝くほどツルツルに磨かれていた。

「妾の国の臣民である証、ナーナ市民権である」

「ほぉ……」

 マーゴロックは感心したようにカードを眺めている。

「それを持つ者はスーパーアルティメット・ナナチャン大帝国の臣民としての様々な義務を負う。だが、代わりに権利が保障される。 まず義務だが、祖国、つまりはスーパーアルティメット・ナナチャン大帝国とビオランド王国を守る義務だ。あとは納税の義務だな」

「ふむ、税金か。 税率はどうなる?」

 住む以上は納税の必要があるのは当然とマーゴロックは思う。だが、どうしても税金と聞くと構えてしまうものである。

「収入の一割だな」

「何?! 一割だと?」

 安すぎだろうと、マーゴロックは驚いて目をむいた。マーゴロックが以前住んでいた地域では町に住む商人や工人は収入の三割から四割、農民に至っては収穫物の七割近くも税として納めていた。ただ農民の場合は農地を領主から借りているということもあり、その借地料も含まれてのものではあるが。
 それにしてもナナの提示した税金は安すぎる。

「大丈夫なのか? そんな税率で」

「うむ。 正直なところ妾たち地獄蟻はそんなにお金が必要ではないのだ。食べ物があって、あとは楽しく暮らせればよい。他種族が多くなればそれぞれに必要なことは出てくるだろうが、それらは基本的にそれぞれの種族に任せようと思うしな。そのために妾が指導する必要はでてくるだろうが」

「ふむ…… なるほど。 小さな政府とかいうやつか?」

「む? あ、うん、そうそうその小さいやつ!」

「分かってねぇだろ?」

 適当に頷くナナを見ながらマーゴロックは思う。地獄蟻が他種族と共存しようとしてることには驚いたが、やろうとしていることは理にかなっているような気がする。

 文化の違う多くの種族が暮らすようになれば、それぞれの生活や習慣で必要なものは膨大となる。それをすべて国が整備してやることはできないだろう。それらは必要とする種族がそれぞれ用意し、他との摩擦が起こるようなら女王が調停に出る。

「……天然か」

「む? なんか言ったか?」

 天然でこの考えに辿り着いたのなら凄いもんだ。と、マーゴロックは豊かなあご髭をしごきながら、ボケーッとした表情のナナを眺める。このアホ面の女王様は結構大物なんじゃないかとマーゴロックは思い始めた。

「いや、何でもない」

「うむ、そうか。まぁそのうち臣民が増えて、商人の出入りが多くなってきたら贅沢品には数パーセントの税は課そうかとは思う。 んで、次に権利のほうだが。 持ってるお金とか物とかの保護は当然だな。あとはルールを決めて、争いごとになった場合はそのルールで解決する権利。それでも納得がいかない場合は妾に何とかしてくれと頼む権利だな」

「なるほど、流通税や贅沢税とかも考えてるのか。 それに権利のほうは、私有財産の保護と法に則った裁判、さらには女王への控訴権ってとこか?」

「そうそう、そんな感じ」

「やっぱ分かってねぇだろ?」

「あとはアレだ。 妾が楽をするため―― げふんっ! じゃなかった、妾を助けるための臣民代表の役職に選ばれる権利と、選ぶ権利だな。多数決でいい奴を選ぶようにしようと思ってるぞ! コンスルという名前の役職だ。カッコイイだろ!?」

 どうだ、という感じでナナは得意げに手を腰に当てて笑顔でふんぞり返る。恐怖の象徴でもある地獄蟻ということで構えていたマーゴロックだったが、何だか目の前の女王蟻が可愛らしく思えてきた。

「ふふっ、そうか。 選挙権と被選挙権まであるのか。 ということは、俺も立候補できるってことか?」

「おぉっ! やる気満々か?! 是非とも妾を楽させ―― げふんっ! 妾を補佐してくれ!」

「はははっ。 小さな国とはいえ、まさか国政に参加させてもらえるとはな。俺みたいな小市民にゃ過分だが、面白そうだ。微力は尽くしてみよう」

「おぉっ! そうかそうか」

 ウンウンと満足そうに頷くナナは「ではそろそろ、妾の壮麗な地下都市を案内してやろう!」と言う。

「マーゴロックよ、手を出すがよい」

「手? あぁ」

 マーゴロックが言われるままに手を出すと、その上にナナはピョンと飛び乗る。そして岩場の入り口を指さし、「よーし、しゅっぱーつっ!!」と楽しそうに叫んだ。

 なんとも面白く可愛らしい女王様だなと、マーゴロックとサヤは微笑んで入り口に向かって進んだ。
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