少女は青い夢を見る

芽亜莉

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夢の中

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ハッと目が覚めた。
外はまだ暗くて、完全に朝になりきってはないようだった。
枕の上に置いておいた時計を見る。
それに何の感情もなくて、ただもう1度眠れるかな、と思って見ただけだった。
時計は、時計の中身は消えていた。
12、3、6、9。
それらの数字と時計の針が時計本体から消えていた。
ふと、考えてしまった。
ぽっかりと空いたそこに手を入れたら消えることができるのだろうか。
逃げたくて、消えたくて、夢の中に逃げ込むだけの毎日から、抜け出せるだろうか?
なにかに導かれるように、僕はそこへ手を入れた。

ハッと目が覚めた。
時計は……そして僕は理解した。
全て夢なんだと。
理解した瞬間、体は今までの眠りよりも深く、安らかな眠りに落ちていった。

草が揺れている。ここはどこだろう。
ここがどこか分からないのに、ひとつだけわかることがあった。
ここは、とても優しい場所だ。
カチッ…カチッ…
時計の針が進む音がする。
ここで僕がすべきことは1つだけ。
幼い時の中に隠れたままの少女を見つけること。
「もういいかい?」
数秒の間を置いて、かえってくる。
懐かしい声、ずっと聞きたかった。
「……もういいよ」
霧の立ちこめるこの草原を歩いていく。
真っ直ぐに、大きなあの木へ向かって。
「みぃつけた。」
少女は下を向いたまま動かない。
それでも僕は待ち続ける。
少女の時が動き出すまで。

「………遅い。遅すぎるよ。
私はもう戻れないのに。今更みつけたって!私はもう、戻れないのに!!!」
少女の瞳にはずっと流されることのなかった涙がたまっている。
僕は受け入れなければいけないのだろう。
少女はもう既に受け入れている。
「ごめん。でももう、置いていかないよ。一緒に帰ろう?」
少女は無言で立ち上がる、それは肯定のサイン。
手を握って、夢の終わりへと少女を連れていく。
幼い頃、少女に問いかけたことがあった。
「時計の上下と左右、12、3、6、9。 
これが表すものはなんでしょう?」
「なぁに、それ?
わかんないよ。今は答えない!」
その答えを聞けないまま、会えなくなったんだ。今日こそ、教えてくれるんだろう?
夢の終わりの直前、少女は強く手を振りほどいた。
「ごめんね、迎えに来てくれたのに。
でも、戻れないんだよ…!!」
少女は涙を流している。
ただ、静かに。
それでいい、それでいいんだよ。
少女の手が僕の胸を押す。
それでも僕は落ちていかない。君を落として、時を進めるって決めたから。
さようなら、ミオ。
少女はいつの間にか僕と場所を交代していることに驚きを隠せないようだった。
僕は君を落とすよ、夢の終わりに。
目が覚めたらきっと、君はまた、忘れてしまうんだろう。
あの問いかけも、僕のことも。


目が覚めた後、キミが消えた世界で私が何を思うか、考えなかったのかな。
「バッカみたい。」
私の時を進めるために犠牲になるなんて。
もう2度と戻れないの、自分が1番わかってるくせに。
それでも、それでもキミは良い奴で。
私は何も出来ない自分にイライラして、ただ涙を流すだけで。
こぼれる涙を拭うことも無く、私は外へ目を向ける。
長い間、ずっとあそこにいた。
草しかないけど、優しい場所。
遠い昔に、キミと出会った場所。
今ならキミの問いかけの答え、自信もって言えるよ。
「12、3、6、9を全て足して30。ミオ、私の名前。」
無理やりな読み方でも、子供の頃の私たちならきっとなんでもよかった。
重要なのは、私がキミを忘れないこと。
キミは分かってたんだ。
私が夢から出られなくなること。
キミが身代わりになること。
いつか、キミの時を進めるから。
それまで待っていて。
キミがしてくれたように、今度は2人が2人で帰れる問いかけを用意していくよ。
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