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『祈ることにより【その国に必要な祝福】を与えられる聖女のお話』前編
この世界の聖女の役割は、祈りの力でその国に必要な祝福を与えること。
女神に仕える彼女達は、どの国にも属していない。女神のお告げにより、選ばれた国に一人ずつ派遣されることで聖女として活動していた。
たとえば食糧難に苦しんでいた国では、聖女が派遣され祈ったとたんに食料を安く輸入できる経路が見つかったし、数年後には、作物が育ちにくい土地でもよく育つ作物が開発された。
砂漠の国に派遣された聖女が祈っていると、急に水が湧きだしオアシスができたことは有名だ。
それぞれ事情は異なるものの、聖女の祈りは女神の加護であり国の繁栄に直結している。
ラッセル国に派遣されているアイラもその聖女の一人。輝く長い銀髪と澄んだ湖のような青い瞳を持つ彼女は、聖女に選ばれるまでは伯爵家の令嬢だった。
そんな聖女アイラの祈りにより、このラッセル国にも確実に『必要な祝福』が女神から与えられている。
それなのに、ある日、アイラがラッセル国の王宮の端にある礼拝堂でいつものように祈っていると、騒がしい人達が乗り込んできた。
「アイラ! いったいどういうことだ!?」
そう叫んだのはこの国の王ヒース。金髪碧眼の見目麗しい外見をしているが、性格は非常に残念で、今も愛妾である美女を侍(はべ)らせている。いったいどれほど王から貢(みつ)がれているのか、愛妾は高価な装飾品を身にまとい全身をギラギラと輝かせていた。
今にもアイラに掴みかかってきそうな勢いのヒースを、アイラの護衛騎士エヴァンが間に入って止めた。黒髪に赤い瞳を持つ凛々しいエヴァンは、ヒースを冷たく睨みつけている。
「アイラ様は今、祈りの最中です」
「その祈りが問題なのだ! 今すぐやめろ!」
エヴァンは「お引き取りください」と淡々と返した。何度かそのやりとりが繰り返されているうちに、祈りを終えたアイラは顔を上げて立ち上がる。
「ヒース陛下。お待たせして申し訳ありません」
目をつり上げたヒースは、アイラに人さし指を突きつける。
「この偽聖女が!」
その言葉でエヴァンのコメカミがピクッと動いた。お仕えするアイラを侮辱されて、そうとう怒っているようだ。
そんなことには少しも気がつかず、ヒースは言葉を続ける。
「おまえがこの国に来てからというもの不幸が続いている! そのせいで我が国は混乱に陥っているのだ! 何が国に必要な祝福を与える聖女だ! 不幸を呼ぶおまえなど聖女ではないわ!」
興奮するヒースに、アイラではなくエヴァンが答えた。
「アイラ様は本物の聖女です。それもただの聖女ではない。神殿内で一番力の強い聖女なのです。それを偽聖女などと――」
少しずつ語気が荒くなっていくエヴァンをアイラが右手で制した。
「陛下。今起こっていることは、この国に必要なことなのです」
アイラの言葉にヒースはさらに怒り、興奮する。
「不幸が必要なことだと!? ふざけるな! 偽聖女を捕らえて公開処刑にしてやる!」
その言葉でエヴァンは、腰に帯びていた剣に手をかけた。
「聖女様に危害を加えると神殿が黙っていないぞ!」
エヴァンの低く鋭い声に、ヒースは「うっ」とたじろぐ。
聖女を派遣する神殿に睨まれることは、たとえ一国の王でも避けたい。
「くっ、もういい! 即刻、この国から出ていけ!」
