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第7話 あいつの亡骸
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私は学校が終わり、家に帰った。
文化祭当日に独断で学校を抜け出して、犯人の動向を探ることを決心した。
文化祭準備のために紙の花を開く作業をしていた私だが、
「こんな作業なんてやりたくない。」とでも思いながら準備をしていた。
いやいややらされても、誰だって気持ちよくはない。
私の部屋に戻り、勉強でもしようかと椅子に座ったときに、考え事をしていた。
(またきっと、どこかの誰かさんたちから侮辱を受けるんだろう。)
「またこんな事して恥ずかしくないのか。お前はもう成人になるんだぞ。」
「お前なんかおかしいんじゃないのか。精神検査でも行ってきたら?」って。
(もはや”学校の恥さらし・面汚し”とでも言うのだろうか。)
その時、私はふと奈々美の遺言を思い出した。
”私のやりたいことができなかったら、他の人にやってもらう。大好きだよ”と。
(他の人というのは私で、奈々美がしたかったことっていうのは犯人への復讐なんじゃないか?でも他のことも十分にありえるのかも。)と考える私であった。
”復讐”これが唯一引っかかったワードだと感じ取った。
(復讐?あの子に一体何があるというの?)
そこで私は彼女の遺品である手帳を確認することにした。
実は、担任にあのとき、奈々美のポケットに入っていたメッセージをもらったとき、彼女のカバンの中に手帳があるということも聞かされていたのだ。
それ以来、肌身離さずずっと持っている。
パラパラとひらく音。そこには彼女が書いた多くの筆跡が残っていた。
(高校入学から死ぬまでの期間いつも書いてたんだ。)
私は敢えて彼女の遺品だから中身を見ないようにしていた。
これが初めてである。
”高校1年生になって親友と二人で入学式に出たよーこの二人で高校三年間たくさんいい思い出作ろうね!”
”初めてのテストで二人とも同じ点数だった!カンニングとかしてないんだけど。”
”高校に入って初めてアルバイトしたよ!たくさんお金もらっていつかディズニーランドでも行こうね。”
”初めての文化祭楽しかったー。来年も楽しみにしてるよ!”
”二人でアウトレット行って、カラオケ行って、たくさんenjoyしたよ!”
”高校2年になって、修学旅行があった。3泊4日だったけど、これまでにないくらい、たくさん笑ったし、たくさん色んな人の素性が見れて、とっても楽しかったよ!”
”高校に入ってすぐに言い争いになって喧嘩になっちゃったこともあったなー。たしか明日の遊びに行く場所どこが良いかってお互い全然引かなくて、「ここが良いー」とか「なんでよ。あんたが行きたいところはもう行ったじゃん、今度は私の番だからね。」って2時間ぐらい言い争って、結局どっちも行ったっていう事もあった。”
”そういえば、2年生のときは学校で一回「お前の存在が気に食わない。銀河系(ギャラクシー)から消えろ!」とか言い争ってガチで喧嘩するふりしたことあったよね。最初はクラスのみんなドン引きしてて、先生も気分悪すぎて嘔吐寸前だったらしいよ。最後は、お互いの胸ぐら掴んで笑いながら、「ドッキリ大成功ー」って言ったときの「なんだよ~」「まんまと騙された」っていうみんなの顔が忘れられないよね。”
などのようなものが記されていた。
(ただの日記にしか見えない。これに何があるというの?)
