夏、僕はきみに出会う

芽亜莉

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大特訓

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休日の午前中、俺は岩の上でぼんやりと海面を眺めていた。
なんて平和なんだろう。
ああ、すごく平和だ。
このまま寝てしまいたいぐらい……。
ハッ。危ない危ない、マジで寝るところだった。
休日のほんのり暖かい気候と波の揺れるゆったりとした音を聞いていたらウトウトしてしまうのも仕方がないだろう。
寝て欲しくないなら早く来るんだ人魚…。と思いつつ睡眠体制へと入る。
「すまぬ、待たせたな」
ようやく人魚様のご到着らしい。
だがしかし、後ろから来られるのは本気でビビるマジでやめて欲しい。
まぁそれはさておき、第1の疑問を口にしてみる。
「なぁ人魚、村の伝説として書かれてる本には人魚は人の言葉を話せないって書いてあったんだが…。」
人魚はふと真顔になって、声を小さくして僕に寄ってこう言った。
「実はね…私、元は人間だったんだ。」
耳元でふわっと、甘い声でそう言われた。そのせいもあってめちゃくちゃ慌ててしまった。
「えっ、人間?え、じゃあ人魚になったってことっすか。え、どうやって…。」
俺が驚きで慌てふためく中、人魚は口元をモゴモゴさせていた。
心なしか肩も少し震えているような…。
まさか、泣いてる…???
「あ、あの、人魚…。
ほら、泣かなくても…人間に戻れるかもしれませんし…そ、ほ、らあの…。」
そうやって俺が慰め始めた瞬間だった。
「ぶっふっ、ふっ、あっはははは!!」
人魚が突然大きな声で笑い始めた。
ラッコみたいに顔を上に向けて水面に浮き、両手は胸の部分に置かれていた。
「ふっ、まさか、騙されるとはっ、思わなかったなっ、ふっははは…!!
人間が人魚になるわけないだろう。」
どうやらこの人魚は甘いふんわり系を時々使ってくるらしい。
まぁ本性は老人みたいなこの喋り方の方だろう。
詐欺ババア。
「で、人間じゃないならどうして言葉が話せるんだよ?」
改めて疑問をぶつけてみる。
すると人魚は何やら得意顔になってふふんと鼻息を出してこう言った。
「私は長だからな。」
……おさ?
それは、あの、村の長とかいう…?
「む、何やらわかっていなさそうな顔じゃのう。
仕方ない、説明してやろう。」
嫌な予感はしたんだ。
まさか1時間もタラタラ説明が続くなんて、なんて人魚だ。
「つまり、長だからこそ言葉が話せるんだ。わかったか?」
長い説明を聞いていたせいで固まりきった背中を動かしつつ
「あ、あぁわかったよ。」
そう言うと人魚は満足そうに
「じゃあ、そろそろ出発するかのう。」
「は?」
出発ってどこへ
というより早く人魚は俺を肩に抱き海の中へ潜…潜っ…?????
俺が息を止めてる間、人魚はどんどん海の底へと潜っていく。
かれこれ体感1分。
実際15秒。
俺はもう息が限界になっていた。
あぁ、ここで死ぬのか…短い人生だった。さよなら、みんな…。
………
あれ?息ができる…?
疑問に思って人魚の顔を見ると、あろうことか人魚は笑いをこらえていた。
こいつ…わざと言わなかったな。
もう少しで窒息するところだった。
と、そんなことを思っていると竜宮城的な城みたいなのが見えてきた。
まさか帰り際に箱渡されて家に帰ってあけたら歳をとるなんてそんなことをするわけでもあるまいな。
「悪かったのう。まぁ許せ。」
と笑いながら言ってくる。許せない。
「てか、いいのか?俺なんかがこんなとこに来て。」
「構わぬ。お前にはやるべきことがあるのだからな。」
やるべきこと?そんなこと言われてもめんどくさいことはやりたくない。
「なに、簡単なことじゃ。」
嘘だ。冗談じゃない。面倒くさそうな予感しかしない。帰ろう。
「分かりました。断固、お断りさせていただきます。」
そう言って振り返った時だった。
「帰れぬぞ。」
どういう意味だ?俺の顔から察した人魚はこう言った。
「だから、帰れぬと言っておる。
お前は妾が連れていかねば地上には戻れぬのじゃ。」
嘘だろって、笑うつもりで再度人魚の方を向いたのに彼女は真面目な顔で俺を見つめるだけだった。
「結局、受ける以外の選択肢は俺にはなかったってことか。」
「悪いとは思っておる。だが、これはもはや人魚の世界だけの話ではないのだ。」
「それってもしかして、人間の世界にも何か影響があるってことなのか。」
人魚は黙って頷く。
仕方ない、こんな真剣な顔されちゃ投げ出すなんて出来そうにない。
「分かったよ、何をすればいいんだ?」
途端に人魚は顔をほころばせ、嬉しそうに笑った。
「お前にはこれから、妾以外の人魚に人間の言葉を教えてもらう。」
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