アイラは静かにヒースを見つめた。
「陛下。そのご判断、王妃様はご存じでしょうか?」
「そんなことはどうでもいいわ! さっさと出ていけ!」
ヒースの後ろでは、愛妾がクスクスと笑っている。その醜悪な笑みが、ヒースには見えていない。
アイラはヒースに背を向けて歩きだした。エヴァンが慌ててアイラを追いかけてくる。
「アイラ様、いいのですか!?」
「陛下には何を言っても無駄よ。それに王宮には王妃様がいらっしゃるわ」
公爵家から王家に嫁いだ王妃は、ヒースとは違い才色兼備で有名だ。聖女としてこの国を訪れたアイラにも良くしてくれている。王妃が産み育てた第一王子は愚かな国王に似ず、とても優秀だと聞いていた。
「聖女は祈ることが仕事です。それ以外のことは、他の方にお任せしましょう」
アイラはニッコリ微笑んだ。
*
ヒースに追い出される形で王城から出たアイラと護衛騎士は、街で平民服を買った。
どの国でも派遣されてきた聖女の顔は、市民には公開されない決まりになっている。だから、王城を出てしまうとアイラが聖女だと知る者はいない。しかし、聖女の服を着ていなくても、アイラは神々しいまでに輝いていた。
聖女になる前はこの国ではない貴族の令嬢だったために、外見だけではなく所作にも品があり美しい。
道行く人々がアイラに見惚れている。その様子を見た護衛騎士エヴァンは『俺がしっかりとお守りしなければ』と決意を新たにする。
そんなエヴァンの思いをよそに、流行りのカフェに入ったアイラは以前から食べてみたかったパフェというものを注文してみた。
独特な形のガラスの入れ物にクリームが何層も重ねられて、フルーツがたくさん載っている。
持ち手の長いスプーンですくい口に運ぶと、甘さが口内に広がった。
「おいしいわ」
その向かいの席では、護衛騎士が先ほどのヒースの態度に静かに怒っていた。
「今、思い出しても腹が立ちます。なんなんだ、あの無能な男は。あんなのがなぜ国王なんだ? この国の未来が不安でしかないです」
そんなエヴァンの前にスプーンが差し出された。
エヴァンが驚いて見ると、アイラが「はい、あーん」と言いながらニッコリ微笑んでいる。
「……」
急に静かになって視線を泳がせたエヴァンは、大人しくあーんと口を開けた。
「エヴァン、おいしい?」
「あ、ああ。……じゃなくって! はい、おいしいです」
口をもごもごさせたエヴァンの顔は赤くなっている。そんなエヴァンにアイラは微笑みかけた。
「敬語はやめて昔みたいにお話しましょうよ」
「昔みたいに……」
エヴァンは、アイラの生まれ育った伯爵家で騎士見習いをしていた。
アイラが聖女だと分かり十五歳で神殿に招かれたとき、エヴァンは神殿に仕える騎士になるためにすぐにアイラの後を追った。
それはもちろん、アイラと離れたくなかったから。
騎士見習いなんて、本来なら伯爵令嬢と会話をすることすら許されない。しかし、伯爵家に他に年が近い子どもがいなかったこともあり、二人は幼馴染のように育った。
神殿に入ったエヴァンは、血のにじむような努力の末、聖女アイラの護衛騎士の座を勝ち取った。
護衛騎士なら生涯アイラの側にいられる。それだけでエヴァンは満足していた。
(それなのに、こちらの気も知らないでアイラは、いつまでも子どものままのような態度を……。今だって、あーんとかしてくるし、俺のこと絶対に男だと思っていないだろ!?)