と読み進めていく私。なにもないと特に期待はしていなかった。
”私は誰かに狙われている気がする。”
しかし、先程とは裏腹に奇妙な供述をしている部分があった。
「まさか・・・。」
と思いながらこの供述の詳細を知ろうと、また再びパラパラめくるのだ。
”私が高2になって半年後に、実は誰かに付きまとわれている感覚がしたの。すぐに相談したんだけど、警察には受理されなかったみたいで、何か証拠がないとだめって言われてたみたい。そして、数日後に私の部屋の窓ガラスだけが割れていたのを見たの。おそらく誰かが物使って割られたような割り方だったからおそらくストーカーなのではないかと思った。”
奈々美がストーカー被害にあっていたことを私は初めて知ることになった。
「まさかこんな事があったなんて・・・。他にもないのかな?」
”高校3年生になった。今年受験生だけど、正直いろんな事があって苦しいかもしれない。受験とか人間関係とか。ストーカーに悩まされ続けてきて、もう無くなることはないんだろうか。とっても怖い。誰にも相談できない状況になってるかもしれない。”
奈々美の手帳にはこのような”心の叫び”が書き綴られていた。
私は、彼女のことを何も知らなかったことをとても悔やんでいた。
「なんで私、親友なのに・・・・。奈々美が悩んでたこと全部知らなかった。多分敢えてなのかもしれないけれど、私にはせめて言ってほしかった・・。私が悪いのかな。奈々美になんか悩みでもないかって聞けたというのに。」
私は彼女の手帳を閉じた。 なぜか手が震えていた。
(なんだろうこの空気・・・。)
部屋が、少し肌寒かった。
「あと少しで文化祭なのに・・。今の状況じゃ無理かもしれない。」
と黙り込んでしまった私である。
それから2、3日経ったが、私はどうすることもできず、気がつけば本番当日になってしまった。
「怖い、怖い、怖い、怖い」
私は、それしか言えなかった。
学校はいつもと変わらないけれど、私にとってはあのことが忘れられなくて、何か引っかかっているような気がする。
教室についても、普通に話せる余裕が私にはなかった。
大人しくいつも読んでいる小説が読めなくなるほどだ。
(これが去年だったら、私は何も考えなくてすむはず、けど今年は違う。悩み事とか一切なくして楽しむのが、去年の私だった。一体どうすれば・・・。)
私はどうしたら良いかわからず、屋上に逃げるかのように走っていく。
何があるかはわからない。
(そういえば、私に右腕の謎のメッセージが出てきたときに、確か小屋みたいなものがあった気がする・・・。)
屋上につなぐドアの前についた。
ガチャ
頭の上に差し掛かってくるような低くて分厚い雲のようなものがあった。
その雲を見ている私も、心に雲がかかっているような気がする。
その視線の先にあったはずの小屋のようなものがなく、ソーラーパネルと貯水槽しか屋上にはなかった。
私はコンクリートの床に座って考えていた。
(犯人がここに襲って来るのは間違いないと思ってるけど、もし犯人を目撃したとして、そうしたら真っ先に私が殺されると思う。私が死ぬということに意味なんてあるのかわからない。)
私は奈々美の手帳を読み返した。
(昨日は見れなかったけど、奈々美の最後にかいたやつってどれなんだろう。)
”10月14日”
「えっ・・。」
私は絶句したのだ。
「奈々美が死ぬ前日・・・。」
と私はあることを思い出したのだ。
「もしかして!」
私は10月の第2週目の日記をめくった。
「奈々美の誕生日って10月15日じゃない?」
とんでもない事実を忘れていた私。
10月15日・・・
「奈々美ー誕生日おめでとう!ケーキ買ってきたよー一緒に食べようよ!」
「ごめん。私、いま風邪引いてるの。せっかく来てくれたのに悪いんだけど、ケーキは食べていいよ。」
「わかった。」
私は奈々美の家からしょんぼりした顔で帰った.
去年の彼女の誕生日は、彼女が風邪で寝込んでいたため、誕生日を祝えなかったのを思い出したのだ。
(最後に祝ったのが、え?たぶん覚えていないのかも。)
「文化祭が終わって、機会があるんだったら、あいつのところに逢いに行きたい。」
ついに始まった。
うちの学校では”村高祭”とよんでいる。
「はーい、それではダンスとお笑いのエンターテインメントの出し物の時間でーす!皆さん楽しんでいきましょう!」
司会も盛り上がるばかりだ。
まるでライブ会場のような規模で、歓声と爆笑がとにかく止まらずにいる。
「きゃーーーーー!」
「はははははははははは!」
「やばーーーい!はははははは!」
そのころ、村高祭で盛り上がっているとき私はトイレに居た。
計画を練っている途中である。
(学校の裏側に小さな脇道みたいな場所があるから、そこを使って、脱出すれば良いんだよね。格好は制服でも大丈夫かな?逃走の装備は何もしなくていっか。スマホとメモ帳とお財布があればいいかな。)
私はもう時は決めたんだ。お昼に脱出する。誰にもバレずに。
「でもずっとトイレにこもらなければいけないのか?」と、思っていた。
私は怖かった。
こんな時間が早く終わってほしいという退屈と本当に学校から脱出して良いのかどうかという不安だけが積もっていくばかりだ。
気がつけば、もうその時が来ていたのだ。
私はいつも通りにお弁当を貪り、脱出の準備をしようとしていた。
制服をわざと水で濡らし、私は体育着姿になる。
(バケツの水が全部かかったって言えば大丈夫だろう。)
「今のうちに・・。」
私は足早に学校の裏の脇道へ走っていく。
「誰も見てない。大丈夫」
校舎を抜け出し、小道のようなところに来た。
「何してるの?」
「えっ?」
声の主は担任だった。
「ここで何してるの?みんなあっちにいるわ。」
「実は、探しものがあって・・・。」
「もう知ってるわ。そんな嘘つかなくてもいいの。」
「はい。」
「探しに行くんでしょ。犯人の動向をね。私が学校側に黙っててあげるから、ここから先は行きなさい。早く!」
まさか私が脱出していることを許可してくれたのだ。
「わかりました。」
「頑張って行ってくるのよ。」
私は走り抜けて、ついに公道に出た。
公道のあの向こうまで走り続ける私を担任はしっかり見ていた。
「何やってんのよ。」
仕方がないと担任は思った。同時に懐かしさがこみ上げてきた。
(そういえば、あたしも学生時代の頃、同じことやってたわ。しかも同じ村井高校で高校3年生の文化祭に犯人の動向を探るために学校抜け出したのが懐かしく思えてきたわ。そのときも当時の担任に止められて、なんとか許可取って、走っていたのを今でも覚えているわ。あのときの先生はこんな感じだったのね。なんかあのときの私を見ているようで、すごく懐かしい。確か、あいつが右腕のメッセージで怒られたときもまるで私とあいつが同じように見えてきた。)
(あたし、なんで泣いてるんだろう。もう、結構前のことなのに。)
きっと、担任のようなことが起こるのかもしれない。
”サバイバルパーティー”はまだ序章に過ぎない。
これから大規模の虐殺が繰り広げられるだろう。
今度はあなたの番だ。
文化祭当日に独断で学校を抜け出して、犯人の動向を探ることを決心した。
文化祭準備のために紙の花を開く作業をしていた私だが、
「こんな作業なんてやりたくない。」とでも思いながら準備をしていた。
いやいややらされても、誰だって気持ちよくはない。
私の部屋に戻り、勉強でもしようかと椅子に座ったときに、考え事をしていた。
(またきっと、どこかの誰かさんたちから侮辱を受けるんだろう。)
「またこんな事して恥ずかしくないのか。お前はもう成人になるんだぞ。」
「お前なんかおかしいんじゃないのか。精神検査でも行ってきたら?」って。
(もはや”学校の恥さらし・面汚し”とでも言うのだろうか。)
その時、私はふと奈々美の遺言を思い出した。
”私のやりたいことができなかったら、他の人にやってもらう。大好きだよ”と。
(他の人というのは私で、奈々美がしたかったことっていうのは犯人への復讐なんじゃないか?でも他のことも十分にありえるのかも。)と考える私であった。
”復讐”これが唯一引っかかったワードだと感じ取った。
(復讐?あの子に一体何があるというの?)
そこで私は彼女の遺品である手帳を確認することにした。
実は、担任にあのとき、奈々美のポケットに入っていたメッセージをもらったとき、彼女のカバンの中に手帳があるということも聞かされていたのだ。
それ以来、肌身離さずずっと持っている。
パラパラとひらく音。そこには彼女が書いた多くの筆跡が残っていた。
(高校入学から死ぬまでの期間いつも書いてたんだ。)
私は敢えて彼女の遺品だから中身を見ないようにしていた。
これが初めてである。
”高校1年生になって親友と二人で入学式に出たよーこの二人で高校三年間たくさんいい思い出作ろうね!”
”初めてのテストで二人とも同じ点数だった!カンニングとかしてないんだけど。”
”高校に入って初めてアルバイトしたよ!たくさんお金もらっていつかディズニーランドでも行こうね。”
”初めての文化祭楽しかったー。来年も楽しみにしてるよ!”