偽聖女よばわりされて追い出されたのにもかかわらず、アイラはのんきなものだった。
「エヴァン。久しぶりに二人きりになれたのだから、休暇だと思ってのんびりしましょう」
エヴァンは、深いため息をついた。
「そうだな」
パフェを綺麗に食べ終わったアイラに、エヴァンが尋ねる。
「アイラ、これからどうする? 一度、神殿に戻るか?」
「いいえ、このままラッセル国に残って祈りを続けるわ」
「わかった」
真面目なアイラならそう言うだろうとエヴァンは予想がついていた。
アイラが祈ることでこの国は、たしかに混乱に陥(おちい)っている。でもそれは、今まで暴くことのできなかった狡猾(こうかつ)な権力者達の不正が次々に発覚していっているだけのこと。
「このまま私が神殿で祈り続けて、この国で行われている不正をすべて明らかにしてしまえればよかったのだけど……」
王妃もそれを望んでいた。
「アイラ。祈り続けるのはいいがさすがに王都からは去ろう。あの愚かな王に見つかったら、何をされるかわからないからな」
「だったら、国境(くにざかい)の小さな村で家を借りるのはどう? お金ならたくさんあるし」
派遣された聖女には、神殿から毎月きちんと決まった額が支払われているので、アイラはお金に少しも困っていない。
アイラとしては良いアイデアだと思ったのに、エヴァンはあからさまに動揺した。
「そんなことをすると、俺と二人で暮らすことになってしまうぞ」
「エヴァンは嫌なの?」
「そ、ういう、わけ、では……」
護衛なのだから常に聖女の側にいることが使命だが、二人きりで暮らすとなると話は違ってくる。
(俺の邪(よこしま)な思いを、清らかなアイラに知られるわけには……)
悩むエヴァンを見て、アイラは口をとがらせた。
「私の気持ちに、本当に気がついていないの?」
「え?」
「今まで一生懸命アピールしてきたつもりなのに……」
急に悲しそうな表情を浮かべたアイラを見て、エヴァンの心臓は跳びはねた。早く何か言わなければと思ったが、アイラの言葉でエヴァンの頭は真っ白になる。
「好きよ、エヴァン」
予想外の言葉に固まってしまったエヴァンの顔をアイラは覗き込んだ。
「エヴァンは私のこと嫌い?」
「す、好きに決まってんだろ!」
「良かった」
ふふっと笑うアイラに、エヴァンは思わず見惚れてしまう。
長年の想いが通じ感極まったエヴァンの瞳に涙がにじむ。真っ赤になった泣き顔を見られたくなくて、エヴァンはしばらく顔を上げられなかった。
告白しておきながら、涼しい顔をしているアイラが少しだけ憎い。
エヴァンはいつか絶対にアイラを赤面させてみせると心に誓った。
女神に仕える彼女達は、どの国にも属していない。女神のお告げにより、選ばれた国に一人ずつ派遣されることで聖女として活動していた。
たとえば食糧難に苦しんでいた国では、聖女が派遣され祈ったとたんに食料を安く輸入できる経路が見つかったし、数年後には、作物が育ちにくい土地でもよく育つ作物が開発された。
砂漠の国に派遣された聖女が祈っていると、急に水が湧きだしオアシスができたことは有名だ。
それぞれ事情は異なるものの、聖女の祈りは女神の加護であり国の繁栄に直結している。
ラッセル国に派遣されているアイラもその聖女の一人。輝く長い銀髪と澄んだ湖のような青い瞳を持つ彼女は、聖女に選ばれるまでは伯爵家の令嬢だった。
そんな聖女アイラの祈りにより、このラッセル国にも確実に『必要な祝福』が女神から与えられている。
それなのに、ある日、アイラがラッセル国の王宮の端にある礼拝堂でいつものように祈っていると、騒がしい人達が乗り込んできた。
「アイラ! いったいどういうことだ!?」
そう叫んだのはこの国の王ヒース。金髪碧眼の見目麗しい外見をしているが、性格は非常に残念で、今も愛妾である美女を侍(はべ)らせている。いったいどれほど王から貢(みつ)がれているのか、愛妾は高価な装飾品を身にまとい全身をギラギラと輝かせていた。
今にもアイラに掴みかかってきそうな勢いのヒースを、アイラの護衛騎士エヴァンが間に入って止めた。黒髪に赤い瞳を持つ凛々しいエヴァンは、ヒースを冷たく睨みつけている。
「アイラ様は今、祈りの最中です」
「その祈りが問題なのだ! 今すぐやめろ!」
エヴァンは「お引き取りください」と淡々と返した。何度かそのやりとりが繰り返されているうちに、祈りを終えたアイラは顔を上げて立ち上がる。
「ヒース陛下。お待たせして申し訳ありません」
目をつり上げたヒースは、アイラに人さし指を突きつける。
「この偽聖女が!」
その言葉でエヴァンのコメカミがピクッと動いた。お仕えするアイラを侮辱されて、そうとう怒っているようだ。
そんなことには少しも気がつかず、ヒースは言葉を続ける。
「おまえがこの国に来てからというもの不幸が続いている! そのせいで我が国は混乱に陥っているのだ! 何が国に必要な祝福を与える聖女だ! 不幸を呼ぶおまえなど聖女ではないわ!」
興奮するヒースに、アイラではなくエヴァンが答えた。
「アイラ様は本物の聖女です。それもただの聖女ではない。神殿内で一番力の強い聖女なのです。それを偽聖女などと――」
少しずつ語気が荒くなっていくエヴァンをアイラが右手で制した。
「陛下。今起こっていることは、この国に必要なことなのです」
アイラの言葉にヒースはさらに怒り、興奮する。
「不幸が必要なことだと!? ふざけるな! 偽聖女を捕らえて公開処刑にしてやる!」
その言葉でエヴァンは、腰に帯びていた剣に手をかけた。
「聖女様に危害を加えると神殿が黙っていないぞ!」
エヴァンの低く鋭い声に、ヒースは「うっ」とたじろぐ。
聖女を派遣する神殿に睨まれることは、たとえ一国の王でも避けたい。
「くっ、もういい! 即刻、この国から出ていけ!」
アイラは静かにヒースを見つめた。
「陛下。そのご判断、王妃様はご存じでしょうか?」
「そんなことはどうでもいいわ! さっさと出ていけ!」
ヒースの後ろでは、愛妾がクスクスと笑っている。その醜悪な笑みが、ヒースには見えていない。
アイラはヒースに背を向けて歩きだした。エヴァンが慌ててアイラを追いかけてくる。
「アイラ様、いいのですか!?」
「陛下には何を言っても無駄よ。それに王宮には王妃様がいらっしゃるわ」
公爵家から王家に嫁いだ王妃は、ヒースとは違い才色兼備で有名だ。聖女としてこの国を訪れたアイラにも良くしてくれている。王妃が産み育てた第一王子は愚かな国王に似ず、とても優秀だと聞いていた。
「聖女は祈ることが仕事です。それ以外のことは、他の方にお任せしましょう」
アイラはニッコリ微笑んだ。
*
ヒースに追い出される形で王城から出たアイラと護衛騎士は、街で平民服を買った。
どの国でも派遣されてきた聖女の顔は、市民には公開されない決まりになっている。だから、王城を出てしまうとアイラが聖女だと知る者はいない。しかし、聖女の服を着ていなくても、アイラは神々しいまでに輝いていた。
聖女になる前はこの国ではない貴族の令嬢だったために、外見だけではなく所作にも品があり美しい。
道行く人々がアイラに見惚れている。その様子を見た護衛騎士エヴァンは『俺がしっかりとお守りしなければ』と決意を新たにする。
そんなエヴァンの思いをよそに、流行りのカフェに入ったアイラは以前から食べてみたかったパフェというものを注文してみた。
独特な形のガラスの入れ物にクリームが何層も重ねられて、フルーツがたくさん載っている。
持ち手の長いスプーンですくい口に運ぶと、甘さが口内に広がった。
「おいしいわ」
その向かいの席では、護衛騎士が先ほどのヒースの態度に静かに怒っていた。
「今、思い出しても腹が立ちます。なんなんだ、あの無能な男は。あんなのがなぜ国王なんだ? この国の未来が不安でしかないです」
そんなエヴァンの前にスプーンが差し出された。
エヴァンが驚いて見ると、アイラが「はい、あーん」と言いながらニッコリ微笑んでいる。