”二人でアウトレット行って、カラオケ行って、たくさんenjoyしたよ!”
”高校2年になって、修学旅行があった。3泊4日だったけど、これまでにないくらい、たくさん笑ったし、たくさん色んな人の素性が見れて、とっても楽しかったよ!”
”高校に入ってすぐに言い争いになって喧嘩になっちゃったこともあったなー。たしか明日の遊びに行く場所どこが良いかってお互い全然引かなくて、「ここが良いー」とか「なんでよ。あんたが行きたいところはもう行ったじゃん、今度は私の番だからね。」って2時間ぐらい言い争って、結局どっちも行ったっていう事もあった。”
”そういえば、2年生のときは学校で一回「お前の存在が気に食わない。銀河系(ギャラクシー)から消えろ!」とか言い争ってガチで喧嘩するふりしたことあったよね。最初はクラスのみんなドン引きしてて、先生も気分悪すぎて嘔吐寸前だったらしいよ。最後は、お互いの胸ぐら掴んで笑いながら、「ドッキリ大成功ー」って言ったときの「なんだよ~」「まんまと騙された」っていうみんなの顔が忘れられないよね。”
などのようなものが記されていた。
(ただの日記にしか見えない。これに何があるというの?)
と読み進めていく私。なにもないと特に期待はしていなかった。
”私は誰かに狙われている気がする。”
しかし、先程とは裏腹に奇妙な供述をしている部分があった。
「まさか・・・。」
と思いながらこの供述の詳細を知ろうと、また再びパラパラめくるのだ。
”私が高2になって半年後に、実は誰かに付きまとわれている感覚がしたの。すぐに相談したんだけど、警察には受理されなかったみたいで、何か証拠がないとだめって言われてたみたい。そして、数日後に私の部屋の窓ガラスだけが割れていたのを見たの。おそらく誰かが物使って割られたような割り方だったからおそらくストーカーなのではないかと思った。”
奈々美がストーカー被害にあっていたことを私は初めて知ることになった。
「まさかこんな事があったなんて・・・。他にもないのかな?」
”高校3年生になった。今年受験生だけど、正直いろんな事があって苦しいかもしれない。受験とか人間関係とか。ストーカーに悩まされ続けてきて、もう無くなることはないんだろうか。とっても怖い。誰にも相談できない状況になってるかもしれない。”
奈々美の手帳にはこのような”心の叫び”が書き綴られていた。
私は、彼女のことを何も知らなかったことをとても悔やんでいた。
「なんで私、親友なのに・・・・。奈々美が悩んでたこと全部知らなかった。多分敢えてなのかもしれないけれど、私にはせめて言ってほしかった・・。私が悪いのかな。奈々美になんか悩みでもないかって聞けたというのに。」
私は彼女の手帳を閉じた。 なぜか手が震えていた。
(なんだろうこの空気・・・。)
部屋が、少し肌寒かった。
「あと少しで文化祭なのに・・。今の状況じゃ無理かもしれない。」
と黙り込んでしまった私である。
それから2、3日経ったが、私はどうすることもできず、気がつけば本番当日になってしまった。
「怖い、怖い、怖い、怖い」
私は、それしか言えなかった。
学校はいつもと変わらないけれど、私にとってはあのことが忘れられなくて、何か引っかかっているような気がする。
教室についても、普通に話せる余裕が私にはなかった。
大人しくいつも読んでいる小説が読めなくなるほどだ。
(これが去年だったら、私は何も考えなくてすむはず、けど今年は違う。悩み事とか一切なくして楽しむのが、去年の私だった。一体どうすれば・・・。)
私はどうしたら良いかわからず、屋上に逃げるかのように走っていく。
何があるかはわからない。
(そういえば、私に右腕の謎のメッセージが出てきたときに、確か小屋みたいなものがあった気がする・・・。)
屋上につなぐドアの前についた。
ガチャ
頭の上に差し掛かってくるような低くて分厚い雲のようなものがあった。
その雲を見ている私も、心に雲がかかっているような気がする。
その視線の先にあったはずの小屋のようなものがなく、ソーラーパネルと貯水槽しか屋上にはなかった。
私はコンクリートの床に座って考えていた。
(犯人がここに襲って来るのは間違いないと思ってるけど、もし犯人を目撃したとして、そうしたら真っ先に私が殺されると思う。私が死ぬということに意味なんてあるのかわからない。)
私は奈々美の手帳を読み返した。
(昨日は見れなかったけど、奈々美の最後にかいたやつってどれなんだろう。)
”10月14日”
「えっ・・。」
私は絶句したのだ。
「奈々美が死ぬ前日・・・。」
と私はあることを思い出したのだ。
「もしかして!」
私は10月の第2週目の日記をめくった。
「奈々美の誕生日って10月15日じゃない?」
とんでもない事実を忘れていた私。
10月15日・・・
「奈々美ー誕生日おめでとう!ケーキ買ってきたよー一緒に食べようよ!」
「ごめん。私、いま風邪引いてるの。せっかく来てくれたのに悪いんだけど、ケーキは食べていいよ。」
「わかった。」
私は奈々美の家からしょんぼりした顔で帰った.