「……」
急に静かになって視線を泳がせたエヴァンは、大人しくあーんと口を開けた。
「エヴァン、おいしい?」
「あ、ああ。……じゃなくって! はい、おいしいです」
口をもごもごさせたエヴァンの顔は赤くなっている。そんなエヴァンにアイラは微笑みかけた。
「敬語はやめて昔みたいにお話しましょうよ」
「昔みたいに……」
エヴァンは、アイラの生まれ育った伯爵家で騎士見習いをしていた。
アイラが聖女だと分かり十五歳で神殿に招かれたとき、エヴァンは神殿に仕える騎士になるためにすぐにアイラの後を追った。
それはもちろん、アイラと離れたくなかったから。
騎士見習いなんて、本来なら伯爵令嬢と会話をすることすら許されない。しかし、伯爵家に他に年が近い子どもがいなかったこともあり、二人は幼馴染のように育った。
神殿に入ったエヴァンは、血のにじむような努力の末、聖女アイラの護衛騎士の座を勝ち取った。
護衛騎士なら生涯アイラの側にいられる。それだけでエヴァンは満足していた。
(それなのに、こちらの気も知らないでアイラは、いつまでも子どものままのような態度を……。今だって、あーんとかしてくるし、俺のこと絶対に男だと思っていないだろ!?)
偽聖女よばわりされて追い出されたのにもかかわらず、アイラはのんきなものだった。
「エヴァン。久しぶりに二人きりになれたのだから、休暇だと思ってのんびりしましょう」
エヴァンは、深いため息をついた。
「そうだな」
パフェを綺麗に食べ終わったアイラに、エヴァンが尋ねる。
「アイラ、これからどうする? 一度、神殿に戻るか?」
「いいえ、このままラッセル国に残って祈りを続けるわ」
「わかった」
真面目なアイラならそう言うだろうとエヴァンは予想がついていた。
アイラが祈ることでこの国は、たしかに混乱に陥(おちい)っている。でもそれは、今まで暴くことのできなかった狡猾(こうかつ)な権力者達の不正が次々に発覚していっているだけのこと。
「このまま私が神殿で祈り続けて、この国で行われている不正をすべて明らかにしてしまえればよかったのだけど……」
王妃もそれを望んでいた。
「アイラ。祈り続けるのはいいがさすがに王都からは去ろう。あの愚かな王に見つかったら、何をされるかわからないからな」
「だったら、国境(くにざかい)の小さな村で家を借りるのはどう? お金ならたくさんあるし」
派遣された聖女には、神殿から毎月きちんと決まった額が支払われているので、アイラはお金に少しも困っていない。
アイラとしては良いアイデアだと思ったのに、エヴァンはあからさまに動揺した。
「そんなことをすると、俺と二人で暮らすことになってしまうぞ」
「エヴァンは嫌なの?」
「そ、ういう、わけ、では……」
護衛なのだから常に聖女の側にいることが使命だが、二人きりで暮らすとなると話は違ってくる。
(俺の邪(よこしま)な思いを、清らかなアイラに知られるわけには……)
悩むエヴァンを見て、アイラは口をとがらせた。
「私の気持ちに、本当に気がついていないの?」
「え?」
「今まで一生懸命アピールしてきたつもりなのに……」
急に悲しそうな表情を浮かべたアイラを見て、エヴァンの心臓は跳びはねた。早く何か言わなければと思ったが、アイラの言葉でエヴァンの頭は真っ白になる。
「好きよ、エヴァン」
予想外の言葉に固まってしまったエヴァンの顔をアイラは覗き込んだ。
「エヴァンは私のこと嫌い?」
「す、好きに決まってんだろ!」
「良かった」
ふふっと笑うアイラに、エヴァンは思わず見惚れてしまう。
長年の想いが通じ感極まったエヴァンの瞳に涙がにじむ。真っ赤になった泣き顔を見られたくなくて、エヴァンはしばらく顔を上げられなかった。
告白しておきながら、涼しい顔をしているアイラが少しだけ憎い。
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