去年の彼女の誕生日は、彼女が風邪で寝込んでいたため、誕生日を祝えなかったのを思い出したのだ。
(最後に祝ったのが、え?たぶん覚えていないのかも。)
「文化祭が終わって、機会があるんだったら、あいつのところに逢いに行きたい。」
ついに始まった。
うちの学校では”村高祭”とよんでいる。
「はーい、それではダンスとお笑いのエンターテインメントの出し物の時間でーす!皆さん楽しんでいきましょう!」
司会も盛り上がるばかりだ。
まるでライブ会場のような規模で、歓声と爆笑がとにかく止まらずにいる。
「きゃーーーーー!」
「はははははははははは!」
「やばーーーい!はははははは!」
そのころ、村高祭で盛り上がっているとき私はトイレに居た。
計画を練っている途中である。
(学校の裏側に小さな脇道みたいな場所があるから、そこを使って、脱出すれば良いんだよね。格好は制服でも大丈夫かな?逃走の装備は何もしなくていっか。スマホとメモ帳とお財布があればいいかな。)
私はもう時は決めたんだ。お昼に脱出する。誰にもバレずに。
「でもずっとトイレにこもらなければいけないのか?」と、思っていた。
私は怖かった。
こんな時間が早く終わってほしいという退屈と本当に学校から脱出して良いのかどうかという不安だけが積もっていくばかりだ。
気がつけば、もうその時が来ていたのだ。
私はいつも通りにお弁当を貪り、脱出の準備をしようとしていた。
制服をわざと水で濡らし、私は体育着姿になる。
(バケツの水が全部かかったって言えば大丈夫だろう。)
「今のうちに・・。」
私は足早に学校の裏の脇道へ走っていく。
「誰も見てない。大丈夫」
校舎を抜け出し、小道のようなところに来た。
「何してるの?」
「えっ?」
声の主は担任だった。
「ここで何してるの?みんなあっちにいるわ。」
「実は、探しものがあって・・・。」
「もう知ってるわ。そんな嘘つかなくてもいいの。」
「はい。」
「探しに行くんでしょ。犯人の動向をね。私が学校側に黙っててあげるから、ここから先は行きなさい。早く!」
まさか私が脱出していることを許可してくれたのだ。
「わかりました。」
「頑張って行ってくるのよ。」
私は走り抜けて、ついに公道に出た。
公道のあの向こうまで走り続ける私を担任はしっかり見ていた。
「何やってんのよ。」
仕方がないと担任は思った。同時に懐かしさがこみ上げてきた。
(そういえば、あたしも学生時代の頃、同じことやってたわ。しかも同じ村井高校で高校3年生の文化祭に犯人の動向を探るために学校抜け出したのが懐かしく思えてきたわ。そのときも当時の担任に止められて、なんとか許可取って、走っていたのを今でも覚えているわ。あのときの先生はこんな感じだったのね。なんかあのときの私を見ているようで、すごく懐かしい。確か、あいつが右腕のメッセージで怒られたときもまるで私とあいつが同じように見えてきた。)
(あたし、なんで泣いてるんだろう。もう、結構前のことなのに。)
きっと、担任のようなことが起こるのかもしれない。
”サバイバルパーティー”はまだ序章に過ぎない。
これから大規模の虐殺が繰り広げられるだろう。
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